この日集まった2万人のBABYS(ファンキーモンキーベイビーズのファン)は、今回のツアー20万人の気持ちを代表するように、会場であるさいたまスーパーアリーナに集まった。
泣いても笑っても、これが最後のツアーのファイナル。開場前の敷地には、気持ちを共有したいBABYSが、これまで以上に数多く集まっていた。

　開場時間。この日は特別に彼らのチーフマネージャーより開場宣言がなされた。これを待っていたBABYSも多かったのだろう。その宣言にいつも以上に入口付近が湧く。そこから開演までが、いつもと変わらぬタームながら、ことさら長く感じた。その間、これまでのライヴでのファンキーモンキーベイビーズ(以下 : FMB)の勇姿や名場面を、まだ無人のステージに向けてオーバーラップしてみる。
開演時間定刻。そんなライヴへの高まりを煽るように、このツアー各会場の開演前の気持ちを鼓舞してきた、羽鳥アナウンサーによるライヴ中の注意と万感の思いが、既に満員になった会場に告げられる。恒例となった準備体操?ファンモン・エクササイズで、ひと時、心も体もリフレッシュし、2万人のお客さんによる「WE ARE FUNKY MONKEY BABYS」の大コール。その声はこれまでよりも大きく力強い。

　大音量と共にライヴの開始を告げるデパーチャーが流れ、映し出された映像には、ケミカルが厳しい修行や鍛錬を経て、開眼していくストーリーが。いよいよだ。デパーチャーが終わるタイミングで、まるでそこから抜け出してきたかのように、ケミカルがステージに現れ、ところ狭しと駆け回る。そして、爆発と白煙の中から現れた、本日の着ぐるみは「キノコ」。間髪入れず、「毒きのこだぁ?!さいたま?!　いくぞ?　WE ARE FUNKY MONKEY BABYSだ?!!」と、開会宣言。ファイナルツアーの最後のステージが走り出した。1曲目は「Say!Joy!」。"今日は燃え尽きる!"と言わんばかりに、現れた加藤とモン吉が、いきなり全力疾走でステージを左右に大きく駆け回る。「Say!」「Joy!」のコール&レスポンスが、客席とステージをガシッと一つにしていく。続く「LIFE IS A PARTY」では、会場も一緒におなじみの振りで楽しく踊り、「ナツミ」では恒例のナツミダンスが場内に起こり、この３曲で場内とステージとの距離はすっかり縮み、ついには同化していく。

　ここでMC。「お待たせしました?!FUNKY MONKEY BABYSだぁ?!!ツアーファイナル公演にようこそ。21箇所20万人の気持ちを胸に、今日はFUNKY MONKEY BABYS史上最幸のライヴにしていきたいと思います。ついてこれるか?!さいたま?!!」と加藤がガッツリ煽る。
次のブロックは、比較的初期のナンバーが2連発された。「ALWAYS」でのコール&レスポンスに会場が全力で呼応すれば、続く「恋の片道切符」では、切なさに満ちた会場中の思いを、ステージの3人がギュッと抱きしめる。
その後は、バラードゾーン。しっとりとした曲たちが会場の思いに寄り添っていく。歌われる歌と共に一途な思いを重ねていった「この世界に生まれたわけ」、大好きな気持ちが胸の中でブワッと広がっていった「告白」では、泣きながら、一緒に歌っているBABYSも多く見られた。

　次のMCは過去のライヴの思い出が中心に語られる。この日のケミカルのタンクトップには、2009年の日本武道館の思い出と、背中には35年後の老人となった3人が武道館の中に居る絵が描かれていた。泣ける。活動期間に換算すると1週間に1度のライヴペースとのことだが、この時、多くのBABYSが、自分が参加したライブを思い返したことだろう。また、この日は特別に、これまでのツアーについてが振り返られた。なんでも最初の全国ツアーは東阪の2箇所で、動員は1000人。今回のツアーは全国21箇所。しかも会場はすべてアリーナで、総動員数は20万人だというから、ここまでの道のりを思い返すだけでも、ちょっとジーンとくる。
この後、ニューアルバム『ファンキーモンキーベイビーズ5』からの曲のブロックを経て、みんなの声からの曲紹介で始まった、今回のツアータイトルでもあり、BABYSとより一心同体にさせていく「WE ARE FUNKY MONKEY BABYS」に入る。ここでは、まさにFMBの3人とBABYSの心が大接近。同化をみせる。
これまでは、このブロックのMCでは、BABYSへの思いや、今回のツアータイトルについて語られていたが、やはりこの日は趣きも多少違っていた。「ケミカルがいずれ住職を目指し、グループを脱退しなくてはならないことは、結成の時から決まっていた。だからこそ、自分たちは一生懸命、悔いの残らないように、常に何事にも全力でぶつかっていったし、進んでいった」と、これまでのこのタイトルをつけた件の前に、この言葉が加えられた。

　ライヴは中盤。会場中が、ありがとうの気持ちや声援を涙声を交え一緒に歌った「ありがとう」、続いての「桜」もやはり、感謝ソング。こちらもBABYSへの"これまでありがとう"の気持ちが歌に乗せられ、伝えられた。また、自分たちとBABYSには、さよならなんて存在しないことを、歌を通して伝えた「サヨナラじゃない」、「FUNKY MONKEY BABYSをこれまでやってきてほんとよかったです。大切なあなたに何度も歌わせて下さい。あなたたちが私たちの唯一の希望でした」との加藤のMCの後、伝えられた「希望の唄」は、まさに感涙ものであった。そして、本編ラストは、やはり元気に、文字通り悲しみも笑い飛ばす勢いを見せた、「悲しみなんて笑い飛ばせ」で締められた。

　アンコールでは、「街中でケンカしてるカップルを見かけると大抵女性が怒ってる」「ヒーロー」が続けて歌われ、その後、3人からの最後のMCが伝えられる。ここでは、やはりいつもよりBABYSに向けての感謝の意が多く伝えられる。モン吉からは「楽しく終わりにしたい。みなさんありがとうございました。本当にこの10年楽しかったです！」が、ケミカルからは「みなさんに支えられてのあっと言う間のこの10年でした。人間には決断して攻めなくてはならない時があって、僕も今回、決断して攻めていきます。時には厳しいこともあるだろうけど、是非みなさんも今後直面する色々な場面で決断し、攻めていってほしい。最高に光り輝くと書いて、<最光(さいこう)>の10年でした。ありがとうございました」と、続け、最後は加藤が「10年間を凝縮したかのような2日間だった。みなさんが幸せな日々、穏やかな日々が送れるように歌を恩返しのように歌ってきたけど、少しは恩返しができたのでしょうか?いつかくじけそうになったり、頑張れって言って欲しい時には、いつでも、いつまでも俺たちに寄りかかって下さい。俺たちは、解散しても、みんなの中で生き続け、歌い続けますから」と、これからも永遠に支えられ、励まされ、力となっていくだろう言葉が告げられる。そして、彼らのブレイクナンバーとも言える「Lovin’Life」を経て、本編ラストはやはり、彼らの締めには欠かせない「西日と影法師」が歌われ、会場も明るくなり、演者も観客も関係なく、みんながFMBになっていく。そして、最後は会場中一斉に「WE ARE FUNKY MONKEY BABYS」の大コールで締め。みんなその余韻やその日のライヴを振り返り、思い返すように、<長い間ありがとう>の感謝の意味の込められたエンドロールを見ながら、一緒に流れる「大切」を涙交じりで大合唱した。

　会場を後にする多くのBABYSが、入る時よりも元気で前向きになり、エネルギーや活力を得た後の頼もしく嬉しそうな顔と、”明日からまた頑張るゾ!!”という気持ちを湛えた、キラキラとした瞳も印象的だった、この日のライヴ。そう、FMBはこれからも私たちの中で生き続け、心の中で歌い続けていてくれる。明日からも笑って、力強い第一歩を踏み出せるように。
さぁ、次はいよいよBABYSとFMBの悲願とも言える、東京ドームライヴだ。その時まで、彼らが作品やライヴで残してくれた歌や言葉を胸に、また明日からも頑張って行こう!!

【取材・文：池田スカオ和宏】