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ユニコーンメンバーが結成した3ピースバンドのツアーファイナルをレポート!

電大 | 2012.07.17

 ユニコーンのメンバーで旧・広島電機大学(現、広島国際学院大学)を卒業or中退した精鋭(?)3人が、バンドを結成。その名も“電大”。歌とドラム/川西幸一、歌とギター/手島いさむ、歌とベース/EBIという全員歌ってしゃべくる、ぶっちゃけ3ピースバンドだ。それぞれのニックネームは電大だけに、“川西ボルト”、“手島ワット”、“EBIアンペア”。この6月にデビュー・アルバム『Δ(デルタ)結線』をリリースして、ツアー“DD00”に出発。全国5000キロを走破して、この日、新代田“FEVER”でファイナルを迎えた。
まったく期待しないで見に行ったのだが(笑)、ライブを見せてもらった感想は、「このバンド、好きだなぁ!!」。そう、電大は、小気味のいいほどあったかくて骨太な、正真正銘のロックバンドだった。

 梅雨時らしい蒸し暑い雨の日。“FEVER”に詰めかけたファンは、うまく言えないが、ユニコーン・ファンとはどこかがちょっと違う。その微妙な違和感は、ライブが始まった瞬間に正体が分かった。若作りなオープニングSEが流れる中、ボルト、ワット、アンペアの3人が登場。僕はてっきりお客さんが前に押し寄せてフロア後方にスペースができると予想して、「後ろでのんびり観よう」と思っていたのだが、大歓声を上げて盛り上がっているのに、全然前に詰めかけない。つまり、オーディエンスは“ガツガツしていない人々”だったのだ。よく見れば、若年層と男子の割合がユニコーンのライブより多い感じ。このパワフルなベテラン新人バンド“電大”のファイナルに駆け付けたのは、バンドの音楽とキャラクターをバランスよく味わおうとする人たちなのかもしれないのだった。

 オープニングは『Δ(デルタ)結線』からのナンバー「炎のモーニングコール」。往年のハードロック・バンド“レッド・ツェッペリン”を彷彿とさせるヘビーな曲で、、手島・川西・EBIの3人リードボーカルの魅力がいきなり炸裂。ユニコーンよりドラムとベースの低音が強く、3ピースならではの迫力あるサウンドになっている。
続いては、ユニコーンのアルバム『ヒゲとボイン』中のEBIボーカル・ナンバー「黒い炎」。“炎”つながりのイージーな選曲と思ったら大間違い。バンドの個性がすんなりわかるいい感じの滑り出しで、僕はこの2曲で「このバンド、好きだなぁ!!」と思ってしまった。そして“期待のMC(しゃべり)”へ。

手島:どうもぉ、電大でーす。全国回ってきましたぁ。僕が率先してしゃべり出すハメになってます。
川西:こんにちはー! “電大の感性”EBIくんでーす。“電大の頭脳”手島くんでーす。僕は・・・
手島:腕白者でーす! 今日は最終日。いつも思うんですが、ツアーの最初と最後はどうしても力が入るんですが、それでよかったタメシがありません(笑)。全国、いろんな人がいましたよ。札幌ではEBIくんの目の前にいた人が「きゃー、さっきのかっこよかった」とか声出して言ったりして。「心で言え!」っていいたかったですね。お茶の間でテレビ見てるみたいに言うもんだから、EBIくんがそれにヤラれて見事に撃沈(笑)。そんな数々の思い出とともに全国行ってきました。今日が最後だからって、淋しいとは思ってません。その理由は後で言いますけど、心のヒダと言いますか・・・
EBI:難しい言葉、使う。心のヒダ?
川西:僕とEBIにはないもんね。手島くんが“心のヒダ”担当。
EBI:ほんと、自分大好きで。
手島:だって“他人のフンドシ”で相撲取るわけにはいかんだろ。
EBI:でも、自分のことばっか!

 注目のMCは、予想以上のグダグダ感満載。奥田民生や阿部義晴がいないから、ツッコミなしのボケばかり3人で、誰もまとめない。が、それはそれで味がある。ってか、どのバンドにもない面白さと温かさがある。それはライブハウスでしか伝わらないものでもある。打ち上げで川西ボルトと話したが、かわにっさんはそれがやりたくて電大を組んだと語っていた。ユニコーンではメンバーが運転してツアーをすることはないし、ライブハウスを回ることもない。
 それにしても、メンバー3人とマネージャー、PAエンジニアの5人が1台のバンに乗ってずっと旅してきたそうだが、5人ともボケばかり。どんな車内だったのか、想像するだけで恐ろしい(笑)。

 さて、ライブは電大とユニコーンのナンバーをうまくミックスして進んでいく。よかったのは、「デーゲーム」(ユニコーンのアルバム『服部』)と「水の戯れ?ランチャのテーマ?」(ユニコーンのアルバム『シャンブル』)だった。独特の抒情をたたえたミディアム・ロック・ナンバーに、さすがのキャリアを感じる。
一方で、なんと「メダカの格好」を取り上げる。再結成したユニコーンの中で最大の暴挙といえるアレンジを施したこの曲を、電大はスマートなロックにして演奏。打ち上げでそのことを手島に聞くと、「ユニコーンのは、川西さんがあり合わせの楽器で作ったデモを再現しようとしたものなんだけど、ちゃんとやればああなる」。ちゃんとアレンジした電大もエラいが、凸凹の川西デモを再現しようとしたユニコーンも大したもんだと思わせる場面だった。

 また“川西幸一生誕50周年記念シングル”「半世紀少年」を久々に聴けたのには感激。川西いわく、「ユニコーンでは永久にやらないだろうから、電大でやろうと思った」。電大は、ただの“スピンアウト”バンドではない。この3人ならではの、愛と頭脳が結集したバンドなのだ。

手島:ついにEBIがベースを置きに行きましたね。
川西:この12本、演奏もしましたけど、しゃべり倒してきましたからね。この間にトイレでもタバコでも行ってきてください。
手島:全然、吸えるよ。
川西:ツアー中、ずっとてっしーが運転してて、誰にも代わってくれませんでした。
手島:ヒヤっとした回数はゼロ。縁石に乗り上げたのが、大1回と小2回。
EBI:好きなだけしゃべって下さい、最後ですから。

 『Δ(デルタ)結線』の中核ナンバー、「By The Way」と「野生の証明」が続く、唯一のシリアスなコーナーでは、EBIが「どこやってんのか、分からなくなった」という出来。手島が空中を飛びまくった前回のユニコーン・ツアーは、最初は“ヤモメが飛んだ日”というタイトルになるはずだったと、楽屋ネタを暴露したり、一貫してゆるーい楽しさが充満。ある意味、あり得ないツアー・ファイナルだった。最後は、川西ボルトが「若い人もオジサンも、また次のツアーで会いましょう」と締めくくった。

 そうして、打ち上げの真っ最中に、全19公演に渡る電大ツアー“DD01”の日程が発表された。メンバーは「それまでに次のアルバムを出す」と打ち上げで豪語していたが、スタッフは半信半疑の表情。ライブ好きなら、ライブハウスの神髄を突いたバンド“電大”を、ぜひ一度味わってみよう!

【取材・文:平山雄一】
【撮影:柴田恵理】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 電大

リリース情報

Δ結線

Δ結線

2012年06月02日

Line Drive Records

1. 風天
2. 炎のモーニングコール
3. 豪快男児
4. By The Way
5. 野生の証明
6. 白くぬりつぶせ
7. ビッグアーチ

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お知らせ

■ライブ情報

電大 TOUR "DD01"
2012/10/17(水)札幌cube garden
2012/10/18(木)札幌cube garden
2012/10/23(火)名古屋ElectricLadyLand
2012/10/25(木)岡山PEPPERLAND
2012/10/29(月)熊本DRUM Be-9 V1
2012/10/31(水)博多DRUM Be-1
2012/11/01(木)博多DRUM Be-1
2012/11/03(土)高知X-pt.
2012/11/05(月)松山サロンキティ
2012/11/10(土)金沢vanvan V4
2012/11/12(月)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2012/11/14(水)仙台darwin
2012/11/15(木)盛岡CLUB CHANGE WAVE
2012/11/17(土)下北沢GARDEN
2012/11/18(日)下北沢GARDEN
2012/11/26(月)大阪Music Club JANUS
2012/11/27(火)大阪Music Club JANUS
2012/11/29(木)広島ナミキジャンクション
2012/11/30(金)広島ナミキジャンクション

※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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