客電が消えヒューマンビートボックスが流れると、オーディエンスはいっせいに総立ちとなり手拍子を打ち始めた。そこへ満面の笑みを浮かべたタツヒロに続き、ぴょんぴょん飛び跳ねながら嬉しそうなコウスケがステージに登場。歓声の中、あいさつの代わりにボーカル＆ヒューマンビートボックスによるFree Styleで魅せた。そのままジャンケンがテーマのアッパーチューン「ジャンケンファイター」へ。コウスケのビートボックスにタツヒロのアコギが絡み、力強い歌が乗る。ジャンケンをしながら“グーチョキパー♪”とコール＆レスポンスし、早くもオーディエンスとの一体感を作り上げた。そして雰囲気は一転、「High High High」で場内は一気に彼らが住む奄美大島の風が吹いたようだった。

　“たくさんの人に来ていただいて良かったねえ、コウスケ”とタツヒロが言うと、“奄美大島から来て、ほんとに良かったあ?!!”と腕を上げてモノマネっぽく喜びを表現し、オーディエンスの笑いを誘ったコウスケ。インディーズの頃からずっと歌い続けている人気の「マルコMEN」へ。なんとこの曲では写真撮影がOKに。もちろんほとんどの観客がすぐさまケータイを取り出しステージに向けるという不思議な光景となった。歌の途中、“みんな、聴いてるのかな？”とタツヒロ（笑）。ファンにはうれしい企画だった。カサリンチュのワンマンライブでしか味わえない時間──タツヒロ曰く“奄美の黒豹、コウスケ”がメインボーカルを取る「とっつぶる」を披露し、“アーシー”と称される歌声を聴かせた。そして、彼らの名を全国区へと押し上げた「あなたの笑顔」の伴奏が始まると、“待ってました！”とばかりに歓声が上げる。そのどこまでも突き抜けていきそうな透明感ある優しくも芯のある歌声にオーディエンスは、歌詞をかみしめながらじっと聴き入っていた。

　カサリンチュのライブで恒例の“カサリンチュ総選挙”なる、タツヒロとコウスケ、どっちが男として魅力があるのか白黒つける企画も。場内から女性ファンが１人選ばれ、ステージへ。２人が「ラブライバル」を歌ってアピール。現在のところ３勝１敗でコウスケがリード。この日は、ファンも爆笑のコウスケの強烈すぎるアピールが逆効果だったのか!? タツヒロが勝利。“ヤッター！ 久々の勝ちでございます！”と大喜びするタツヒロ。選んでくれた女性のためだけに尾崎豊の「I Love You」をカバーした。いろんなアーティストがカバーしている曲だからこそ、タツヒロの歌の上手さが一段と際立っていた。

　1stアルバム『カサリズム』からの楽曲がメインで演奏される中、未発表曲「故郷」も披露。ひと言ひと言、気持ちの込められた歌声は、聴き手それぞれの故郷を心に思い浮かべながら感情移入できる前向きなバラードだった。さらにインディーズミニアルバム『SUNNY DAY STYLE』から「ファンキーコウウンキ」も。強力なファンクのグルーヴに乗って、“ファンキー コウウンキ♪”をレスポンスして大盛り上がり。本編ラストを飾った「やめられない とまれない」まで、カサリンチュならではの演出が盛りだくさんで、場内には終始温かい空気が流れていた。

　アンコールでは、来年３月2日より全国上映される映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』主題歌に決定した未発表曲「あるがままに」が早くも披露。そして、12月28日に同じくshibuya duo MUSIC EXCHANGEで年末ライブの決定も発表しファンを喜ばせた。

　２人の素朴だけど個性的なキャラクター、掛け合い、仲の良さまで垣間見えるMCで、オーディエンスを笑顔と笑いに包んだ彼ら。また、演奏中にも楽曲にまつわるトークを織り込んだり、CDとは違った歌い方、セリフを入れたりと、“生”ならでは、“ワンマン”ならではのライブを展開。さらに、常に手拍子や声でオーディエンス参加型の、会場みんなで作り上げる楽しいライブだった。

【取材・文：牧野りえ】
【撮影：荒川 潤】