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誰もヤツらを止められない!大躍進のKANA-BOON、超満員の渋谷クアトロを目撃

KANA-BOON | 2013.11.19

 開演前のクアトロは、いかにも勢いに乗っているバンドらしい雰囲気。若いロック・ファンが、これから始まるライブへの期待を口ぐちに言い合っている。男の子3:女の子7くらいの割合で、どちらも友達と一緒に見に来ているようだ。と、スピーカーからボーカル谷口鮪の声が流れてきた。
 「今日は来てくれて、ありがとう。ソールドアウトしてるので、ダイブは禁止にさせてください。サークルモッシュも、スペースがないので禁止にさせてください」。こうしてKANA-BOONの東阪ワンマンライブ“僕がステージに立ったら”の準備は整ったのだった。

 オープニングの「1.2. step to you」のイントロで古賀隼斗がギターを鳴らした瞬間、フロアから歓声が上がる。いきなりモッシュ&ダイブになりそうなムードだったが、オーディエンスはみんな前説の指示を了解していて、両手を頭上に上げてハンドクラップで応える。いい 滑り出しになった。
 前半は小泉貴裕のドラムも、谷口のボーカルも、リズムが前のめりになる。それをグッとこらえて踏みとどまるのがスリリングだ。はやる気持ちと、音楽をちゃんと伝えたいと思って抑える気持ちがぶつかり合う。それは“青いグルーブ”とも言うべき、このバンドの魅力である。3曲目「ストラテジー」あたりで、ステージもフロアもようやく落ち着いてきた。

 「今日はめでたくアルバム『DOPPEL』の発売記念ワンマンです。これまでリリースした3枚の曲を全部やります」と 谷口。全曲演奏ライブは、KANA-BOONにとって初めての経験だ。さて、スタミナは大丈夫か?
 「次の曲は、こいちゃん(ドラムの小泉)から始まるんだけど、こいちゃんがなかなか言うことを聞いてくれない。みなさんが“こいちゃーん!”って言ってくれたら始まると思います。いいっすか? せーの」と谷口が言うと、オーディエンスが「こいちゃーん!」と叫んだ。小泉のキックドラムから「クローン」が無事スタートしたのだった。

 前半のハイライトは、『DOPPEL』収録の「東京」。《東京に星は無いけれど不思議と街は明るくて》という抒情的な歌詞を、オーディエンスはシーンと聴き入る。しっかり言葉を伝えようと、必死で歌う谷口。《そうです、ボクはバカなんです》と谷口が力まかせに歌うと、そこから激しいブリッジが始まった。そのメリハリの中で、飯田祐馬のベースがアンカーの役割を果たし、リズムをキープする。切ない痛みと、力強い明るさが同居する。今のKANA-BOONの心情がよく伝わってきた。

 「気分悪い人はいませんか?いたらめしだに言ってください」と谷口が言うと、飯田が「オレ、気分悪い人、知ってる」と笑わせる。「今日はワンマンだから、めしだ、しゃべっていいよ」。「最近、ポケモンが欲しくて、でもお金ないから作るしかないなと思って作ってきました。これを整理番号1番の人にあげます」と飯田が言うと、場内から驚きの声と拍手が起こった。友達同士のようなコミュニケーションがクアトロで交わされている。
 そんなリラックスした雰囲気の中、『DOPPEL』のいちばんのメッセージソング「ウォーリーヒーロー」が始まった。最も届けたいメッセージをこの場所に置くセンスがいい。《飲み込まれる前に 想像してくれ》という谷口の叫びは、メジャーで発信できる立場に立った喜びと気迫に満ちていて、会場を大きく揺さぶる。

 「高校の頃から、こんな感じ。30才になってもこんな感じだったら怒られるのかな?でも僕ら、変われないんで、よろしく」。
 バンドの成り立ちや、メジャーになって感じたことをストレートにしゃべる。
 「メジャーになって、周りが大きく変わった。悪口も言われるようになったけど、一切気にしないようにして、目の前にいるみなさんを信じてやっていこうと思ってます。今まで自分を信じられなかったけど、(みなさんのお陰で)信じられるようになった。すごい進歩です。これからも変わらない目で見ていてください」。

 アップチューン「ないものねだり」では、4人全員がコール&レスポンスをぶちかます。こいちゃんは「こんなこと、もう二度とないですよ」と言いながらも、楽しそうだ。きっとまたやるに違いない(笑)。
 本編を締めくくったミディアム・バラッド「眠れぬ森の君のため」は、バンドの夢をリアルに描いた作品。“青い夢”の歌と言っていい。それがこの日のKANA-BOONにとても似合っていて、“クアトロ・サイズの名曲”としてオーディエンスの心に刻み込まれた。
 アンコールで「さくらのうた」と「A.oh!!」を歌って全曲演奏を達成。「A.oh!!」 はそのまんま《アーオー》で、文字通り“青いライブ”のラストにふさわしかった。

 ひとことで言うなら、フェアなライブだった。バンドとオーディエンスが隠し事なしで対等に向き合う、素晴らしいライブだった。そしてそれこそが、彼らがリスペクトするASIAN KUNG-FU GENERATIONから受け継ごうとしているものなのだ。ライブ直前のインタビューで「これから時間をかけてオリジナリティを追求していく」と決意を述べた谷口鮪が、アジカンから学んだことの中で本当に大切にしているのは、このことなのだと強く思った。それを真正面から感じた、記念すべきライブだった。

【取材・文:平山雄一】
【撮影:TEPPEI】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル KANA-BOON

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リリース情報

DOPPEL

DOPPEL

2013年10月30日

ki/oon Music

1. 1.2. step to you
2. ワールド
3. ウォーリーヒーロー
4. MUSiC
5. 東京
6. 白夜
7. 目と目と目と目
8. 盛者必衰の理、お断り
9. 夜をこえて
10. 羽虫と自販機
11. A.oh!! <Bonus Track>

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セットリスト

KANA-BOON 東阪ワンマンライブ
「僕がステージに立ったら」
2013.11.4@渋谷 CLUB QUATTRO

  1. 1.2. step to you
  2. ワールド
  3. ストラテジー
  4. クローン
  5. MUSiC
  6. 東京
  7. 白夜
  8. ウォーリーヒーロー
  9. 見たくないもの
  10. 目と目と目と目
  11. かけぬけて
  12. 羽虫と自販機
  13. ハッピーエンド
  14. 夜をこえて
  15. 盛者必衰の理、お断り
  16. ないものねだり
  17. 眠れぬ森の君のため
Encore
  1. さくらのうた
  2. A.oh!!

お知らせ

■ライブ情報

J-WAVE 25th ANNIVERSARY ”THE KINGS PLACE” LIVE vol.4
2013/12/27(金)新木場STUDIO COAST

FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
2013/12/29(日)インテックス大阪

rockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 13/14
2013/12/30(月)幕張メッセ国際展示場1~8、イベントホール

Livemasters Inc. COUNTDOWN "GT2014"
2013/12/31(火)Zepp DiverCity(Tokyo)

KANA-BOON ワンマンツアー
2014/05/17 (土) 東京 新木場 STUDIO COAST
2014/05/18 (日) 北海道 札幌 PENNY LANE 24
2014/05/30 (金) 石川 金沢 AZ
2014/06/01 (日) 新潟 新潟 GOLDEN PIGS RED
2014/06/07 (土) 宮城 仙台 MACANA
2014/06/12 (木) 愛知 名古屋 DIAMOND HALL
2014/06/14 (土) 福岡 福岡 DRUM Be-1
2014/06/15 (日) 広島 広島 CLUB QUATTRO
2014/06/21 (土) 大阪 なんば Hatch

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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