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エレファントカシマシ、結成30年22回目の日比谷野音ライブ。

エレファントカシマシ | 2011.10.03

日比谷野外音楽堂は、ライヴを特別なものにする場所だ。晴れても降っても熱くても寒くても、それが音楽と結びついて強烈な思い出になる。演奏する側も同様なのだろう。
4人だけで登場したエレファントカシマシが幕開けに選んだのは「歴史」。文豪・森鴎外を題材に男の生き様を歌った曲だが、彼等自身も結成から30年、22回目の日比谷野音という歴史を刻んできたことに思いを馳せていたのではなかろうか。

 「知恵を絞っていろんな曲を用意して来た」と宮本が言った通り、通常のツアーでは演奏する機会がない曲を次々と演奏して行く。力強い歌で惹き付けた「悲しみの果て」から、芝居気たっぷりに歌ってみせた「ふわふわ」、そして「俺と石くんのギターを聴いてください」と二人のギターを合わせながらハードなサウンドで聴かせた「勉強オレ」など、多彩な曲を次々に披露。また宮本が「昔の歌だけど、いいこと言ってて笑った」と言った5作目に収録の「無事なる男」は、 がむしゃらに音を出していた当時の熱気を掘り起こしながら今の彼等のスケール感で裏打ちされ、面白い仕立ての曲になっていた。それはエレファントカシマシの4人が作り上げて来た、骨太だけれど表情豊かな曲とバンド・サウンドの歴史を見せているようでもあった。

 冒頭の「知恵を絞って?」という宮本の言葉は、曲が進むほどに「なるほど」と頷きたくなるものになっていく。ここまでのように4人だけでの演奏を私が見たのは数年ぶりだ。それだけにサポート・メンバーが重要な存在である最近の彼等との違いを実感する事になり、改めて30年のキャリアを持つ4人の演奏の安定感や個々の演奏の色づきなどに耳目を奪われた。
また近年のレコーディングやステージで欠かせぬ存在となっているキーボードの蔦谷好位置とギターのヒラマミキオを迎えた中盤は、6人ならではの華やかさや広がりがエレファントカシマシの新たな一面を形作っている事を実感させた。しかも6人揃って始めたのがエピック時代の名作『奴隷天国』から「太陽の季節」だったから、モノクロ・フィルムをカラーに仕立て直したような驚きにオーディエンスが沸いたが、曲の持つ 荒々しいパワーを損ねぬ宮本の歌と、曲のエネルギーをダイレクトに伝える演奏は実に新鮮だった。その一方、宮本一人で「レコーディングの時にエンジニアから借りた。それを再現したくて」とドブロを弾いて歌った「月夜の散歩」、ギターに持ち替えての「サラリサラサラリ」は、夏の残り香を含んだ風と秋の訪れを 告げる虫の音が彼の歌を彩る。夜空の雲までが歌とともに流れて行く、そんな至福の時だった。

 オーディエンスにじっくりと歌を染み渡らせた後は、再び6人で一体感のある演奏で「ラスト・ゲーム」や「Tonight」といったレアな曲、また「ニューヨークのテロの10日後ぐらいに一人で行った時に作った」と紹介した「秋?さらば遠い夢よ」はシックなアレンジに。既にお馴染みとなった「翳りゆく部屋」はカヴァーだけれど、ユーミンとは全く違うダイナミズムに溢れた男歌として宮本は自分のものにしていたし、「明日への記憶」は照明も映えてドラマ チックな物語を描き出していた。1曲1曲、完全燃焼していく宮本は終盤に向けて燃え尽きそうに見えたが、自分を鼓舞するように「今日からまたスタートだ。 終わりと始まりは重なってる」と言い「新しい季節へキミと」を、続けて「男は行く」を歌い「男よ何でもいいから行け!」と叫んで本編を終わらせた。

 アンコール1セット目は、「武蔵野」「生命讃歌」「友達がいるのさ」とレアな曲を中心に、2セット目は「ガストロンジャー」「ファイティングマン」でアグレッシヴに、そして3セット目は「今宵の月のように」を大らかに歌い、「エブリバディ、絶対輝こうぜ!」と叫ぶとマイクを置いて投げキッスをしてステージから姿を消した。最初に歌った「歴史」の「歴史の末裔たる僕ら 残された時間の中で 僕ら死に場所を見つけるんだ それが僕らの未来だ」という一節が再び甦った。限られた時間だからこそ力一杯生きて未来に向かって進むんだ、と宮本に背中を押されたような気がして、月を見上げながら帰路に着いた。

【 取材・文:今井智子 】

【 撮影:岡田貴之 】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル エレファントカシマシ

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