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吉川晃司、ツアー連動!!連載4回目。貴重な撮り下ろし写真とレポートを!!

吉川晃司 | 2013.08.05

 現在、全国ツアー“KIKKAWA KOJI 2013 SAMURAI ROCK BEGINNING”を展開中の吉川晃司。約3か月に及ぶツアーも、8月3日の広島公演を終えた後は、束の間の小休止。残すは、8月17日に日本武道館で行われる、ファイナル・ライヴのみとなった。
 本連載中、毎回記してきたことであるが、吉川晃司は本ツアーでアルバムを収録曲順に披露するという初の試みに挑戦している。そのアルバムとは、本年4月にリリースされた『SAMURAI ROCK』である。
 3.11以降、何度も現地に足を運んだ吉川。それは、目の前に積まれた瓦礫と格闘し、様々な問題と対峙して葛藤する日々だったという。この体験を冷静な視点と観察力で、吉川晃司は経験に変換した。この経験を羅針盤にして彼が作り上げたのが本作『SAMURAI ROCK』だった。彼はこの作品で伝えたいことがあった。だから本作は、メッセージ性とストーリー性がコンセプトになったが、強い想いだけでは伝えたいことが相手に届かないことも、日々の生活の中で知ったのだと言う。
「被災地に足を運んだことを知った人は、だいたい様子を聞いてくるんです。みんな、知りたいんだと思うんだけど、でも、すごく突っ込んだ話になると、こう……どうしたらいいかわからないからかもしれないんだけど、口をつぐんじゃう、耳を半分ふさいじゃうというか……。例えば “被災地に住む人には、支援金が届いてない。そんな場所が、まだたくさんある。それは日本のシステムに問題があって……”って話をして“で、あなたはどう思うの?”って質問したりすると、ひいちゃうんですよね。真実に腰がひけちゃう感じというか。考えることを停止しちゃうんですよ。自分の意見をただ強く言うだけだと、相手はひいちゃうし、そこで終わっちゃうんだな、と。それじゃあダメだ、意味がないと思ったんです。まぁ、私、見た感じからして、押しが強いですから(笑)。こっちが思っているよりも、すごく強く伝わるんだなって。それがわかった時、じゃあどうするべきかって考えましたね」
 自分の思考や想い、ちょっと大げさに言ってしまえば、今の吉川晃司の内面をどう聴き手に伝えるか。どう相手に伝えていくか。それが『SAMURAI ROCK』のひとつの課題でもあったのだと思う。そしてこの課題は、ライヴという空間でクリアされる。彼は、ライヴでひとつの正解を見つけ出した。
 何故、そう思ったか。
 それは、ライヴ中盤「survival Call」での、こんなワンシーンからだった。
 全国ツアー“KIKKAWA KOJI 2013 SAMURAI ROCK BEGINNING”は、本当にざっくりわけると、その内容から前半と後半にセパレートされる。『SAMURAI ROCK』を曲順通りに再現していく前半。スクリーンを有効に使い、楽曲の内容を彷彿させる映像が映し出されるのが特徴。その映像が、聴き手の中で歌詞とリンクするのを見越した演出といえるだろう。鮮烈な映像が、作品を聴いただけでは気が付かなかった歌詞の“真意”をはっきりと描き出す。
 そして後半は、吉川晃司ライヴの王道。しかもここ数年の中でも、かなりブラッシュアップされた、ある意味、王道の極み。ライヴ映えするアップチューンが、ノンストップで転がっていく。この前後半のはっきりとしたコントラストを見事にひとつのライヴにまとめあげているあたりは、吉川晃司の本領=ライヴの筋力が感じられるポイントで、歴史を刻んだアーティストにしか出せない、本ツアーの見どころでもある。
 「survival Call」は、アルバム『SUMURAI ROCK』のラストを飾るナンバー。吉川の低音ボーカルを堪能できる、ミディアム・バラードだ。
 曲前の静寂。一瞬、暗転するステージ。様々な想いを、楽曲にして、オープニングから叫び続けた吉川晃司。後半に比べ、アクションが幾分少な目に感じたのも、気のせいじゃないだろう。アップチューンでも、しっかりと客席を見つめる姿が、何度となくあった。
 「survival CALL」。静かに歌い始める。歌の途中、その手元が光る。リズムに合わせゆっくり振り始める。観客も吉川に合わせて、それぞれの手元で光を揺らし始めた。目の前で、光源の波がうねる。
 本人と観客が手にしていたのはサイリウム。今ツアーのオフィシャルグッズのひとつだ。パッケージには「survival CALL」とプリントされている。サバイバルコールとは、簡単に言えば、自分の居場所を知らせる合図のこと。それはホイッスルの場合もあれば、信号、火や光の場合もあると言う。ここまで書けば、どんな時に使うものなのか、想像できるのではなかろうか。
 昨今の音楽シーンにおいて、観客がライヴでサイリウムを振るのは、決して珍しいことでは無い。しかし吉川晃司のライヴでのサイリウムは、明らかに、他のライヴとは、その意味が異なっていたと思う。
 特に、古くからのファンの方々は、最初、この演出に戸惑ったのではなかろうか。事実、初日の会場では、曲の途中でざわついた瞬間もあった。
 ティーンエイジャーで鮮烈なデビューを飾った吉川晃司は、言葉を選ばないで言えば、最初はアイドルだった。元々バンドをやっていて、アーティスト志向だった彼は、そのパブリックイメージに猛反発。特にライヴでの紙テープやペンライト(当時はこういう言い方でした)に難色を示し、自らライヴ中に「そういうのは、もう、ダサいだろ、みんな?」と言葉にするほどであった。こんなエピソードもあって、いつの日からか、彼のライヴではペンライトや紙テープは御法度になったのだ。前述したような本人の言葉と、その後の音楽性やスタンスの変化もあり、この暗黙の了解は、彼の長い歴史と足並みを揃え、一緒に成長してきたファンの間にも十分浸透していた。しかし、この歴史を吉川晃司は、 “KIKKAWA KOJI 2013 SAMURAI ROCK BEGINNING”で、ひっくり返したのだ。
 正直、びびった。彼は確かに、最近のインタビューで繰り返し言っていたーー「3.11以降、これまでの自分の物差しを捨てた。古い物差しが通用しなくなって、新しい物差しが必要になったんです」と。
 とはいえ。この“新しい物差し”の存在を、予告なしで、しかもライヴで見せるとは。それだけ伝えたいことがあったのだろう、それだけ腹を括ったんだろうと、頭の中では想像できたし理解もできたが、ステージ上でサイリウムを掲げる彼の姿は、その理解を越えて衝撃的だった。長い歴史が、キーキー声をあげていたのだ。
 初めて生で聴く「survival CALL」。初めて観る、客席が光で埋まる様子。観客も動揺している。ムードでわかる。それまでの一体感が遮断され、散漫でそわそわしている。それぞれの頭の中で、いろいろな思考や想いが交差しているのが、ムードでわかった。曲が進んでいく。吉川晃司の歌う歌詞が、ストレートに耳に入ってくる。散らばっていた気持ちが、少しずつひとつになっていく。観客の意識が、またしっかり、吉川晃司に、彼が歌う言葉に、向かい始めていく。
 ひとつ、またひとつ、客席の光が増えていく。

 目の前にいた男性2人組の会話が聞こえてきた。
「これ、サイリウムじゃないよ。吉川がそう歌ってる」
 そう言うと、2人組のうちの1人は、鞄からグッズのサイリウムを取り出し、光を掲げ始めた。
 この初日から、約1カ月弱。中野サンプラザホールのライヴでは「survival CALL」は、本ツアーの名物シーンと言えるほどになっていた。
 そこには、これまでの吉川晃司のライヴではあまり感じられなかった種類の一体感があった。その一体感は、例えるなら、これまで主語が“You&Me”だったのが“We”に変わった印象。それは吉川晃司とファンの関係性が、またひとつ増えた、深くなった瞬間でもあったと思う。
 今、言いたいことをしっかりと伝えるために、前例を覆す。それが、彼の言う“新しい物差し”のひとつの要素なのだと「survival CALL」という曲が教えてくれた。

 自分の言いたい事を、どのような方法でどう伝えていくのかーーこれは、今後、吉川晃司が活動していく上で、新たなテーマになっていくだろう。
 そして、その正解は、ひとつだけじゃない。吉川晃司が、これから自分の中で、どれだけ正解を見つけ、体現していくのか。その方法に、とても興味がある。もちろん、本人が悶々と悩み続ける事、前提での話ですが。

 さて最後に。本連載、次回は “KIKKAWA KOJI 2013 SAMURAI ROCK BEGINNING”の広島公演を詳細レポート。そして8月17日の日本武道館ライヴもレポートします。

【取材・文・構成:伊藤亜希】
【撮影:HIRO KIMURA】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 吉川晃司

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リリース情報

SAMURAI ROCK(初回盤)

SAMURAI ROCK(初回盤)

2013年04月16日

ワーナーミュージック・ジャパン

ディスク:1
1. 覚醒
2. DA DA DA
3. DO the JOY
4. I’m Yes Man
5. Lovely Mary
6. FIRE
7. Nobody’s Perfect
8. SAMURAI ROCK
9. HEART∞BREAKER
10. 絶世の美女
11. survival CALL
ディスク:2
1. 地下室のメロディ

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お知らせ

■ライブ情報

KIKKAWA KOJI LIVE 2013
SAMURAI ROCK BEGINNING

2013/05/05(日)浦安市文化会館
2013/05/12(日)オリンパスホール八王子
2013/05/19(日)鎌倉芸術館 大ホール
2013/05/25(土)静岡市民文化会館 中ホール
2013/05/26(日)大宮ソニックシティ 大ホール
2013/05/31(金)中野サンプラザホール
2013/06/02(日)東京エレクトロン韮崎文化ホール 大ホール(山梨)
2013/06/09(日)福岡市民会館
2013/06/16(日)栃木県教育会館
2013/06/22(土)金沢市文化ホール
2013/06/23(日)新潟市民芸術文化会館・劇場
2013/07/07(日)札幌市教育文化会館・大ホール
2013/07/13(土)アルファあなぶきホール(香川県民ホール)・小ホール
2013/07/14(日)大阪・オリックス劇場
2013/07/20(土)日本特殊陶業市民会館(名古屋市民会館)
2013/07/28(日)仙台市民会館 大ホール
2013/08/03(土)広島・上野学園ホール

KIKKAWA KOJI LIVE 2013
SAMURAI ROCK BEGINNING TOUR FINAL

2013/08/17(土)日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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