昨年秋にリリースしたカバーアルバム『MELODY』をひっさげ、3月から“MELODY TOUR 2013”を行ってきた清水翔太。そのツアーファイナルは、5月15日に東京国際フォーラム　Aで行われた。J-POPの名曲を集めた『MELODY』の 曲を中心に聴かせ、各曲の世界観を歌声で存分に表現。シンガーとしての実力を、改めて見せつけた。

　ライブはオープニング映像のあと、桑田佳祐のカバー「白い恋人達」から始まる。1曲目からバラードという難易度の高い展開にもかかわらず、彼は オーディエンスをグッと引き込んでいく。2曲目は彼の盟友、加藤ミリヤの名曲「Aitai」。翔太ファンにはミリヤ支持者も多く、イントロが流れ ると大きな声援が起こったのが印象的だった。その後も徳永英明の「レイニーブルー」、中島みゆきの「化粧」など、世代をこえて愛される名曲達を熱 唱していく。5曲歌ったあとには、彼自身のヒストリー映像が流れる。デビュー前後のあどけなさが残る映像には場内から「かわいい！」という声も。

　映像が終わると、今度はセルフカバーのコーナーへ。得意のピアノの弾き語りで「With You」から「Journey」「君が暮らす街」「your song」など、ファンには嬉しいオリジナル曲が続いた。セルフカバーのブロックが終わると、再び映像コーナーへ。ここでは5周年の節目を迎えた彼のイン タビュー映像が流れる。そこでは、『MELODY』というカバーアルバムを作ることになったいきさつなどが語られた。邦楽のよさをもう一度伝えた い、歌詞とメロディーを伝えたい……そんな彼の思いが伝わってくる。映像の終わりからは、平井堅のカバー「even if」が始まり、再び美しい“歌”の世界へ。続く絢香の「三日月」は、アコースティックギター1本の伴奏で聴かせ、聴く者の心を揺さぶった。

　さて、ライブは後半のブロックへ。ここで、
「ゲストが来てくれました！　紹介します！」と、スキマスイッチの大橋卓弥を呼び込んだ。アルバムでもこの曲では共演が実現しているが、生で聴く 「夏の終りのハーモニー」はまた秀逸。異質な声質のふたりの声が解け合い、会場には暖かな空気が流れる。原曲は井上陽水と安全地帯の玉置浩二というコラボだが、清水翔太＆大橋卓弥のコンビも非常に新鮮。ありそうでなかったコラボは、オーディエンスへの意外なプレゼントとなった。

　大橋を見送ったあと、「いや?、来てくれましたね。緊張したな……でも、ここからもっと緊張するヤツです（苦笑）」と前置きすると、観客からの リクエストに即興で応じるというリクエストコーナーへ。観客からは口々に曲名が飛ぶ。リアルに打ち合わせなしの、ぶっつけ本番だ。ここで翔太は、 Aqua Timezの「決意の朝に」やMr.Children の「HERO」、さらには小田和正の「言葉にできない」などのリクエストに応え、ピアノを弾きながら即興で歌い、場内を驚かせた。フルコーラスではないま でも、サビまで歌いきったのはさすが。このサプライズのリクエストタイムのあとは、1曲だけ洋楽のカバーを聴かせる。歌ったのは彼自身も思い入れ の深いスタンダードナンバー「Stand By Me」。ソウルフルな歌いまわしで、歌をすっかり自分のものにしているのは見事。

　本編ラストは古内東子の「誰より好きなのに」。R＆Bテイストにアレンジされ、場内からは暖かい手拍子も起こる。素晴らしい一体感で ホールをまとめ、本編はここで終了。

　“翔太”コールが響く中、アンコールには加藤ミリヤとラッパー、SHUNが登場。ミリヤのツアーファイナルにも駆けつけた翔太とSHUNだ けに、お返しがあるのでは……と期待はしていたものの、やはり3人が出てくると場内のテンションは急激にアップ。華やかさが倍増する。しっとり聴 かせてきた本編の空気を変え、3人の「今夜はブギーバック」で、アッパーに盛り上げてくれた。このあとは尾崎豊の「Forget-me-not」を、再びピアノの弾き語りで披露。最後の最後は、HYの名曲「366日」を、なんとHYの仲宗根泉を呼び込んで共演。歌に入る前のふたりのかけ合 いに爆笑させられる瞬間もあり、リラックスした空気もライブならでは。最後は翔太がゲスト全員をステージに呼び込み、大きな拍手を浴びながらツ アーを締めくくった。アンコールのあいだには、清水自身のオリジナル・シングル『WOMAN DON’T CRY』（7月3日発売予定）のリリースも発表。カバーで培った経験がどう活かされるのか、彼の“NEXT”を期待したい。

【取材・文：海江敦士】