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NICO Touches the Wallsの近未来を予感させる、素晴らしいファイナル

NICO Touches the Walls | 2011.06.21

 ツアー中から全国で評判を呼んでいた注目の“ TOUR 2011 PASSENGER ~We are Passionate Messenger~”(全国11か所 全12公演)がいよいよファイナルを迎える。パンパンに膨らんだオーディエンスの期待を表わすように、会場に雷鳴が轟くと、暗い照明の中をドラムス対馬祥太郎、ギター古村大介、ベース坂倉心悟、ボーカル&ギター光村龍哉の順にメンバーが登場。ダンサブルなインスト・セッションから「ロデオ」に突入して、一気に会場のテンションを上げる。「バンド史上、最高のツアー」という噂は本当だと、オープニングから確信した。

 とにかくリズムが安定している。同世代屈指の演奏力を持つメンバーが、グルーヴに対する意識を高く維持する前半だ。「負けられないヤツはどんだけいるんだぁ!」と光村が叫んで始まった「サドンデスゲーム」まで、4曲続けて突っ走る。4人がニコニコしながら、ド迫力の音を繰り出しているところにスリルがあふれている。
 「2ヵ月ぶりに東京に帰ってきました。髪を切ったから、ハジからハジまでよく見えますよ」と笑わせてから、光村は「アルバム『PASSENGER』の曲の成長具合を堪能してください」とキッパリ。怒涛のパフォーマンスが続く。

 とはいえ、ファイナルなので、どこかお祭り気分も混じっていて、コーラの一気飲みなどのメンバーオリジナルの演出と、真面目な演奏のコントラストが面白い。オーディエンスも、ファイナルを迎えたメンバーの気持ちにぴったりシンクロしていて、一緒に大騒ぎする。それでいて、「ページ1」の強烈なシャッフル・ビートには体ごと反応してライブ全体を盛り上げる。かと思うと、「君だけ」で、キャンドルの灯りでバンドが幻想的なプレイを展開すると、しーんと聴き入る。

 「新曲をやってみようと思います。夏っぽい楽しい曲を書いてみました。その名も『手をたたけ』。」と光村が言って始まったのは、超シンプルで楽しいポップソング。新曲なのに会場中がすぐに一体になる。この夏、フェスで初めてNICO Touches the Wallsに接するロック・ファンにも一発で届くキラーチューンに成長する可能性は大だ。
 そして次の「友情讃歌」で、ライブはピークを迎えた。バンドの初期、高校生の頃に作られたこの曲は、数年置いて学園祭ツアーで演奏され、シングル「Diver」のカップリングとして復活したナンバー。この曲を光村はギターを置いて、タンバリンを持って歌う。その楽しさに、会場が大爆発を起こす。光村は曲のラストでタンバリンをフロアに嬉しそうに放り投げた。今夜、ツアーが終わることを暗示する、最高のシーンになった。
 そこからはバンドにとって最重要曲が並ぶ。特に「Diver」、本編最後の「Passenger」は、確固たるメッセージを込めた曲にふさわしい重厚な演奏が繰り広げられ、ツアーは見事に幕を閉じたのだった。

 このツアーを通してのバンドの成長は、自他ともに認めるところだろう。その上で感じることがある。NICO Touches the Wallsには、いろいろな楽しみ方がある。大きく言えばそれは、初期衝動の楽しさに満ちた「友情讃歌」と、バンドの成長によってたどり着いたメッセージ・ソング「Passenger」の二つに代表されるだろう。この二つが揃ってこそ、ダイナミックなロックが生み出されるわけだ。ただ楽しいだけでは飽きてしまうし、メッセージだけでは重苦しい。その両方を、NICO Touches the Wallsはこのツアーで手に入れた。楽しみながら、真剣なメッセージを受け取る。それこそがポップミュージックにしかできないコミュニケーションなのだ。

 そして新曲を聴く限り、彼らは“楽しみ”を前面に掲げながら今年の夏を走り抜けると直感した。NICO Touches the Wallsの近未来を予感させる、素晴らしいファイナルだった。

【取材・文 平山雄一】

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リリース情報

PASSENGER

PASSENGER

2011年04月06日

KRE

1. ロデオ
2. 妄想隊員A
3. Diver
4. ページ1
5. 君だけ
6. SURVIVE
7. 容疑者
8. 友情讃歌
9. マトリョーシカ
10. サドンデスゲーム
11. Passenger

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セットリスト

  1. ロデオ
  2. THE BUNGY
  3. 容疑者
  4. サドンデスゲーム
  5. 行方
  6. 錆びてきた
  7. SURVIVE
  8. Broken Youth
  9. ページ1
  10. 君だけ
  11. マトリョーシカ
  12. 手をたたけ(新曲)
  13. 友情讃歌
  14. ホログラム
  15. 妄想隊員A
  16. Diver
  17. Passenger
  18. Encore
  19. GANIMATA GIRL
  20. 雨のブルース

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