前へ

次へ

宮沢和史とTRICERATOPSの二組が、“ミヤトラ”結成! 

宮沢和史&TRICERATOPS | 2013.09.13

 宮沢和史はロックンロールに飢えていた……この期間限定バンド誕生の発端はそこじゃないだろうか。そんなことをライブ中、ずっと考えていた。そしてそのことが単なるコラボを越えて4ピースのバンド、ミヤトラになったのだろう、と。

 定刻少々過ぎにフロアが暗転、トライバルなビートに乗って登場した4人はばっちりスーツでキメ、宮沢和史(Vo、G)に至っては“フーテンのミヤ”を地で行くハットとサングラスがいい味。和田唱(Vo、G)の小気味いいリフでガラリとイメージを変えたTHE BOOMの「世界は変わる」で冒頭からアッパーなテンションでスタート。続くTRICERATOPSの「ROCK MUSIC」。和田はもちろん、宮沢もマーク・ボランばりのブギーを弾きまくる。互いのオリジナルをどう解釈し、再構築するか? それがこのコラボの魅力のひとつだ。
 宮沢が最初のMCで「こんなに来てくれると思っていなくて。なのでこの感謝を音楽で返します。最後まで楽しんで」と語ったのは偽らざる心情だと思うが、この感謝の言葉に代表されるように、彼はいい意味で全く余裕をカマしていないのだ。楽しみとともにある緊張感、それが引き締まった演奏を生み出している。全員がリスペクトしているというポリスのカバー「SO LONELY」では吉田佳史(Dr)が絶妙にあの変拍子をキメ、フロントの3人のコーラスも冴える。そして待望のミヤトラ・オリジナル。和田が「踊ってくださいと言うにはブルージィですかね?」と宮沢に振ると「気持ちよくなってください」とさすがの返しを受けて「氷のブルー」。間奏での宮沢のブルースハープにやんやの歓声が起こる。ブルースセッションにはならない、ポップの才人たちが作るロマンチックな逸品だった。

 林幸治(B、Cho)と吉田が一旦はけ、宮沢、和田のふたりが残ったステージ上ではミヤトラ結成のいきさつが饒舌に語られる。「最初は共通の敬愛する先輩、CHABOさん(仲井戸麗市)のライブで会ったんだけど、その後、小田(和正)さんの『クリスマスの約束』で、唱くんと同じパートを歌うことになったんだよね」と宮沢。世代の違うミュージシャンとの共演の意義というほど堅苦しいものではないが、今回のコラボを心底楽しんでいるのがわかる会話が続く。そこで会場にいるみんなで「小田さんありがとう!」を大声で唱和したことでさらなる一体感が生まれた気がした。ひとわたりトークが続き、ふたりのアコギ、それも削ぎ落とされたアレンジで披露した「First Love Song」は、宮沢が歌う<すべてをなくしても僕がいる>のフレーズを受けて和田が弾いたソロの美しさが際立つ。林、吉田も呼び込んでTRICERATOPS「シラフの月」などをアコースティック形態で演奏。「今日は唱に歌ってもらいます」と宮沢に振られ和田が歌った「明日からはじまる」に感じたのは、二人に共通するポール・マッカートニーイズムとでも言いたくなるもの。狙いを越えたロマンティシズムとそれを音楽に昇華できる稀有な才能という共通項を見た。  現状3曲しかないミヤトラ・オリジナルの第2弾、「カントリーロードが聴こえる」もアコースティックセットでの演奏。オーガニックで開放的な楽曲だが、<天国に続いてるカントリーロード>の歌詞にレッド・ツェッペリンの「天国への階段」のギターフレーズが聴こえたのは気のせいだろうか? 脈々と続いてきたロックンロールのレイヤーをさり気なく織り込めるのも彼らならではだ。

 再びエレクトリック編成に戻り、ライブも後半に向かうと「寂しい」を連発し始める宮沢だが、その大切な時間を燃焼させるように、四つ打ちのキックに合わせて大きくなるハンズクラップ。そう、踊れるロックのキラーチューン「FEVER」の甘酸っぱい歌詞を歌う宮沢というかなりレアなシーンにフロア沸騰、そのままGANGA ZUMBAの「DISCOTIQUE」へなだれこみ、サングラスを外し、ハンドマイクでセクシーにファンを煽る宮沢、ギタリストとして最高にファンキーなリフとカッティングで魅せる和田、そしてもちろん場のムードによって曲がアップデートされていくダイナミズム。すっかりダンスフロアと化したリキッドルームにさらに太いグルーヴを巻き起こす林のチェイスするベースラインが本編ラストの「トランスフォーマー」を疾駆させ始める。オルタナティヴロックのテイストさえ感じさせながら、R&Bのコード感も盛り込むスリルとポップが交錯するTRICERATOPSのオリジナリティが、4ピースバンド・ミヤトラの表現に変容していくライブならではの醍醐味。和田はファンに<ウォ?ウォ?、イェ?イェ?、トランスフォーマー>のシンガロングを要求、いつまででも続けていたいぐらい会場がひとつになっての大団円だった。

 興奮冷めやらぬフロアからのアンコールに応えてお揃いのTシャツ、大漁旗さながらに「宮虎」と書かれたタオルをまとって再登場した4人。アンコール1曲目はオリジナル第3弾の「STIMULATOR」。ブリティッシュビートっぽいタイトさは、2013年のロックシーンに今すぐ投下してほしいぐらい、他の誰もやっていそうでやってないナンバーだ。最後の最後になってますます名残惜しそうなステージ上では「フーテンはお盆と正月に帰ってくるんですよね?」と和田が言えば、宮沢も「人生って計画通りこなしていくことも大事だけど、小さな出会いが発展して大きく育っていったらいいな」と力説(?)。そして「出会いの先がちゃんとあることを証明してくれた宮沢さんの行動力に感謝です!」という和田の言葉に拍手と歓声が起こる。そんな祝祭感そのままに、自在に4人それぞれのアレンジを突っ込んでくるブランニューな「風になりたい」が鳴らされる。凡百のギターロックバンドにはないファンキーさや色気、そして最強のポップなメロディ。両者のファン以外にもぜひ体験してほしくなってしまったが、果たして次はあるのか? ないのか?

【取材・文:石角友香】
【撮影:山本倫子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル TRICERATOPS 宮沢和史

リリース情報

You were here[配信限定]

You were here[配信限定]

2014年08月01日

トイズファクトリー

1. You were here

このアルバムを購入

セットリスト

宮沢和史&TRICERATOPS TOUR 2013
“フーテンのミヤトラ”
2013.9.1@恵比寿LIQUIDROOM

  1. 世界は変わる
  2. ROCK MUSIC
  3. SO LONELY
  4. 氷のブルー
  5. FLY AWAY
  6. First Love Song
  7. シラフの月
  8. ガテマラ
  9. 明日からはじまる
  10. カントリーロードが聴こえる
  11. WITH OR WITHOUT YOU
  12. 24時間の旅
  13. FEVER
  14. DISCOTIQUE
  15. トランスフォーマー
Encore
  1. STIMULATOR
  2. 風になりたい

お知らせ

【TRICERATOPS 情報】
「TRICERATOPS WINTER TOUR 2013」
2013/11/01(金)金沢 EIGHT HALL
2013/11/03(日)札幌 cube garden
2013/11/09(土)新潟 LOTS
2013/11/10(日)仙台 MACANA
2013/11/15(金)名古屋 CLUB QUATTRO
2013/11/17(日)広島 CLUB QUATTRO
2013/11/23(土/祝)大阪 BIGCAT
2013/11/24(日)福岡 IMS HALL
2013/12/01(日)東京 Zepp DiverCity

【宮沢和史 情報】
THE BOOM ニューアルバム
『世界でいちばん美しい島』発売中!!
YRCN-95211 3,000円(税込)

※その他の詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

リリース情報

THE BOOM  『世界でいちばん美しい島』

THE BOOM  『世界でいちばん美しい島』

2013年06月19日

よしもとアール・アンド・シー

1. 世界は変わる
2. 芭蕉布
3. 島唄
4. 世界でいちばん美しい島
5. シンカヌチャー (THE BOOM ver.)
6. 愛より
7. 太陽ぬ子
8. やいま
9. かりゆしの海
10. 情ションガイネ
11. バイバイ沖縄
12. 島唄 (シンフォニック・オーケストラ 琉球ver.) (Bonus Track)

このアルバムを購入

トップに戻る