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渋谷公会堂で魅せた、山崎まさよしの存在そのものを感じさせる圧巻のライブ!

山崎まさよし | 2013.02.27

 そのライヴは、とても厳かな雰囲気から幕を開けた――。
 照明や演出にいっさい頼らず、ただただ真っ直ぐに唄が届けられたオープニングは、会場全体が、山崎まさよしという声、山崎まさよしという人間、山崎まさよしという存在に引き込まれた、そこにしかない唯一無二な時間であり、いつものライヴ形態とは少し違った、より深く、より濃く、山崎まさよしを感じられるものだった。
 この日の渋谷公会堂は、東京のど真ん中であることすらも、忘れさせてくれる時間が流れた特別な場所であったと言っても過言では無い。
 中村キタロー(B)と江川ゲンタ(Dr)と、山崎のギターと唄。決して多くはない、最低限の音数で届けられていくそのスタイルもまた、ここだけに存在する、このライヴの意味を感じさせられるものだった。息の合ったプレイで届けられる楽曲たちは、シンプルでありながらも、絶対的なスキルと説得力を放っていた。彼らが心の底から音楽を楽しんでいるその空気感こそが何よりの演出。直に音と唄を浴びているような、そんな感覚だった。
 サスペンダーによってハイウエストぎみに深く履き込まれたパンツにハンティング帽という姿の山崎と、オーバーオール姿の中村と、ログハウスが似合いそうな風貌の江川。いつもとは違った風貌の3人は、音を感じ、音そのものを遊ぶ様にマイペースに音と唄を届けた。
「雪が降りましたけど、どうでした?」(山崎)
 なんとも“普通”なトーンのMCだ。
のほほんと流れる空気に、会場からは、“大丈夫?”という返答に紛れ、3人の風貌に対し、“可愛い?”の声が上がった。そんな声をしっかりと拾った山崎はこう続けた。
「おいおい。可愛いって言うなよ(笑)。いや。待てよ。この歳になったら可愛いにシフトしていかないといけないかもな。このパンツもね、60歳くらいになったらもっと上まで、胸あたりくらいまで上がってると思うから(笑)」(山崎)
 オーディエンスは、その瞬間、パンツを深く胸まで履き込んだ60歳の山崎を想像したのだろう。会場からは笑いが起こった。あたたかな時間が流れた。オーディエンスが、ずっと身を置いていたくなるようなこの時間を求めてここにやってきている理由を悟った気がした。
 この日は主に、3人の音と山崎の声に聴き入る場面が多かったのだが、ときおり、彼らが音を強めると、それを無言の合図にオーディエンスは立ち上がり、体を揺らし、クラップを加える。言葉なく自然とそこに産まれる、届ける側と受け取る側の阿吽の呼吸は、実に気持ちのいいモノだった。
 今回のツアーは、アルバムを引っさげてのものではなかったことから、山崎まさよしの名曲の数々を改めて楽しめたライヴでもあったのだ。それゆえに、次に届けられる曲が、いつも以上に想像がつかないというのも楽しみの1つだった。イントロで歓声が上がる瞬間も、山崎がハープに息を精一杯注ぎ込む瞬間も、3人が息を合わせ、音をいっぱい溜めて吐き出す瞬間も、いつものライヴ以上に入り込んで受け取ることが出来たライヴだったのではないかと思う。
 しかし。純粋に。
やっぱり山崎まさよしっていいよなぁ?。
 なんて、つくづく山崎まさよしというアーティストが居てくれることに感謝してみたり。
 山崎本人も、このライヴを通して、自らの歴史を振り返ったのだろう。アンコールで彼は、ファンクラブを立ち上げて15周年が経ったことへの感謝の気持ちをのべたのだ。
「RUIDというライヴハウスから始まって、ずいぶん長く歌ってきましたが、ファンクラブを立ち上げて15年になるんですよ。これが犯罪なら時効です」(山崎)
 まさかの時効発言に会場からは笑いが起こる。いやはや。本当に山崎の頭の回転の早さにはいつも驚くばかり。この日も、ひょんな話の流れから、“女々しい”という言葉は男にしか使われない言葉だと切り出した山崎が、“女々しい女だな! って言わないもんね。女々しい女……。それはそれでいいだろう! ”と、テンポよく話し続けたことに会場は大爆笑となった一幕もあったほど。緩いトークの中でも、頭の良さが光るのだ。そんな彼の人間性も、愛される理由なのだろう。
「15年ずっと会員で居てくれてる人をゴールド会員、10年会員で居てくれる人をシルバー会員にさせて頂いているんですが、ゴールドのメンバーズカード持ってくれてる人って居ます?」
 と山崎が訊ねると、会場からは“はぁ?い!”という声を共に何人もが手を挙げたのだ。
「お?っ! 持っててくれてる! 長いなぁ。ありがとうございます!」
 屈託のない笑顔を向けた山崎。その笑顔は心からの笑顔であった。
 山崎のそんな笑顔も、歌声も、演奏も、彼から産まれてくる楽曲たちも言葉たちも全部、オーディエンスの大切な光なのだろう。
 ツアータイトルは“種をまく人”という意味を持つ『SPEED FOLKS』。
 山崎がまいた種を育ててくれるのがオーディエンス。そして、ライヴという場所で、共にそこに花を咲かすのだ。
 そんな関係性をとても羨ましく思った。
そしてこの日。間違いなく、この日にしかない、ここにしかない花を咲かせた。
 彼はきっと、またここから、新たに種を産み出し、全国にまくことを誓ってくれたに違いない。
 そう感じたあたたかな夜だった。

【取材・文:武市尚子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 山崎まさよし

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リリース情報

星空ギター(初回盤)

星空ギター(初回盤)

2012年11月28日

NAYUTAWAVE RECORDS

ディスク:1
1. 星空ギター
2. 太陽の約束 (Acoustic Ver.)
3. アフロディーテ (Noche Caliente Mix)
ディスク:2
1. アフロディーテ [2012.8.4]
2. アレルギーの特効薬 [2012.8.4]
3. 審判の日 [2012.8.4]
4. セロリ [2012.8.4]
5. 長男~パンを焼く [2012.8.4]
6. 晴男 [2012.8.4]
7. アフロディーテ [2012.8.5]
8. アレルギーの特効薬 [2012.8.5]
9. 審判の日 [2012.8.5]
10. HOBO Walking [2012.8.5]
11. 長男~パンを焼く [2012.8.5]
12. One more time,One more chance [2012.8.5]

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お知らせ

■ライブ情報

TOUR2012-2013 SEED FOLKS
2013/02/27(水)高知県立県民文化ホール・オレンジ
2013/03/01(金)西条市総合文化会館
2013/03/02(土)丸亀市民会館
2013/03/10(日)和歌山市民会館 大ホール
2013/03/12(火)オリックス劇場
2013/03/13(水)オリックス劇場
2013/03/16(土)神奈川県民ホール
2013/03/23(土)會津風雅堂
2013/03/24(日)山形市民会館 大ホール
2013/03/30(土)宇都宮市文化会館
2013/03/31(日)茨城県立県民文化センター
2013/04/06(土)だて歴史の杜カルチャーセンター
2013/04/07(日)札幌市民ホール
2013/04/11(木)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
2013/04/12(金)なら100年会館 大ホール
2013/04/14(日)神戸国際会館こくさいホール
2013/04/16(火)大宮ソニックシティ
2013/04/18(木)千葉県文化会館 大ホール
2013/04/26(金)高周波文化ホール
2013/04/27(土)新潟県民会館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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