昨年の武道館から始まった布袋寅泰の30周年アニバーサリー・シリーズ・ライブが、ついに最終章となる第4弾 を迎えた。2012年2月1日、布袋の50才の誕生日に開催されたライブのタイトルは“WE ARE DREAMER?50 th BIRTHDAY SPECIAL CELEBRATION GIG?”。僕は特に最後の単語“GIG”に魅かれた。布袋がキャリアをスタートさせた80年代は、ライブのことをGIGと呼ぶことが多かった。この言葉には「ライブは、そこに参加するミュージシャンとオーディエンスの一度きりの出来事」というニュアンスが込められている。BOφWYも好んでこの言葉を使っていたことを思い出して、胸が熱くなった。

　さいたまスーパーアリーナの照明が落ちると、ステージの脇に設置されたスクリーンにブライアン・セッツァーが弾語る「ハッピー・バースデー」が流れる。それに続いていろんなアーティストからのメッセージが映し出される。コブクロの小渕健太郎、豊川悦司、Ｃｈａｒ、吉川晃司などがお祝いを告げる。と、カーテンが上がって、ピンスポットの中に布袋がいた。
そのまま「B・BLUE」へ。このシリーズ・ライブはいつもオープニング・ナンバーに驚かされてきたが、今回も充分衝撃的だった。そしてそれ以上に感激したのは、「BEAT EMOTION」までの最初のシークエンスだった。BOφWY、GUITARHYTHM、COMPLEXが入り混じった5曲。これまでは時代を区切り、そのたびに弾くギターを変えてきた布袋が、「もう、そんな区別はいらない。全部、俺のキャリアだからさ」と言っているように感じた。デビュー以来、ずっと観てきた僕にも、布袋の歓びがひしひしと伝わってきた。

「ようこそ、宇宙一のロックンロール・ショーへ！ようこそ宇宙一のバースデイパーティーへ。50才になりました。年齢は気にしないできたけど、今日は嬉しいな。ライブ・ビューイングで観てる全国のファンも含めて、みんなと大切なひとときを過ごせる。30周年のファイナルでもあります。楽しんでいってください」。

　ドラムス中村達也、ベース井上富雄、キーボード奥野真哉、プログラマー岸利至、という不動のバンドに、今回はコーラスに中村敦とLOVEが加わった。中盤はそんなメンバーのタイトなサポートを受けて、スウィートなインストやシックなポップなど、布袋の多面的な魅力が味わえる構成だ。
　バンドが一度ステージから去って、中村敦とLOVEがアコギ一本で「Amazing Grace?上を向いて歩こう」を歌った後、ライブの雰囲気が一変。ステージ前に張り出した花道にパープルのスーツ、パープルのギターを抱えた布袋と、アップライト・ベースの井上、スタンディング・ドラムの中村の最強トリオが現われた。スリリングなロカビリー・ビートをオーディエンスにプレゼントする。特に「バンビーナ」のスピード感は出色で、会場は大興奮だ。
　さらに3人がステージに戻って始まったバンド演奏は、ワイルド＆パワフル。有名な「MERRY-GO-ROUND」のイントロを、奥野がピアノでプレイしたり、最終章にふさわしいチャレンジと集大成といった内容で、充実している。

　サプライズはアンコールに仕掛けられていた。
「忘れられない１年となりました。懐かしい曲をやらせてもらったりしましたが、未来に向けて夢を追いかけて生きていきたい、“DREAMER”でありたいと思ってます。今日はバースデーということで、古い仲間が来てくれてます。高橋まこと！」。
　場内が大歓声をあげる中、高橋がステージに入って来て、抱えた花束を布袋に渡すと、そのままドラムセットに座った。ドカドカドッカーンと叩き出したのは「JUSTY」。すぐに観客が歌い出す。その反応の速さに、オーディエンスたちの喜びが表われている。布袋が弾き、高橋が叩くと、サウンドがBOφWYになるマジックに、アリーナが酔いしれる。
「せっかくだから、ダブルドラムで」と布袋が叫んで、中村が加わると、今度は高橋がマーチング・スネアを腰につけて布袋と一緒に花道を歩きながらプレイし、会場のあちこちにスティックを投げてプレゼント。BOφWY解散後もずっと若手と一緒に演奏してきた高橋は、まさに現役、いや現役以上のパフォーマンスで沸かせたのだった。それが何よりの布袋へのバースデー・プレゼントだった。

「サンキュー！古い古い仲間です。みんなに“ミスター・エイトビート”の輝きを味わってもらって、よかった。まこっちゃんは故郷の福島にために頑張っています。まこっちゃんに音頭を取ってもらって、福島にエールを贈ろう」。
高橋が福島へのエール唱和を行なう。これもまた、サプライズ。

　ダブル・アンコールは、まず「FLY INTO YOUR DREAM」で、布袋は渾身のギター・ソロをオーディエンスに捧げる。
「素晴らしい50才のバースデーをありがとう。最後はどうしてもみんなと一緒にこの歌を。慣れないピアノでやります。3月11日から、もうすぐ1年。ひとりひとりが頑張る気持ちが大事です。こんな俺でよければ、みんなと一緒に生きていきたいと思います」。
　ステージにひとり残った布袋は、ピアノで「LONELY★WILD」を弾き語る。孤高でいながら、音楽を通じてすべてに心を開く。そんなスタンスで活動するアーティストは多くない。もしチャンスがあるなら、できるだけ多くの音楽ファンに、これから始まる50代の布袋に触れてほしいと思った。

【 取材・文：平山雄一 】

【 撮影：橋本塁 】

【 撮影：山本倫子 】