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KANがサプライズ出演!!TRICERATOPSの第2回”おとといミーティング”!!

TRICERATOPS | 2011.06.09

 センチメートル単位で表現したくなるくらいステージと客席が近い。西麻布のSweetEmotionという大人な空間でのアコースティック編成のライヴ。となると、しっとりしたステージを想像するかもしれない。もちろんじっくり聴かせる曲も演奏されたのだが、そこだけに収まらないところにTRICERATOPSというバンドの規格外の魅力がある。“しっとり”だけじゃなく、“びっくり”や“まったり”もある予定調和とはほど遠いステージ。なのに、最終的には音楽的な調和へと着地していく。

 オープニングナンバーは「if」。和田の弾き語りに林と吉田のコーラスが加わっていく。リズム隊が本格的に存在感を発揮するのは1番の終わりから。空間を音で埋めていくのではなくて、音の隙間をうまく生かしていくアレンジで、音数が少ないのにリズムもふくよかでグルーヴィーだ。曲が進行するほどに世界が広がっていく。バンドの最小単位とも言うべきスリーピース編成で、確かなテクニックと柔軟なセンスと創意工夫によって、自在な音楽を展開してきている彼らだからこそのステージ。

 が、MCになると、「バラード、スキデスカ~?」と変な外国人風のイントネーションになったりする。でもこうしたゆるいトークも悪くない。もちろんふざけてばかりいるわけではない。「どんなメッセージソングよりも強力なメッセージを放っている曲だと思う」という言葉に続いて演奏されたのはKANの「プロポーズ」。3人が一体となって歌の物語を紡いでいく。歌心を備えた彼らだからこそのカバー。「いい曲だなあ。もうオレらの曲にしちゃいますか」と和田。こうした意外な曲が演奏されるところにもこの”12-Bar”の醍醐味がある。

 TRICERATOPSとともに”12-Bar”を企画・プロデュースしているライターの森田恭子氏からの宿題曲をカバーするコーナーも見どころのひとつ。2回目の宿題曲は岡村靖幸の「イケナイコトカイ」。熱烈なラヴソングであると同時に、祈りの歌と言いたくなるような肉体性と精神性とを兼ね備えていて、フェイクも含めて、独特の世界が形成されている。なので難易度もきわめて高い。が、彼らはこの曲も見事にものにしていた。岡村がプリンスなら、TRICERATOPSはマイケル・ジャクソンにスティービィー・ワンダー。ブラックミュージックをルーツのひとつとして持っている彼らだからこその深みのあるカバー。叙情の背後から激情がにじむ繊細かつソウルフルな歌声と空間的な広がりを感じさせる演奏が見事だ。

 このカバーがこの夜のハイライト。と、この曲が終わった瞬間には思っていたのだが、その後も何度もハイライトが訪れる。フリーコーナーではゆずの「夏色」からB’zの「ウルトラソウル」まで、即興演奏が自在に飛び出し、なぜか高音域の限界に挑む展開に。吉田が魅惑のハイトーンボイスを披露したかと思うと、聴いているこっちまでもがノドを押さえたくなる林の絶叫シャウトが飛び出したりする。さらにはパート・チェンジでの「Raspberry」。吉田がボーカル、和田がベース、林がドラム、助っ人のギターでオペラ座の怪人ならぬ西麻布の怪人といった風情の仮面のシークレットゲスト(実はKAN)が参加したのだが、これが実に楽しかった。“それで全てうまくいく”というこの曲のフレーズがこのパート・チェンジにも係っているかのようだった。彼らの遊び心とフットワークの軽さが音楽の“楽”の要素を際立たせていく。さらにこの4人でKANの「悲しみの役割」、林がサングラスとハット姿で“チャイよしひろ”なる大物ミュージシャンに扮しての「MILK & SUGAR」など、大ネタ・小ネタ交えつつの演奏。

 アコースティック編成の強みのひとつは歌が鮮明に届いてくることだ。本編最後の「あのねBaby」ではタイトな演奏に乗って、“君への歌を歌って生きるのさ”という歌詞が強く響いてきた。これはラヴソングにしてロックンロール。アンコールは観客のハンドクラップも交えての「GIRLS」。温かくてフレンドリーな空気が会場内に充満していく。でもステージを去る瞬間の挨拶は「ドーモアリガト~」とインチキ外国人風。
 旅に例えると、おきまりの観光コースを巡るのではなくて、路地裏や迷路に迷い込みながら、最終的に目的地に辿り着くという感じだろうか。どの歌も日常に根ざしているのだけれど、マジカルなパワーを持っている。彼らをガイドとしたこの”12-Bar”という名の音楽の旅はまだまだ続いていく。笑いすぎて、お腹がいたくなったり、ノドが痛くなったりするかもしれない。プロポーズされたと錯覚するかもしれない。そこはくれぐれも自己責任でヨロシクオネガイシマス。

【撮影 山本倫子】
【取材・文 長谷川 誠】

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