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吉井和哉、1年がかりで描いて来たストーリーの最終章の日本武道館公演をレポート!

吉井和哉 | 2012.01.20

 「恒例の武道館です」と、冒頭3曲ほど演奏したところで吉井和哉は言った。だが、このライヴは恒例であると同時に、恒例ではない側面も持っていた。確かに06年以来続けている年末の武道館公演という流れであるが、これまではツアーとは別立てのスペシャル・ライヴだったのに比べ、今回は4月にスタートしたツアーの後半戦とも言える「Flowers & Powerlight Tour 2011~born-again~」のファイナルでもあるのだ。いわば吉井和哉が1年がかりで描いて来たストーリーの最終章なのである。

 ダンサーやジャグラーが浮かび上がるタイトル映像に期待を膨らませているとメンバーが登場、11月に出たばかりのミニ・アルバムの『After The Apples』収録の「Born」からドラマティックに幕を開けた。同じく最新作からの「無音dB」は一転してアグレッシヴに聴かせ、「Next Innovation」は一体感のある演奏に乗って大らかな歌で惹き付けた。そしてゲームソフトのテーマ曲で配信される「煩悩コントロール」は意表をつかれた観客がじっと聴き入り、インパクトのある映像とサイケデリックな演奏が見事にマッチした「母いすゞ」、更にじっくり歌い上げた「ダビデ」と、新曲を次々に披露。春からのツアーで十分練られ足並みの揃ったバンドに、新たに加わったギタリスト生形真一(Nothing’s Carved In Stone)がザクザクと切り込むプレイで新風を吹き込み、吉井の力強い声が最新作の持つディープな世界観を描き出した。

 このバンドの存在が光ったのが、久々に演奏したThe Yellow Monkey時代の曲。長らく披露したことのなかった『jaguar hard pain 1944~1994』から「FINE FINE FINE」「RED LIGHT」でオーディエンスを沸かせたのだが、生き生きとしたバンドのプレイがオリジナルのテイストを崩すことなく、現在の吉井和哉の歌として響き渡らせた。同時に、当時の愛称「ロビン」と呼びかけたくなるようなエロティックなポーズで歌う吉井からは、記憶に眠る過去への思いと言ったものが感じられた。かたちは失われても記憶に残るものは、いつでも呼び覚まし共有することが出来る。それは3.11の影響で公演が中止になったツアー前半戦のドキュメント(DVD『Flowers & Powerlight Tour 2011』に収録)に彼が込めた思いでもあろう。

 冒頭にも書いた通り、この夜は長い旅のファイナルであると同時に、特別仕立ての「恒例の武道館」でもある。「来年こそは夢を正夢に」と言って呼び込んだサプライズ・ゲストは、「マサユメ」で共演したダチョウ倶楽部。この曲のためのユニット「masa?yume」での一夜限りのライヴとあって、オーディエンスは大喝采だ。ステージ狭しと走り回りながら得意のネタを披露する3人と、肩を組んだりして歌いながら笑う吉井にバンドのメンバーも笑顔を向けていた。そのサプライズに上がった空気を更に上げたのは、武道館一杯に広がった「ビルマニア」でのオーディエンスのコーラス。

 一段落して「今年のツアーは意義があった」と春からのツアーに込めた思いを語り、本編の最後に歌ったのは「LOVE & PEACE」。丁寧に歌い上げる声には言葉にならない思いが散りばめられているようだった。そしてアンコールでは交流の深い斉藤和義の真似をして沸かせたり、「MUSIC」を歌いながら横たわったりとリラックスした雰囲気に。その開放感が、このライヴが彼にとってもどれほど重要であったかを示しているようでもあった。「来年はまた音源制作に入ります」と、長い1年の締めと新たな起点を示す宣言に、吉井の尽きぬ意欲が込められていた。

【 取材・文:今井智子 】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 吉井和哉

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リリース情報

After The Apples(初回限定盤)

After The Apples(初回限定盤)

2011年11月16日

EMIミュージックジャパン

ディスク:1
1. 無音dB
2. Next Innovation
3. 母いすゞ
4. ダビデ
5. バスツアー
6. Born
ディスク:2
1. ACIDWOMAN (SENDAI RENSA)
2. VS (SENDAI RENSA)
3. 欲望 (SENDAI RENSA)
4. おじぎ草 (SENDAI RENSA)
5. 球根 (SENDAI RENSA)
6. クランベリー (SENDAI RENSA)
7. プリーズ プリーズ プリーズ (SENDAI RENSA)
8. ビルマニア (SENDAI RENSA)
9. FLOWER (SENDAI RENSA)
10. シュレッダー (TOKYO INTERNATIONAL FORUM HALL-A)

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セットリスト

  1. Born
  2. 無音 dB
  3. VS
  4. Next Innovatior
  5. 煩悩コントロール
  6. FINE FINE FINE
  7. 母いすゞ
  8. HATE
  9. クランベリー
  10. RED LIGHT
  11. ALL BY LOVE
  12. バスツアー
  13. 嘆くなり我が夜のFantasy
  14. マサユメ
  15. ビルマニア
  16. LOVE&PEACE
  17. ENCORE
  18. 星のブルース
  19. MUSIC
  20. FINAL COUNTDOWN
  21. FLOWER

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