ライブが進んでいくにつれて、「かっこいいなあ」とか「上手いなあ」とか「グッとくるなあ」とか「可愛いなあ」とか「楽しいなあ」という感想しか浮かばなくなってしまった。分析とか解説とか、そんなことがどうでもよくなってしまうほど、観る者を無防備に楽しませてしまう天真爛漫なパワーがたっぷり宿っているのだ、彼女のステージには。

　１stフルアルバム「guitarissiomo」を伴った全国ツアー「miwa live tour 2011“guitarissimo”」。その追加公演となるこの日のライブでmiwaは、シンガーソングライターとしてのポテンシャルの高さ、そして、すべてのオーディエンスをポジティブな笑顔に導くダイナミックなステージングをたっぷりと見せてくれた。 「miwa！」「miwaちゃーん！」という凄まじい声援（男性8割、女性2割くらいでした）を受けながらステージに登場、すぐにエレクトリック・ギターをかき鳴らし、鋭く、シャープなサウンドを描き出していく。オープニングは、ストレートなバンドサウンドが気持ちいい「ありえない!!」。いきなりガッツリと盛り上がるオーディエンスに対してmiwaは、お立ち台（ステージ前方に４つ置かれてました）の上から愛らしい笑顔で応える。音楽を全身で楽しんでいる様子がはっきりと伝わってきて、こちらのテンションもグッと上がってしまう。

「こんばんわーみー！　miwaです。暑いねー。（ツアーが終わってしまうことに対して）さみしい気持ちもあるけど、そのぶん、今日は最高のライブにしようね！」というMCのあとは、彼女の愛器であるアコースティック・ギターに持ち替え、爽快なアップチューン「ハツナツ」を披露。心地いいアコギのストロークによって、そのチャーミングなボーカルを大きく広げていく。ピンと張り詰めたテンションと正確なピッチ、そして、ピュアな感性に支えられた表現力。ライブという場所で体感すると、その魅力はさらにダイレクトに伝わってくる。

　この日の最初のピークはおそらく、「オトシモノ」だったと思う。スリーフィンガーによるアコギの音色からはじまるこの曲??失いかけた恋を取り戻そうとする“僕”の感情を描いたミディアムチューン??を彼女は、生々しい感情表現とともに歌い上げる。特に「もう一度強く君に抱きしめてほしい」というフレーズにおける、激しくも美しいボーカリゼーションからは、彼女のシンガーとしての豊かな才能がダイレクトに響いてきた。

　デビューシングル「don‘ｔ cry anymore」からは、さらにカラフルなmiwaワールドが展開。「アルバムのなかでも、いちばんライブを意識して作りました」というグルーヴィーなロックチューン「hys-」、「すごく苦労したけど、そのぶん、大事な曲になりました。いちばん大人っぽいんじゃないかな」という「Dear Days」。アルバム「guitarissimo」の制作を通して彼女は、ソングライターとしての幅を大きく広げることに成功した。その成果は今回のツアーのなかでも十分に発揮されているようだ。

　再びエレキギターに持ち替えた「chAngE」からはアップチューンを連発、オーディエンスの熱狂もピークへと向かいはじめる。「あなたがいないと世界はこんなにつまらない」の後半ではギターを置き、ハンドマイクでステージの上を動き回る。コール＆レスポンスもオーディエンスの煽り方もすごく自然で、見ていて本当に楽しい。ポップミュージックにおけるステージングを、誰に教えられたわけでもなく、こんなにもナチュラルに身に着けている人はきわめて稀だと思う。

　最初のアンコールでは、キーボードのeii、パーカッションのNona*とともに、アコースティック・テイストの「めぐろ川」、さらにニューシングル「441」と「僕らの未来」を、ダブルアンコールでは「やっぱり、特別なライブにしたいから」というＭＣとともに初披露となる「Chasing hearts」を演奏。そして最後はアコースティック・ギターの弾き語りによる「つよくなりたい」。「こんなステージに立てるなんて思ってもいなかった、18歳のときに作りました」というこの曲で彼女は、「やりたい事　叶える為来たんだ」という強い決意を改めて示した。その凜とした姿はおそらく、観客全員に前向きな力を与えたはずだ。

　この夏は各地のフェス／イベントにも数多く参加。その純度の高いステージをぜひ、多くの人に体感してほしいと思う。

【 取材・文：森朋之 】