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吉川晃司、連載。現ツアーの貴重なライヴ写真とともにインタビューをお届け。

吉川晃司 | 2013.07.16

 現在、全国ツアー中の吉川晃司。全国で18公演を行う本ツアー “KIKKAWA KOJI 2013 SAMURAI ROCK BEGINNING”は、ファイナルで日本武道館公演を控えている。ニューアルバム『SAMURAI ROCK』をオープニングから曲順通りに体現するという今回のスタイルは、デビュー以降(ちなみに2014年でデビュー30周年!) “Live is my Life”を唱え、活動の基盤のひとつをライヴに据えてきた吉川晃司のライヴ史の中でも、初の試みだ。ロックンロールをプロパガンダだと言い切る、そんな豪快さが最大の魅力のひとつである吉川にとって、アルバム『SAMURAI ROCK』を発表することは、本人曰く「本気で腹を括った」ものだった。
 全国ツアー中の吉川晃司。その現在形に迫るインタビュー。その後編です。
 例えがちょっと(?)小難しいのも、突拍子もない話題展開も、開き直った自己分析も、すべてが吉川晃司の現在形だ。この“現在形”の中には、日本の未来がこっそり眠っている。

EMTG:前編では、アーテイスト、役者……と、自分の表現に対して“腹が据わった”“本気で腹を括った”とおっしゃってましたが、それは自分がおかしいと思ったことは、作品に残していくということですか?

吉川:
そうです。大人の責任としてそう思った。今の日本に対して、思うところがいろいろあるんですよ。例えば、原発がこのままであっていいはずがないわけで、報道されているよりもっともっと、想像しているよりもっと深刻な問題なんですよ。ここをちゃんと伝えていかなくちゃ、死んでも死にきれねーなっていうか。そこを大人の責任、もっというと自分の責任として、やっぱり歌っていこうと決めたんですよ。

EMTG:そういう反抗心、レジスタンスは、ずっと持っていたものでしたよね?

吉川:
小さい頃からそうでしたね。体制の中に真実なんかないと思ってここまで大きくなりました(笑)。

EMTG:なるほど(笑)。で、今おっしゃった“深刻な問題”を音楽で伝えるために、別のストーリーを作って仕上げた理由は?

吉川:
エンターティナーとして、直接的な言葉を使ったら負けだと思っているので。今回は、とにかく全然違うストーリーに聞こえるように作ってやろう、と。

EMTG:ただ、ライヴでは違った要素もありましたね。ビジュアル=視覚で、メッセージ性が強く伝わるようになってました。

吉川:
そうだね。もう、ライヴでは、はっきりした方がいいと思ったんですよね。そこで媚びてもしようがないというか。今、こういうご時世でさ、媚びてたら何にも始まらない。やっぱり、何かをぶち破っていかないと。

EMTG:なるほど。では“深刻な問題”を自分が歌うこと、音楽という作品にすることで、何かが変わるだろうという思いはありましたか?

吉川:
音楽というより、僕自身がそんな大それた生き物なつもりはないんですけどね。ただ、エンターテイメントだからこそ出来ることはあると思う。例えば、ライヴを観た人が“楽しかったね、すごく踊ったね”とか“バラードで泣いちゃったな”みたいに、エンターテインメントとして楽しんで、面白かったって帰ってもらうことは、1番大事なこと。たけど、どっかで……例えばテレビのニュースで原発のことが扱われ時に、 吉川はあぁいうこと歌ってたよな……みたいなことで、意識する時間、考える時間がちょっとずつ増えていくと思うんです。 “なんで今、こいつは、こんなこと歌ってるんだ”って考えることもそう。それはとても大切なことで、前進だと思うんですよね。ただ、押しつけがましい伝え方をすると、絶対に人間は引いちゃう。だから、そうしたらいかんなとは思うわけですよ。

EMTG:いかんなと思ったのは、実際に経験があったとか?

吉川:
そう。被災地に行って帰って来た時、みんな聞いてくるから、いろいろ話したんです。みんな興味は持っている。でも話せば話すほど、人が引いていく。その様子をもう何百回も見てきた。例えば話をしてて、僕が“現実はもっと大変なんだよ、それ考えたことある?”って聞かれたら、普通、人間は“わかってるけどさ?”ってなるでしょ。それでも話すと“この人、危ないな、ちょっと距離置こう”になるじゃん。その様子を見て、人って自分の知らない真実、自分の想像を超えた真実……例えば、今でさえ被災地の行政は、地方自治体に決定権がない、何もやらせてあげてない、とかね……そういう部分は、聞きたくないんだなとも思ったし、伝え方によっては逆効果になるとも思ったんですよね。

EMTG:なるほど。そこまで経験して、今のアルバムが出来上がり、本ツアーでのメッセージ性が出てきた、と。経験があって、現在の方法にいきついたってことですね。

吉川:
あの時期に被災地に行って、皆さんと一緒に過ごさなかったから、こういうやり方ができたかどうかわからない。こういう思いになってたかもわからないし。だからやっぱり僕にとっては、大きなことだったと思います。僕の中では、3.11以前のいろんな物差しは、全部捨てたつもり……っていうか、もう使えないものだって認識なんですよね。だから新しい物差しで、いろいろ考えると、腹立つな、と。

EMTG:腹が立つ部分を、もう少し、具体的に言っていただいていいですか?

吉川:
んーと……。ボブ・マーリーがこんな意味のことを言ってた。「悪いヤツは世の中が大変な時ほど、チャンスだと思う。だから寝る間も惜しんで稼ぐ」って。あぁ本当にそうだなと思って。もう凄まじいんですよね、その様子は。くっそ?、腹立つなと思うわけ。腹が立ったからCOMPLEXやったし。俺、腹立てたまま、歌ってただけだから、あのライヴは。

EMTG:怒りながら、歌った東京ドーム、か。

吉川:
そう。怒りしかなかった。その後も、この想いを歌わずして、今何を歌うんだろうって思ったんだよ。

EMTG:なるほど。でもアルバムになった時、怒りだけじゃなかった。未来を感じられたんですよね。

吉川:
もちろん。だって、絶望的になっているわけじゃないから、これっぽっちも。僕はただヒステリックに、日本は危ないぞって言っているつもりもないし、アルバムでも“命には繰り返す力がある”って書いてる。そういう力を持ってるんだから、今、耳を澄まし、目を凝らし、五感を研ぎ澄まして、本当の情報を手に入れるところから始めないと。情報が隠されていたら、自ずと判断も違ってくる。世の中がそういう仕組みになっていることを、ちゃんとみんな認識した方がいいし、そうしないと損をするってことなんですよね。

EMTG:わかりました。では最後の質問です。「SAMURAI ROCK」という言葉はどこから?

吉川:
日本酒ベースのカクテルの名前ですよ。CM用に「SAMURAI ROCK」を作っている時、あの地震が起きたんです。スタジオのスピーカーが、ばんばん落ちてきた。で、ある日、 “あぁ、じゃあ「SAMURAI ROCK」から始めよう”って思って、自分の中でつながったんです。“もう「SAMURAI ROCK」を物差しにしてやれ”って思った。べたべたなタイトルだし、ダサいって言われるだろうけど、なんとでも言ってくれ、と。もう勝手に言っといてくださいよ、俺は俺で自分で始めるからって、そう思った。だから、シングルもアルバムも、ツアータイトルも、すべてに“SAMURAI ROCK”って入れたんですよね。

【取材・文・構成:伊藤亜希】
【撮影:HIRO KIMURA】




tag一覧 ライブ 男性ボーカル 吉川晃司

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リリース情報

SAMURAI ROCK(初回盤)

SAMURAI ROCK(初回盤)

2013年04月16日

ワーナーミュージック・ジャパン

ディスク:1
1. 覚醒
2. DA DA DA
3. DO the JOY
4. I’m Yes Man
5. Lovely Mary
6. FIRE
7. Nobody’s Perfect
8. SAMURAI ROCK
9. HEART∞BREAKER
10. 絶世の美女
11. survival CALL
ディスク:2
1. 地下室のメロディ

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お知らせ

■ライブ情報

KIKKAWA KOJI LIVE 2013
SAMURAI ROCK BEGINNING

2013/05/05(日)浦安市文化会館
2013/05/12(日)オリンパスホール八王子
2013/05/19(日)鎌倉芸術館 大ホール
2013/05/25(土)静岡市民文化会館 中ホール
2013/05/26(日)大宮ソニックシティ 大ホール
2013/05/31(金)中野サンプラザホール
2013/06/02(日)東京エレクトロン韮崎文化ホール 大ホール(山梨)
2013/06/09(日)福岡市民会館
2013/06/16(日)栃木県教育会館
2013/06/22(土)金沢市文化ホール
2013/06/23(日)新潟市民芸術文化会館・劇場
2013/07/07(日)札幌市教育文化会館・大ホール
2013/07/13(土)アルファあなぶきホール(香川県民ホール)・小ホール
2013/07/14(日)大阪・オリックス劇場
2013/07/20(土)日本特殊陶業市民会館(名古屋市民会館)
2013/07/28(日)仙台市民会館 大ホール
2013/08/03(土)広島・上野学園ホール

KIKKAWA KOJI LIVE 2013
SAMURAI ROCK BEGINNING TOUR FINAL

2013/08/17(土)日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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