2月25日。東京・SHIBUYA-AX。
その日、そこはいつものライヴハウスの景色とは様子を変え、学校の体育館の様な装飾が施されていた。
　会場の入り口には卒業式の立て看板。ステージには、『きゃりーぱみゅぱみゅ学園』の校章旗と演台が置かれていた。まさに、そこは学校の卒業式そのものであった。
　この日、ここに集まったのは1万2,000件の応募の中から抽選で撰ばれた600人の学生たちだ。

　18時半。学校のチャイムが鳴り響くと、学生たちは、“起立、礼、着席！”の号令によって深々とお辞儀をした後に、席に着いた。
「なんだこれくしょん」をSEに、ステージにきゃりーぱみゅぱみゅが登場すると、フロアからは大きな歓声が上がった。
　そんな歓声に応えながら、きゃりーは、「インベーダーインベーダー」と「もったいないとらんど」をライヴで届けた。
「こんばんは?！　きゃりーぱみゅぱみゅです！　本日は『きゃりーぱみゅぱみゅ学園 合同卒業式』にお越し頂きましてありがとうございます！　学生限定イベントは初めてなので、とても楽しみにしてました！」
　と元気に挨拶をすると、その日着ていた2月26日にリリースされるニューシングル「ゆめのはじまりんりん」の新衣装が制服をイメージしてデザインされたモノであることを説明し、自分の高校時代の思い出を語った。
「私は私立の女子校に通っていたんですけど、美術と音楽と体育があって、その内のどれかを選択する学校だったんです。私は絵が下手なんですけど、絵を描くのがとても好きだったので美術を専攻したんですけど、周りが『アニメ』好きばっかりで、まったく話しに付いていけず、“あぁ?、私の高校生活終わったな、これ……”と思っていたんですが、徐々に友達も出来、とても楽しい高校生活を送ることができました。今、21歳になったので、卒業してから早くも３年が経ってしまったのですが、アッと言う間に大人になってしまった気がします。今回の新曲「ゆめのはじまりんりん」は、、非現実世界を唄っているいつもとは少し違って、初めての現実世界を歌った卒業ソングなんです。今日は、みなさんのために歌います！　みんな！　卒業おめでと?！」
　きゃりーは、集まった卒業生たちに向かって、心を込めて新曲の「ゆめのはじまりんりん」を歌ったのだった。

　ライヴを終えると、きゃりーはスーパー生徒会長として演台の前に立ち、再び、自らの高校時代の話しを始めたのだった。
「高校では、授業にはいい思い出がないですけど、卒業式では友達と離れるのがさみしくて、卒業式が終わってから友達と一緒に教室で泣きました！」
　と、卒業式当日の思い出を振り返った。
この他にも、３年目になる一人暮らしの様子を語ったきゃりー。最初は不安だったが、何時でも自由にコンビニに行っても怒られなくなったのが、嬉しくてたまらなかったと話してくれたのだった。
　その後、入場前に記入したアンケートの中からコメントが印象的だったとして撰ばれた5名に、直筆の卒業証書がきゃりー本人から授与された。
　そして、きゃりーは5名の質問に丁寧に答えていった。まだ夢が決まっていないという学生には、“自分も原宿でスナップされなけれな今はなくここには居ない。夢は突然やって来るものです！”とエールを送ったのだった。

　そして。最後に全員で“ゆめのはじまりんりん”を掛け声に記念撮影を撮り、力強いメッセージを贈ったのだった。
「私はお洋服が好きで、いつも派手な恰好をして歩いていたんです。時には“変な子が居る”って指を指されたり、罵倒されたこともありました。でも、今は好きだったことがこうしてお仕事になって、いろんなひとたちが応援してくれています。だから、みんなも自分が思ったことは貫いてほしいです！」
　なんとも説得力のある言葉である。彼女のこの言葉は、そこに集まった学生たちの背中を大きく押すことになったことだろう。

【取材・文：武市尚子】
【撮影：石井亜希】