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吉川晃司、連載、3回目。現在進行中のツアーで、吉川がチャレンジしたのは?

吉川晃司 | 2013.07.25

 5月からスタートした全国ツアー “KIKKAWA KOJI 2013 SAMURAI ROCK BEGINNING”も、終盤戦に突入した。既に本連載の中で、本人も言葉にしているとおり、本ツアーは4月に発売されたニューアルバム『SAMURAI ROCK』を曲順通りに体現するという、吉川晃司にとって初の試みがポイントであった。

 アルバム『SAMURAI ROCK』は、吉川晃司の元々の性格――本人曰く「白黒はっきりしないと気持ち悪い、面倒くさい性格」と、2011年3月11日以降の本人の体験から出来上がってきた作品だ。本人の言葉を借りれば「偶然が重なった必然」のひとつの結果とも言えるが、前述した“性格”と“体験”を本人が己の中でしっかり昇華しなければ、成立しなかった結果だろう。
 吉川晃司は、偶然を己の志と行動で、見事に必然にしてみせた。その結晶が『SAMURAI ROCK』である。
 そして、この志は“ストーリー性とメッセージ性”という『SAMURAI ROCK』というアルバムのひとつのコンセプトにつながった。
 2014年でデビュー30周年を迎える吉川晃司は、これまで、サウンド面にポイントを置いたコンセプトアルバムなどはあったが、メッセージ性に重点をおいた作品は、あまり発表してこなかった。つまり、それが、吉川晃司の考える“音楽”の要素だったからだ。その考え方に変化が表れたのが新作。しかもその変わり様は、まったくの別物に上書きされたというよりは、新たに項目が追記されアップデートされた感じ。吉川晃司が貫いてきた“音楽”の要素が増え、バージョンアップした印象であった。感情を放出することが目的ではなく、そことの向き合い方が、目的になってきたのかなぁ、と。
 ……と、深読みしようと思えば、いくらでも深読みできるアルバム『SAMURAI ROCK』を聴き、いろいろ考えながら、本ツアーの序盤、何か所かライヴを観た。
 やはりライヴもバージョンアップしていた。前半は『SAMURAI ROCK』を曲順通りに再現していくブロック。オープニングから、ステージ後方に設置されたスクリーンを使い、映像が映し出される。その内容は強風に翻る旗であったり、本人が海の向こうを見据えるイラストであったり、半開きの唇もセクシーなブロンドの女性であったりと様々だが、イラストの中に散りばめられているモチーフに気が付くとハッとする。そのモチーフは、ライヴが進むにつれて、どんどんはっきりしてくる。直接、ある言葉に直結するほどだ。火山のように見えるのは、今、日本で見えない炎を放出し続けるあの物体か。この想像が正解であることを、今度は別の曲の映像が告げる。正解は、一見、プロペラにも似たあのマーク。ロシアで同様の事故が起こった際、ニュースで頻繁に見かけた、あのマークである。
 さらに、映像に使用されているイラストは、本ツアーのパンフレットとも連動。媒体を変えたメッセージのリピートという手法に、吉川晃司の腹の括り具合がわかるのではなかろうか。このパンフレットも含んだ演出について、本人は、こんなことを言っていた。

「わかりやすく、はっきり見せた方がいいと思ったんですよ。それからやっぱり皆さん、ライヴでは騒ぎたいというか。嫌なことがあって、それを忘れたいと思って来る人もたくさんいると思うんだよね。特にうちのお客さんは、速い曲ばっかりやってくれって言うぐらいですから(笑)。暴れたいよね、汗かきたいよね、と。そうやって解放されている時に、いろいろ考えさせるのもなぁ……と思ったんですよね。だったら、視覚でわかりやすくしてあげた方がストレートに入っていくだろうし、あんまり考え込まないで、楽しめるだろうなと思った。やっぱり、エンターテインメントですから。まず、思いっきり楽しんでもわらわないと、来てもらった意味がない」

 この“吉川晃司のエンターテイメント”へのこだわりは、ライヴの後半では、また別の視点で感じることができる。
 後半。衣装を着替えて再びステージに登場する吉川晃司。アルバム『SAMURAI ROCK』収録曲を全曲披露した後は、これでもかとアップチューンが続く。その選曲は、新旧を織り交ぜたセレクト。しかも、過去のアルバムの中から、ライヴの起爆剤となるキラーチューンばかりを選んでいる。本人も観客も、トップにギアを入れたまま、休憩なしで最後まで駆け抜けていく。会場の温度も急上昇を続けるその様は、(本当にどんどん暑くなっていったんです!観ているだけで酸欠起こしそうでした。嘘じゃありません)まさに、吉川晃司と観客とのタイマン勝負。しかも、絶対にどちらも屈しない。このタフさが、エネルギーとなり充満していくのが、吉川晃司のライヴのオリジナリティーにもなっている。この迫力には、毎度、驚かされるのだが、本ツアーでは、驚きを通り越して、茫然とする瞬間が何度もあった。
 アップチューンを10曲前後、立て続けに披露するパターンは、吉川晃司のライヴにおいて決して珍しくない。10曲以上やることもざらだし、メドレーなどが入ってくる構成の場合は、1時間以上アップチューンばかりというパターンもある。しかし本ツアーでは、その迫力が違っていた。前半と後半、はっきりセパレートしたのがいい方向に作用したのもあると思うが、いつもとは、本人と観客の集中力が違っていたように思う。
 本当に、ちょっとでも油断すると、吉川と観客においていかれちゃいそうな……そんな迫力とスリリングさに、ゾクゾクした。
 繰り言になるが、今回のライヴは前半と後半を明確にわけた構成である。彼の長い歴史、ライヴの経験値を考えると、他に構成パターンもあったのでは……例えば、前半と後半をそっくり入れ替える方法もあったのでは……という思いがあるのも、正直なところだ。メッセージを伝えたいなら、『SAMURAI ROCK』ブロックを後半に持ってきた方が、効果的だったのでは? 実際に、とあるライヴの終演後の楽屋エリアで、本人にこの質問をぶつけてみた。“まだまだ改善点がたくさんある、まだこんなもんじゃない”と言いながら、本人が語ってくれた回答を最後に紹介しよう。

「今回のアルバムのテーマって、決して軽いものじゃないと思うんですよ。これまでの自分の作品と比べたら、まったく違う流れのものになってる。曲や歌詞とか、表面的にはあんまり変化が無いように感じられると思うんだけどね。でも、聴いて残るものが違うだろう、と。もし前半と後半を入れ替えたら、お客さんは、こう……ある意味、重いものを持って、帰ることになるんじゃないかと思ったんです。それはやっぱり、絶対に違うな、と。ライヴが終わった後、やっぱり笑顔で帰ってほしいし、すっきりした、楽しかったって思いのまま、帰って欲しい。そして帰ってから“そう言えば、今日のライヴの前半、あんなイラスト出たな”って、少しでも思い出して考えてもらえたらいいなと思ったんですよね。だから前半をアルバム、後半をいつもの感じにしたんだよね」

 全国ツアー “KIKKAWA KOJI 2013 SAMURAI ROCK BEGINNING”。間もなく第4コーナーを回る。ゴールでは、8月17日、日本武道館が、吉川晃司を待っている。

【取材・文・構成:伊藤亜希】
【撮影:HIRO KIMURA】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 吉川晃司

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リリース情報

SAMURAI ROCK(初回盤)

SAMURAI ROCK(初回盤)

2013年04月16日

ワーナーミュージック・ジャパン

ディスク:1
1. 覚醒
2. DA DA DA
3. DO the JOY
4. I’m Yes Man
5. Lovely Mary
6. FIRE
7. Nobody’s Perfect
8. SAMURAI ROCK
9. HEART∞BREAKER
10. 絶世の美女
11. survival CALL
ディスク:2
1. 地下室のメロディ

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お知らせ

■ライブ情報

KIKKAWA KOJI LIVE 2013
SAMURAI ROCK BEGINNING

2013/05/05(日)浦安市文化会館
2013/05/12(日)オリンパスホール八王子
2013/05/19(日)鎌倉芸術館 大ホール
2013/05/25(土)静岡市民文化会館 中ホール
2013/05/26(日)大宮ソニックシティ 大ホール
2013/05/31(金)中野サンプラザホール
2013/06/02(日)東京エレクトロン韮崎文化ホール 大ホール(山梨)
2013/06/09(日)福岡市民会館
2013/06/16(日)栃木県教育会館
2013/06/22(土)金沢市文化ホール
2013/06/23(日)新潟市民芸術文化会館・劇場
2013/07/07(日)札幌市教育文化会館・大ホール
2013/07/13(土)アルファあなぶきホール(香川県民ホール)・小ホール
2013/07/14(日)大阪・オリックス劇場
2013/07/20(土)日本特殊陶業市民会館(名古屋市民会館)
2013/07/28(日)仙台市民会館 大ホール
2013/08/03(土)広島・上野学園ホール

KIKKAWA KOJI LIVE 2013
SAMURAI ROCK BEGINNING TOUR FINAL

2013/08/17(土)日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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