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吉川晃司、集中連載、スタート!!「SAMURAI ROCK」を紐解くインタビュー前編。

吉川晃司 | 2013.07.08

本年、自身のレーベル“SAMUTAI ROCK”を設立した吉川晃司。NHK大河ドラマでの西郷隆盛の怪演も記憶に新しいが、その収録と並行し、新たな音楽作品を作り上げていた。新レーベル第1弾シングル「SAMURAI ROCK」のリリースに続き、4月にはニューアルバム『SAMURAI ROCK』の完成、さらに5月からはこのアルバムを帯同した全国ツアー“KIKKAWA KOJI 2013 SAMURAI ROCK BEGINNING”もスタートさせた。
 吉川晃司の“SAMURAIのスピリッツ”とともに、その転がり続けるロックンロールに迫る。
 全国ツアー中の吉川晃司をキャッチ。アルバムの話、ツアーの話などいろいろ聞いた。
前後編のインタビュー、その前編。
途中で脱線してるのも、吉川晃司ならでは。
この侍、視点は広いし(ある意味グローバル)、頭の回転、速すぎる。あぁ、戦国時代にそんな武将、いたな。

EMTG:『SUMRAI ROCK』をリリースし、ツアーもスタートしてますが、今の手応えは?

吉川:
まぁ、序盤……特に初日が終わった後は、自分の中で、修正点がいろいろ出てきたから、そこを短い間に、どれだけ直していけるかなって思いが大きかったかな。初日の本番が始まる前に、自分の中で見えていたものが、少なからずあったんで、余計に修正点だけ覚えてるのかもしれないけど。あとは、前半は声帯の調子があまり良くなくて。特に低音が。これは、大河の西郷さんの声の出し方が、全然違うから、そこも影響してるんじゃないかなぁ、とか、思っているんですけどね(笑)。

EMTG:声の話題が出たので、あえてお聞きしたいんですけど、特にここ10年前後、ボーカリスト・吉川晃司という視点で表現方法を見ていると、太い声、低音がより目立つようになってきている印象を受けます。低音の中でもバリエーションが増えてきた。

吉川:
そうですね。まぁ、ひとつの個性にはなってきたんじゃないかなと思いますね。やっぱり年齢とか、キャリアとかを考えると、味わいみたいなものもね、必要だし。いろいろ使える武器も増えてくるから、そこはもう本当に、武器として使えればいいのかなと思いますね。

EMTG:確かに、味わい深い。そんな武器になってると思います。

吉川:
だといいですけどね。でもまだまだです。

EMTG:今回のツアーは、やっぱりアルバム『SUMURAI ROCK』の収録曲を、曲順にライヴの頭から再現するっていうのが、大きなポイントだと思うんです。このアイデアは、いつぐらいにどこから?

吉川:
そこは最初から思っていたことではあったんです。アルバムが、かなりコンセプチュアルなものだったし、アルバムを作っている時点で、オープニングから4曲目くらいまでは、見越して作っていた。

EMTG:それは、ライヴで順番に再現することを見越してってことですか?

吉川:
違う、違う。アルバムをひとつのストーリーとして作っていったってこと。だから、1曲単位ではなく、アルバム全体を通して、表現したいものがあったんですね。例えば1曲目「覚醒」という曲がある。これは現代人は何かを忘れている、それが多すぎるから、危険信号とかいろんなものがもう聞こえなくなってる。それを呼び覚まさないと、危ねぇぜって、みたいな歌なわけですよ。今の世の中には、いろいろ隠されたワードがありますよってところから、アルバムがスタートする。そのワードのひとつが「Do the JOY」の中に隠れていたり。パっと聴き、普通に楽しい歌だと思うですけど、じつは違うっていう。そこは聞く人が、感じて受け取ってくれればいいと思う。まぁ、そういう曲の中でも、あえて種明かしをするなら「絶世の美女」は、要するに原子炉を例えている曲だし。だからね、1曲ずつ、切りようがなかったの。最初から順番じゃないと成立しない。何かを1曲抜いてもおかしい。だからある程度、アルバムの全体像が固まってきた時点で、これはライヴで順番に全部やろうと思ったんですよ。

EMTG:ライヴでは、聴覚だけでなく視覚効果もあるわけじゃないですか。アルバムのコンセプトをより伝えるために、そこの効果はどう考えられました?

吉川:
ビジュアル的に、少しわかりやすいものは作ろうと思ってましたし、映像で投与してもらおうと思ってた。あと、イラスト化してパンフレットみたいな形も、作れたらいいなと思ったんです。それでいろいろスタッフにも相談して。で、知り合いの人が、ビジュアル化してくれるってことになったんだけど、今度は、それが初日ギリギリ、間に合うかどうかみたいなところまで来てたけど、なんとかなった。良かったなぁと思うけど、まだまだ課題はあるから。

EMTG:なるほど。さっきおっしゃった“アルバム全体を通して伝えたいこと”というテーマが、より具体的になる前に、吉川さんの中にあったものは?

吉川:
……というと?

EMTG:なんでもいいんです。怒りでもいいし、反骨精神でもいい。アルバムのテーマとなるきっかけになったもの。

吉川:
ひとつ、反原発は絶対にあって。その他にも、いろいろ今の日本の体制に対して、疑問に思うことがどんどん出てきた。自分なりに、調べれば調べるほどに、疑問が増えていったし、怒りもあった。どうして僕が、こうやって自分でいろいろ調べたり、こういう考えになっていったかというと、それはやっぱり、地震の後、何度も被災地を訪れたことが大きかったと思うんです。何も届いてない、あの日から2年以上経っても、生活が何も変わってない人が、本当にたくさんいるんです。でもそれをどうして、ちゃんとしっかり報道しないのか、義援金はどこにいったんだろう、と。その疑問だった構造が、浮き彫りにされてきたんです。これまで私なりにね、この国の中で、つっぱって生きてきたわけですよ。ロックやってるヤツなんて、みんなそうじゃない? 体制に噛みつくのがロックだったし、マイノリティーのスタンスがロックだったし。それを美しい、正しいと思った人たちが、ロックを作ってきたと思うんです。ひとつのレジスタンスだったと思う。それなのに、今、何にも物申さなかったら、ポーズだけでやってきたことになっちゃう。それが本当に嫌だった。だから、今、きっかけって言われたんだけど、きっかけと言うより、俺は俺で運命的なものを感じてる。でもその反面、運命っていうのもおかしいと思うか。例えば、俺「これが運命だ」って言われたら、「運命なんて壊しちゃえばいい」って言っちゃう方だから。「俺の運命が決まってる? あぁ、そうですか、大きなお世話です」みたいな(笑)。

EMTG:はははははは(笑)。その自分の中での運命に対する矛盾を、どうケリをつけたんです?

吉川:
だからさ、どういう言葉を使っていいのかわかんないっていうのが、正直なところで(笑)。必然っていうか、偶然が重なって必然になっていったのかな。

EMTG:でも、吉川さんのおっしゃる“偶然”には、意思が入ってるじゃないですか。例えば、被災地に何度も出向いたのも意思だし、調べたのも意思、そしてコンセプトありきの作品まで作った。その“意思”が、どこから出てきたのかって思うんです。

吉川:
それは、たぶん……役者の部分からの影響が大きいと思う部分もあって。例えば、以前演じた千畝さん(2008年公演。ミュージカル SEMPO -日本のシンドラー 杉原千畝物語-)は、第二次世界大戦下において、同盟国であるドイツに真っ向から立ち向かって、ユダヤ人を何千人も逃がした人。当時の日本からしたら、国を裏切っているわけだよね。でもやり遂げてる。すごい行動力だと思うです。西郷さんも然り、仮面ライダーも然りですけど、清濁併せ呑んで生きてきた人物だと思う。そういう人たちをさ、芝居とはいえども、当時の背景やその人の気持ちを考えて演じてきた。それなのに、お前は、自分自身は何もしないのか、それはかなりかっちょ悪いんじゃないのっていう。そういう声は、常に自分の中にあるんですよね。何もしないのは、辻褄が合わない男になっちまう、それは絶対に嫌だ、と。だったら、演技も泥棒の役だけやってろよ、みたいな。泥棒の役ばかりやってたら、また違ってたんだと思うけど。

EMTG:それもまた、極端な(笑)。でもおっしゃっていることは、すごく良くわかります。

吉川:
だからまぁ……中途半端にいい人の役……中途半端って言葉はよくないな、全部中途半端にやってるつもりないから……つまり、今行ったような千畝さんとかの役をやることで、自分の中にこれまでなかった感情や考えがが出てきて、納得しないことも増えていったんだろうね。それがたぶん、意思になってったんじゃないかな。

EMTG:なるほど。役者をやることが、絶対に音楽に反映されていくはずだって、ずっとおっしゃってましたが……。

吉川:
絶対にされるでしょ、そんなの、当然。

EMTG:はい。でも、こういう形で、意思として出てきたってのは、今、初めてうかがって驚きました。

吉川:
人間っていうのは、やったことのすべてが反映されると思うよ。何を思って行動に出るかじゃないの? 極端な話、泥棒したってそう。すべてが悪いことばかりじゃないとも思うし。まぁ、繰り返すけど、これは極端な例だけど(笑)。僕はだから、今、芝居をすることと、歌を歌うことを分けてないし。なんか知らないけど、いろいろやっていく中で、腹が据わっちゃったんだよ。

【取材・文・構成:伊藤亜希】
【撮影:HIRO KIMURA】


tag一覧 ライブ 男性ボーカル 吉川晃司

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リリース情報

SAMURAI ROCK(初回盤)

SAMURAI ROCK(初回盤)

2013年04月16日

ワーナーミュージック・ジャパン

ディスク:1
1. 覚醒
2. DA DA DA
3. DO the JOY
4. I’m Yes Man
5. Lovely Mary
6. FIRE
7. Nobody’s Perfect
8. SAMURAI ROCK
9. HEART∞BREAKER
10. 絶世の美女
11. survival CALL
ディスク:2
1. 地下室のメロディ

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お知らせ

■ライブ情報

KIKKAWA KOJI LIVE 2013
SAMURAI ROCK BEGINNING

2013/05/05(日)浦安市文化会館
2013/05/12(日)オリンパスホール八王子
2013/05/19(日)鎌倉芸術館 大ホール
2013/05/25(土)静岡市民文化会館 中ホール
2013/05/26(日)大宮ソニックシティ 大ホール
2013/05/31(金)中野サンプラザホール
2013/06/02(日)東京エレクトロン韮崎文化ホール 大ホール(山梨)
2013/06/09(日)福岡市民会館
2013/06/16(日)栃木県教育会館
2013/06/22(土)金沢市文化ホール
2013/06/23(日)新潟市民芸術文化会館・劇場
2013/07/07(日)札幌市教育文化会館・大ホール
2013/07/13(土)アルファあなぶきホール(香川県民ホール)・小ホール
2013/07/14(日)大阪・オリックス劇場
2013/07/20(土)日本特殊陶業市民会館(名古屋市民会館)
2013/07/28(日)仙台市民会館 大ホール
2013/08/03(土)広島・上野学園ホール

KIKKAWA KOJI LIVE 2013
SAMURAI ROCK BEGINNING TOUR FINAL

2013/08/17(土)日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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