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骨太な演奏で健在ぶりを示したエレファントカシマシ最新ライヴ

エレファントカシマシ | 2012.07.14

 ドラムのトミこと冨永義之の療養のため振替公演となったZEPP東京でエレファントカシマシは、ステージに揃って登場した4人を熱い拍手で迎えてくれたオーディエンスに、全力で応えた。

 幕開けは、宮本浩次がギターを抱え穏やかに歌い出した「大地のシンフォニー」。力強い彼の歌を聴いた途端、4週間弱待ちかねた思いなど吹き飛んだのは私だけではないだろう。実は本サイトでの最新作『MASTERPIECE』のインタビュー時(http://music.emtg.jp/special/20120501495fa1e9c)に、トミが入院した事、ツアーをどうするか相談しているところだと宮本は話してくれていた。間もなく退院するが「リハをしっかりやりたいので」と言っていたのは振替を覚悟し、その分オーディエンスに応えようという心づもりだったのだろうと思う。このステージは、そんな思いが詰め込まれていたに違いない。そして殆ど喋る事なく曲を続けていく宮本は、4人でステージに立てる事の喜びを噛みしめているようにも見えた。

 中心となる最新作『MASTERPIECE』からの曲が圧巻だったのは言うまでもない。パワフルでスケール感のある演奏の「東京からまんまで宇宙」や、ロックンロールなギターの応酬が楽しいノリを生んでいた「穴があったら入いりたい」、豪快なバンド・サウンドが圧倒的だった「世界伝統のマスター馬鹿」などは、一段とライヴらしい表情のある曲に。そこで活躍していたのがサポート・ギタリストの藤井謙二だ。The Birthdayの一員であり、斉藤和義などのサポートでも知られる藤井の、骨太でキレのいいギターは宮本たちに刺激になっているようで、演奏に硬派な味わいが加わっていたのは新鮮だった。また、ジワジワと高まっていく感情のうねりが、シャウトというより絶叫になっていく歌に引き込まれた「約束」や、聴くほどに思いが染み込んでくるような「Darling」は不器用な優しさが溢れ、後半の熱っぽさの中で歌った「七色の虹の橋」や「飛べない俺」には緊張感と躍動感が入り交じって、歌の存在感が際立った。

 前半で一気にオーディエンスを惹き込んだ「化ケモノ青年」も素晴らしかったが、バンドの存在感を見せつけたのは中盤の「珍奇男」。ライヴでは見せ場になることの多い曲の一つだが、アコースティック・ギターで歌い始めた宮本が途中でエレキ・ギターに持ち替え、石森敏行と藤井と3人でのジャム・セッションに。その流れで宮本がベースの高緑成治に近づきソロを促し、次いでトミのドラムを煽る。こうして全員がソロを取っていき、藤井がギター用テルミンで色を添えたり、オーディエンスとの応酬も加わって、気付けば10分を超えていた。演奏が終わったところで、「藤井謙二、日本のスーパー・ギタリスト。石森敏行、石くん相棒です。オン・ドラムス冨永義之、大丈夫ですか、元気になりました、ご心配おかけしました。今日もダンディに決まってます、成ちゃん」とメンバーを紹介。冨永は立ち上がりペコリと頭を下げた。いつもなら曲の由来を話したりする宮本だが、この夜はこれが唯一のMCだった。彼が言いたいことは、これに尽きていたのだろう。

 今回のツアーではステージに鍵盤が置いてあるがキーボーディストはおらず、「飛べない俺」を宮本が弾き語りで歌う他は「てって」でちょっと触った程度。その「てって」で、宮本の歌に合わせて柔軟に揺れるこのバンドのグルーヴがダイレクトに感じられたのは、4人で培って来た歴史を刻み込んだような演奏だったからだ。この4人にしか出せない音があるからこそ、彼等も揃って演奏する喜びを改めて味わっていたに違いない。

 起伏に富んだダイナミックな演奏の「我が祈り」で本編を締め、アンコールは腰の据わった冨永のドラムと高緑のベースが光った「今宵の月のように」、スリリングな演奏になった「so many people」「ガストロンジャー」、そして思い残す事は無いとばかりに宮本がステージを走り回った「ファイティングマン」でバンドとオーディエンスは一つとなり全てを解き放つように炸裂した。最大級の拍手が送られる中、ありがとう、と投げキッスをして姿を消した宮本に続き、石森が深く礼をしてステージを去った姿が眼に焼きついた。

 これまでに勝るとも劣らない濃厚で充実した2時間で20曲。エレファントカシマシの健在ぶりを存分に示したライヴだった。

【取材・文:今井智子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル エレファントカシマシ

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リリース情報

MASTERPIECE(初回限定盤)

MASTERPIECE(初回限定盤)

2012年05月30日

ユニバーサル シグマ

ディスク:1
1. 我が祈り
2. Darling
3. 大地のシンフォニー
4. 東京からまんまで宇宙
5. 約束
6. ココロをノックしてくれ
7. 穴があったら入いりたい
8. 七色の虹の橋
9. ワインディングロード
10. 世界伝統のマスター馬鹿
11. 飛べない俺
ディスク:2
1. ワインディングロード (Music Video)
2. 東京からまんまで宇宙 (Music Video)
3. 大地のシンフォニー (Music Video)
4. 約束 (Music Video)
5. 穴があったら入いりたい (Music Video)

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セットリスト

  1. 大地のシンフォニー
  2. 優しい川
  3. 化ケモノ青年
  4. 東京からまんまで宇宙
  5. 約束
  6. ココロをノックしてくれ
  7. Darling
  8. 穴があったら入いりたい
  9. 眠れない夜
  10. てって
  11. 珍奇男
  12. ワインディングロード
  13. 七色の虹の橋
  14. 世界伝統のマスター馬鹿
  15. 飛べない俺
  16. 我が祈り
ENCORE
  1. 今宵の月のように
  2. so many people
  3. ガストロンジャー
  4. ファイティングマン

お知らせ

■ライブ情報

【LIVE FACTORY 2012】
2012/07/14(土)Zepp DiverCity (TOKYO)

rockin’on presents
【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012】

2012/08/04(土)国営ひたち海浜公園

【RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO】
2012/08/11(土)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ

その他ライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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