客電が消えるとコウスケ１人がステージに登場。ヒューマンビートボックスで場内を湧かせた後、タツヒロが作業着でステージに現れた。そして兼業ミュージシャンであるカサリンチュならではの労働ソング「やめられない とまれない」の演奏をスタート。タツヒロの歌に続いて、オーディエンスは手拍子をしながら“やめられない とまれない♪”を大きな声で合唱。早くも会場をひとつにした。

　１曲歌い終えたところで突然、今回のツアータイトル“「わん、脱いじゃいます！」重大発表しちゃいますツアー！”で謳っている“重大発表”がタツヒロの口から明かされることに。“わたくしカサリンチュ タツヒロは、音楽をもっとやりたくて、この度、勤めていた製糖会社を退職いたしました！”と発表すると、驚きの混じった歓喜の声が上がった。そして、“わん、脱いじゃいます!!”と言い、コウスケのビートボックスをBGMに、作業着を脱いだタツヒロ。“これまで在職中も応援してくださった皆さんにちゃんと気持ちを伝えたくてこの場所に来ました！ ありがとう?!!”と言って歌い始めたのは「感謝」。初めて２人で共作した楽曲であり、カサリンチュのデビュー曲である。本編ラストのような感動に包まれる中、ひと言ひと言に気持ちを乗せて歌い、さらに会場を１つにした。

　音楽活動一本となった彼らは、さっそく“新たなカサリンチュ”を観せていく。8月7日発売のニューシングル「夏が終わる前に」からカップリング２曲「Life is cannen!」と「アランダロ」を披露した。「Life is cannen!」ではタツヒロがカフォンを叩きながら歌い、コウスケがアコギを弾きながらビートボックスをするという珍しいスタイルで演奏。「アランダロ」ではタツヒロがハープソロでオーディエンスを湧かせた。さらに未発表のラブソング「あなたがそばにいるだけで」を披露、タツヒロの透明感ある優しい歌声で女性ファンをうっとりとさせた。

　“もっと楽みたいか?？”と言ってクイーンの「We Will Rock You」を彷彿とさせるリズムからフリースタイルでヒューマンビートボックスを始めたコウスケ。彼の“ブン！”“ブンブン!”に続いて、オーディエンスは“カッ！”で参加、一緒に１つのヒューマンビートボックスを奏でた。「マルコMEN」では、この曲のみ写真撮影OKとなり、ステージに向かってケータイをかざすオーディエンス。演奏終了と同時にコウスケがタツヒロの帽子を取り、アコギを持ち上げてキメたタツヒロのマルコメ頭が露になった（笑）。そしてカサリンチュのライブでは恒例、楽しみの１つである「ラブライバル」へ。ファンの女性１人がステージに上がり、楽曲終わりにどちらがタイプか選んでもらう“２人だけの総選挙”である。この日は、コウスケの積極的なアプローチも空しくタツヒロが選ばれた。

　本編ラストを飾ったのは、ニューシングル「夏が終わる前に」。カサリンチュ流サンバのリズムとキャッチーな歌メロに合わせ、楽しそうに振り付けを踊るオーディエンス。今までのカサリンチュのライブにはない光景である。

　アンコールでは、「あなたの笑顔」を熱唱した後、改めて今後は音楽１本でやっていくことを報告。途中、“一度は諦めた世界だった”と言葉をつまらせる場面も。タツヒロにとって大きな決断に至る、自身の背中を押してくれたという未発表曲「New World」が披露、希望の詰まった前向きな歌だった。そしてアンコールラストは、“またどこかで皆さんと笑顔で会えることを祈って……”と言いライブの一番最後に演奏している「ゆらりゆらり」。場内は終始温かい空気に包まれ、たくさんの笑顔に溢れていた。

　12月に“あなたの笑顔にやめとま感謝祭2013?千秋楽になっちゃうかも？ツアー”の開催を発表しオーディエンスを喜ばせた彼ら。カサリンチュの新たな始まりと共に、今後生まれてくる新しい楽曲たち、ステージを期待せずにはいられないライブだった。

【取材・文：牧野りえ】