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歌い手としての在り方を見せてもらった、元ちとせのスペシャルライヴ

元ちとせ | 2012.11.28

 11月15日、Billboard Live TOKYOにて「元ちとせ ワンマンライブ?霜ふる月のハイヌミカゼ?」が行われた。大阪のBillboard Liveと名古屋のBlue Noteとまわった今回のツアーは一晩で2公演制。東京公演の1st STAGEでは、19時ジャストに、佐橋佳幸(Guitar)、石成正人(Guitar)、ASA-CHANG(Dr/Percussion)の3人がスタンバイし、その後、元ちとせがドレープが美しい水色の衣装で登場。1曲目の「千の夜と千の昼」から、シンプルな編成であるからこそセッションの熱量がダイレクトに伝わってくる演奏と、そのサウンドをひとつにまとめて大きなうねりを生み出すような元ちとせのヴォーカルの凄まじい気迫を体感した。六本木のど真ん中にある高級感溢れる空間に生々しく満ちていくその音楽は、風の音や土の匂いや温もりを感じさせるようだった。

「この場所で歌わせていただくのは3回目になります。みなさんと一緒にいい時間を過ごしたいと思っておりますので、美味しいお酒と歌を楽しんでいただきながら、最後までお付き合いください」という挨拶の後には10月にリリースされたベストアルバムのラストに収録されている「あなたがここにいてほしい」。その息遣い、節回し、声の抑揚のひとつひとつが確かに届けられると、その度に、この歌の中にある<想い>が目に見えるように、手で掴めそうなほど近くに感じられた。ミニマムなアコースティック・ギターの音色もゆっくりとその歌を運んでいく。そして次の「心神雷火」では紫や赤の照明でガラリと雰囲気を変え、空を分かつ雷鳴の鮮やかなイメージと共に伸びやかな歌声が響き渡る。続く「君ヲ想フ」でも丁寧な歌唱が会場の熱量をどんどん上げていく。

 元ちとせも観客も軽快なパーカッションに合わせた手拍子で楽しいムードになったのは井上陽水のカバー「Tokyo」。東京の夜の街を旅するようなこの曲をチャーミングに歌いこなすと、みんなにこやかなムードに。そして次はスペシャル・ゲストとして同じ事務所の後輩である秦 基博が登場。「何度もここ(Billboard Live)で歌ったりしてるんですか?」と元が尋ねると「いや、初めてですよ」と答えた秦。「嘘!? 早く言ってよ」、などとフレンドリーなやり取り。二人でイルカの名曲「なごり雪」をカバーすると、ワンコーラス目をひとりで歌った秦の柔らかくも力強い歌声に大きな拍手が起こり、更に元の情緒豊かな歌声、二人の繊細なハーモニーと続く贅沢な時間に、誰もが集中して聴き入っていた。ちなみに秦とのデュエットは1st STAGEのみで、2nd STAGEは事務所の先輩にあたる山崎まさよしが登場したのだとか。そしてライヴもいよいよ終盤、彼女はデビュー10周年を振り返りながら、こんなMCをした。

「2002年の2月6日に「ワダツミの木」でデビューしました。この曲は上田現という人が書いてくれたんですけど、彼との出会いがあったことを本当に誇りに思います。彼は4年前に遠い遠い旅へ出てしまったんですけど。私にとって「ワダツミの木」は〈特別な曲ですか?〉って色んな人が訊いてくれます。もちろん、そうやって思ってきたんですけど、この曲だけを特別ですって言うと、彼が旅立ってしまったことを特別にしてしまいそうで、それが怖くて上手く気持ちをまとめきれなかったところがあったんですが、ベストアルバムの1曲目に「ワダツミの木」を入れたことで、〈この曲がなかったら私はこうして今この場所に立っていなかっただろうな〉とか、〈こうして10年歌の道を歩けたかな?〉って、あらためて思いました」

 そうして歌われた「ワダツミの木」は、元ちとせの歌い手としての今の決意を新たに吹きこむような渾身の歌声だった。変わらない歌との真摯な向き合いに、10年という年月の歩み、女性としての柔らかさや大らかな強さが加えられて届けられる。「気合いを入れて歌の道をあらためて歩き直したい」、この日、観客にそう告げた彼女の想いは歌にもパフォーマンスにもあらわれていた。そして本編ラストは軽やかなサウンドとキュートな表情と声で「甘露」を。夜空に光の粒が降ってきそうな幸せな時間となった。
更にアンコールではステージ後ろの幕が開き、ガラスの壁一面、この日に点灯したばかりのクリスマスのイルミネーションが輝く。とびきりモダンな雰囲気の中で演奏された「ひかる・かいがら」はまた格別で、美しく柔らかな動きで躍る彼女の佇まいと声の向こうに青い海が見えそうだった。ラストの「語り継ぐこと」までたっぷり、最後の一声まで丁寧に届けられた、この夜のステージ。これからの10年をまた、ひたむきに歌い続けてくれるであろう、元ちとせの歌い手としての在り方を見せてもらったような素晴らしいライヴだった。

【取材・文:上野三樹】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 元ちとせ

リリース情報

語り継ぐこと(初回盤)

語り継ぐこと(初回盤)

2012年10月24日

アリオラジャパン

1. ワダツミの木
2. いつか風になる日
3. 君ヲ想フ
4. この街
5. 千の夜と千の昼
6. ひかる・かいがら
7. 蛍星
8. 青のレクイエム
9. 六花譚
10. なごり雪
11. 春のかたみ
12. 雫
13. 恵みの雨
14. 語り継ぐこと
15. あなたがここにいてほしい

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セットリスト

「霜ふる月のハイヌミカゼ」1st STAGE
2012.11.15@Billboard Live TOKYO

  1. 千の夜と千の昼
  2. 春のかたみ
  3. あなたがここにいてほしい
  4. 心神雷火
  5. 君ヲ想フ
  6. 冬のサナトリウム
  7. この街
  8. TOKYO
  9. なごり雪 with 秦 基博
  10. ハイヌミカゼ
  11. ワダツミの木
  12. 甘露
ENCORE
  1. ひかる・かいがら
  2. 語り継ぐこと

お知らせ

■ライブ情報

「Silent Christmas 〜Wishes for you〜」
2012/12/24(月)ホテルオークラ 平安の間
2012/12/25(火)ホテルオークラ 平安の間

Augusta Caravan Vol.3 ~Sound Storm in RAISN 2012~
2012/12/26(水)レザンホール(塩尻市文化会館)・大ホール

元ちとせ 10th Anniversary LIVE
2013/01/25(金)会場なんばHatch
2013/02/09(土)SHIBUYA-AX

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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