10月15日にスタートした大規模アリーナツアー『YUKI tour“MEGAPHONIC”2011』も、この日を含めて残すところ4本。魂のこもった歌声、メロディからはみ出すぐらいの演奏、嬉しそうな歓声、楽しくて跳ねる足音、そしてドキドキと高鳴る胸の鼓動……。最高に楽しいその瞬間を切り取ったいくつもの“音”がひとつになって、最高の音楽が生まれた夜だった。

　大きな会場に鼓動が鳴り響くと、フロアが暗転。ステージ上の巨大スクリーンに“megaphonic”の文字が映し出され、スクリーンの中で花火を縫うようにYUKIが舞う。その姿に見入っていると、突如バンッという爆発音と共に、客席に長く伸びるランウェイの先端にYUKIが現れた。そしてアカペラで歌いだしたのは「Hello !」のサビの1フレーズ。大きな会場にYUKIの歌声だけが響く。その清々しさを帯びた歌声は、まるで、「みんな、ようこそ。今日は一緒に最高の音を鳴らしてね」というYUKIからの挨拶のように聴こえてくる。

　1曲目は「JOY」。黒いミニドレスにブロンドボブのYUKIの「COME ON JOY！」という元気いっぱいの声を合図に、会場全員がJOYダンスでYUKIを迎える。とびきり嬉しそうなYUKIの笑顔で、一瞬にしてフロアがハッピーな空気に包まれる。続く「勇敢なヴァニラアイスクリーム」ではフロアに伸びるランウェイを、まるで一人ひとりの顔を覗き込むような仕草で歌いながら歩くYUKI。アルバム『megaphonic』のツアーはアリーナの会場でやりたかったというように、巨大なスクリーンや長く伸びたランウェイなど、大きな会場だからこその演出がさらにYUKIの創り出す世界を広げていく。そして、再び登場したYUKIはカラフルな蛍光色のミニドレスに身を包んで「ひみつ」「2人のストーリー」を、ワンフレーズ、ワンフレーズ、魂をこめて歌う。ひとつひとつの言葉が紡がれて、鮮明に歌の世界が広がっていく。「Hello！」では、とびきりの笑顔で広い会場の後ろにまで届くように大きく手を振るYUKI。ここにいる全員と一緒に音楽を作っている。嬉しそうなYUKIの表情から、そんな想いが強く伝わってきた。

「揺れるスカート」では巨大ミラーボールが回り、ダンスフロアと化した会場の熱狂は最高潮。続く「マイ・プライヴェート・アイダホ」では、なまめかしくランウェイを歩きながら、一緒にアイダホへ行こうとばかりにフロアを挑発。曲が変わるごとに歌も表情もステージの空気も、ガラリとその様を変えていくYUKIのライブ。YUKIの「たくさんの最高の音をみんなに届けたい」という想いが、1曲1曲から伝わってくる。ステージを所狭しと動き回るYUKI。しかし、その歌もパワーも衰えるどころか、後半にいくにつれてパワフルになっていくばかり。YUKIの声がみんなにパワーを与え、みんなの声がYUKIにパワーを返す。その相乗効果で心が震えるような感動が生まれる。「もっともっと踊りたい？」と叫んで「WAGON」のギターリフが奏でられると、大団円に向けて、あとは身を委ねるだけ。サビで打ち上げられた金テープには、YUKIの自筆で「今日は最高の時間を、どうもありがとう。瞬間を食べて、生きていこう」と書かれていた。この瞬間の積み重ねが最高の時間を生む。まさにこの日のライブがそのまま言葉になっていた。本編ラストは「相思相愛」。優しいメロディに乗って、徐々に叫ぶように歌うYUKI。曲の間で「私はあなたが必要なんです。そうでしょ？」と力強く叫んだYUKI。それはYUKIからファンへの愛の告白のようにも思えた。

　アンコールでは、ソロになって10周年を迎える自身へのお祝いの意味をこめたという新曲「世界はただ、輝いて」を初披露。シンプルなメロディには、いつも輝いている自分でいたいという想いや強くてキラキラしたメッセージが詰め込まれていた。そしてラストは、「集まろう for tomorrow」。オーディエンスの手拍子の中、体いっぱいに楽しさを表現しながら歌うYUKI。まるで魔法にでもかかっていたかのようなキラキラと輝く時間は終幕を迎えた。

そしてこの日、YUKIソロ10周年を記念して、2012年5月6日に東京ドームでのライブが決定したことが発表された。YUKIを、YUKIの音楽を愛する人があの大きな会場でどれだけのパワーを発するのか、想像しただけで今からワクワクが止まらない。

【 取材・文：矢隈 和恵 】