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ポジティブなエネルギーへの転化と生命そのものを描いたACIDMAN日本武道館

ACIDMAN | 2011.05.12

 昨年12月1日にリリースされたニューアルバム『ALMA』を引っ提げた全国ツアーの集大成として行われるはずだったACIDMAN通算3回目の日本武道館。しかし、3月11日に発生した東日本大震災の影響により3月16日の仙台公演が6月4日に、3月21日の新潟公演は5月29日にそれぞれ延期が決定。

3人の目に、先の震災はどのように映っていたのだろう。

 答えは明白だった。ステージを覆った白い幕が文字通り切って落とされた瞬間から、3人は「風が吹く時」「ONE DAY」等といったストレートなロック・チューンで、スタンディングのアリーナに熱狂の渦を巻き起こし、「式日」や「FREE STAR」ではダンサブルなビートに合わせて多くのオーディエンスがジャンプ。レーザー光線が飛び交った「Final Dance Scene」では武道館が巨大ディスコと化す。

「こんなに集まってくれて嬉しいです。ありがとう。震災でいろんなイベントが自粛してる中で、まだ傷が癒えていない人もいると思うんですけど、先の見えない不安な1日を過ごすよりも、ポジティブに日々を楽しむべきだと思ってツアーを続行することにしました。ファイナルは仙台です。みんなのエネルギーを仙台に持って行くから、最高の1日にしましょう。よろしく!!」
これが彼らの答えだった。

 一発目のMCでこんな風に挨拶したオオキノブオをはじめ、オーディエンスの歓声に手を挙げて応えるサトウマサトシにもウラヤマイチゴにも、客席からは満面の笑顔とともに温かい拍手が降り注ぐ。

 『ALMA』のテーマでもあり彼らがずっとメッセージし続けて来たもの。それは、永遠に滅ぶことなく繰り返される生への賛美だ。「water room(inst.)」「真っ白な夜に(instrumental)」の2曲のインストゥルメンタルをきっかけに、深遠な世界へとシフト・チェンジする武道館。オオキのアコギ弾き語りで始まった「ノエル」で放たれたエネルギーは、「OVER」の目が眩むほどの強い光に包まれ、さらに「2145年」によって描き出された荒涼とした未来は「ワンダーランド」で輝かしい過去へと再生する。そのすべてを静かに見つめる語り部のようなオオキの歌声と、爆発的な熱量を誇るサトウとウラヤマのグルーヴ。それらによって生み出された新しい世界は、PV撮影のためにチリのアルマ観測所を訪れたときに撮影したという満天の星空として、「ALMA」が鳴り響く間中ずっとステージの奥のスクリーンと武道館の天井に映し出されていた。

「もう1曲だけやっていいですか? 決して明るい曲ではないけど、その先にあるポジティブなものを歌った曲なので、その精神的なものを感じてくれたら嬉しいです。世間ではシュールと呼ばれてる曲です。そんなことをやってるバンドが武道館でやれるんですよ。日本もまだまだ捨てたもんじゃない」

 オオキのこんなMCとともに届けられた「廻る、巡る、その核へ」には、あらゆる生き物が生まれて再び躍動する様を描いた圧巻のアニメーションが添えられていた。単なる娯楽の枠を越え、生命そのものを描くACIDMANのロックこそ、今の日本に最も必要なのだと感じた。

【撮影:橋本塁 (SOUND SHOOTER)】
【文:加藤祐介】

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リリース情報

ALMA

ALMA

2010年12月01日

EMIミュージックジャパン

1.最後の国(introduction)
2.風が吹く時
3.ONE DAY
4.DEAR FREEDOM
5.ノエル
6.ALMA
7.真っ白な夜に (instrumental)
8.レガートの森
9.Final Dance Scene
10.2145年
11.ワンダーランド

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INFORMATION

■ライブ情報

♪ACIDMAN LIVE TOUR"ALMA"振替公演
◆2011年5月29日
新潟LOTS
問い合わせ:
FOB企画新潟 025-229-5000

◆2011年6月4日
ZeppSendai
問い合わせ:
GIP 022-222-9999

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