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「みんなにありがとう! 音楽にありがとう!」 BUMP OF CHICKENツアーファイナルをレポート!

BUMP OF CHICKEN | 2012.02.17

 開演前、ステージ上でマイクのサウンドチェックをするスタッフの「ワン、ツー、ワン、ツー」という声にさえ、ウォーッと歓声が上がる。観客がこの日をどれだけ待ちわびていたかが高揚感とともに伝わってくる。

 BUMP OF CHICKEN、3年半ぶりのツアー、その最終日。
 3年半ぶりとは言え、2011年12月から年をまたいで全国をまわった19本目のライブ、満を持したる体勢でステージに現れた彼らを、観客は腕を高く挙げて歓迎した。早くも絆は温かく結ばれようとしている。

 序盤は、ただただプレイに集中するバンドと、その音と声のすべてを吸収しようと体中を全開にしたオーディエンスとの、密度も湿度も高い空間が広がった。「宇宙飛行士への手紙」で観客は藤原基央と手を振り合い、ジャンプし、スペーシィなギターソロに酔い、♪ラララ……と大合唱を繰り広げる。「透明飛行船」ではブルーと赤の象徴的なライティングの中、フレンドリーな歌詞とは裏腹のエッジの効いたサウンドが、さらに観客を挑発していく。そして、情景が浮かぶような物語性を聴かせる「ゼロ」へと、BUMP OF CHICKENの新しい輪郭がどんどん浮き彫りにされていった。

 メンバーを代表して、ベースのチャマこと直井由文が言葉を切り出す。
「みんな久しぶり!(今日は)チケット取れなかった人たちにも届くようにやるんで、せっかく会えたみんな、力を貸してください。最高のライブにしましょう!」
 しかし興奮に包まれたフロアは大変な事態になっていて、倒れた人を救出するスタッフの作業が終わるのをしばし待つ場面もあったものの、「オレがせーのって言うから、一歩じゃなくてちょっとでいいから、下がってみて下さい」と促す藤原に観客は素直に従い、次の曲を待つ。「じゃあ、歌うよ。続けるよ」

 この結束感。けして“一見さんお断り”のような閉鎖的な空間ではなく、心優しいバンドとファンとで今まで培ってきた当然の光景だった。それは演奏シーンでも変わらず、たとえば「66号線」の最後のフレーズ「こんな唄が出来たよ」は歌から話し言葉に移行する瞬間で、まだ歌詞が続いているかのように藤原が「ありがとう」と言うと、観客も「ありがとう」と答える。

 演奏中のバンドの表情や、メンバー同士でのかけひきも実に楽しそうだった。自由にセッションしながらも4人の音は核心に向かい、足並みを揃えながら(大事な宝箱を見つけた子供のように)重たいビートを嬉しそうに引きずっていく。あるいは、新曲「グッドラック」は真摯な説得力を持続させたまま、歌の背景を奏でていく作業が誠実に行われていた。そのどれもが最新のBUMP OF CHICKENだと高らかに宣言しているようだった。

 前半を終えて、あっという間だったと振り返る藤原。
「僕たちはベストパートナーですから、あっという間に時が過ぎていくんですよ。ここからもあっという間。1分1秒大事に演奏してますよ。君らも大事に聴いてください」
 終盤になるに従い、藤原の声には力が宿っていった。おおらかに、晴れがましく、一転して激しく、その彩りはもうすぐ見えそうなくらいに鮮やかだった。

「今日のライブも終わっちゃうし、ツアーも終わってしまいます。すげえ寂しいな」と、アコギでイントロを奏でながら今度は歌うような声で喋る藤原。彼が生み出す言葉の一つ一つが観客一人一人の胸に花のように刺されていく。
 本編最後の「天体観測」は、グッとグラマラスに、迷いのないスピード感で届けられた。懐の深ささえ感じさせる、新鮮なラストシーンだった。

 そして、アンコール。観客が歌う「supernova」のコーラスに呼ばれて、再びステージに登場したメンバーは、観客と握手を交わしたり、カメラマンをステージに上げて記念撮影をしたり、別れを惜しむ。
「(観客の)みんな、スタッフ、家族、友達、メンバー、ありがとう!音楽、ありがとう!」(直井)、「すげえ楽しかったよ、ツアー。沖縄も行ったし、北海道も行ったし。仙台も、大阪も」(増川弘明)、升秀夫はドラムのイスの上に立ち上がり、「ライブ楽しい、泣いちゃうかも知れない、でも我慢します!」(升はマイクを通さずにしゃべる為、なぜか直井が通訳)とバンザイのポーズを決めた。「君らと会えてホントによかったです。どうもありがとう。みんな、ホントにいい顔してるよ。ずっとそのまんまでいればいい。明日もあさってもそんな(いい)顔してりゃいいじゃん」(藤原)のMCに、ヒュ?ッと観客が口笛を鳴らすと、「オレをひやかすなよ。オレがみんなをひやかしてんだよ(笑)」と照れた。直井と同様、観客やスタッフ、家族や友達、音楽に加え、犬と猫にも感謝の言葉を添えて、アンコール曲「ガラスのブルース」、そして「DANNY」へ。

 強いハグのような大事な時間は、けれど、終わるときがやってきた。
「みんな、どうもありがとう。また会おうね。それまで、ときどき僕らのことを思い出してください。歌を聴いてください。僕は今日のことを忘れません」
どんな場所でも、どんなスケールでも、BUMP OF CHICKENの揺るぎない音楽がいつでも近くにあることを証明した日でもあった。

【 取材・文:森田恭子 】

【 撮影:古渓一道 】

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グッドラック(期間限定盤)

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2012年01月18日

トイズファクトリー

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2.ディアマン
3.グッドラック~ストリングス Ver.~arranged by Naoki Sato

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