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藤井フミヤ&尚之からなる兄弟ユニットF-BLOODのレアなライヴをレポート!!

F-BLOOD | 2014.04.02

 藤井フミヤ&尚之ブラザーズのライブは、底抜けの楽しさだった。何の制約もなく、ただただ兄弟が音楽を楽しむ姿は、二人の少年時代を見るようで、ほんのり温かい気持ちにしてもらったのだった。

 コアなファンたちが、ざわめいている。
 アニバーサリー・イヤーの続く藤井家のスピンオフ企画(失礼!)と して、“身内”の人々にはこれを楽しみにしていた向きも多い。だからスペシャルなライブなのに、場内は緊張よりもワクワクが完全に勝っている。
 そんなムードに合わせるように、まずバンドの4人がステージに何気なくゾロゾロ現われ、続いてゾロリとF-BLOODの二人が出てきた。SHIBUYA-AXだから、いつものライブよりかなりの至近距離での登場に、「キャーッ」という声が親しげに感じる(笑)。 すかさずフミヤが「ようこそ。盛り上がっていこうぜ!」とコール。照明は地明りのまま、ラフな感じのスタートになった。

 オープニングは“バイク王”のCMソング「恋するPOWER」だ。フミヤはタンバリンを、尚之は幾何学的な形をしたエレキギター“サンダーバード”を抱えている。フロントに二人が並ぶ姿が、なんだか懐かしい。それでもフミヤのタンバリンはビートがしっかりしていて、若手で構成されたバンドメンバーをリードするところがさすがだ。穏やかな8ビートに合わせて、オーディエンスは早くもハンドクラップ。2コーラス目でフミヤはマウスハープ(ハーモニカ)を吹いて、雰囲気をさらに明るくする。最初のブロックはV6に提供した「GENERATION GAP」で締めた。

 「F-BLOODです。身内のライブなんで、気軽な感じでやろうかな。尚之もしゃべります」とフミヤが振ると、「お足が悪い中、ありがとうございます」と尚之。「お足じゃなくて、お足元だろ!」とフミヤが笑う。「今日はこんな感じで行くんで、まあ、座ってください」。すると今度は観客が 「えーっ!」と笑いながらブーイング。そう、今日はオールスタンディングなのだ(笑)。「明るく始めましたが、次はダークな気持ちで聴いてください」と、第2ブロックへ。 「砂」はビートルズの「Come Togethr」を思わせるハードな曲で、Aメロのリードボーカルを尚之が取る。低音の効いた声が曲調とよく似合う。かっこよかったのは、F-BLOODのセカンドアルバムのタイトル曲「Ants」だった。人間を蟻にたとえたリリックが、人の世界のはかなさを描く。こういうシリアスな歌は、男兄弟が歌うからこそグッとくる。このブロックの終わりは、猿岩石に提供した「白い雲のように」だった。

 「F-BLOODは結成17年。その間、オリンピックは4回もあったのに、アルバムを2枚しか出してない(笑)」とフミヤ。 「まあ、でも、解散のないユニットなんで、生きてる限りやります」と尚之。第3ブロックの締めは、チェッカーズの「眠れるように」だった。

 終わってフミヤは「間違えたぁ~」と笑う。「この歌はチェッカーズのときもやったことない」。「リハのときも『新曲だぁ』って言ってたもんね」と尚之。なにせF-BLOODは持ち曲が少ないので、珍しいチェッカーズの曲が飛び出してくる。だから“身内”にはたまらないのだろう。それでもF-BLOODのライブには華がいっぱいあって、身内以外にも観てほしくなる。たとえば「BLUES OF IF」も渋いチェッカーズ・ナンバーで、フミヤいわく「ゆるーい曲なのに、盛り上がるね」。尚之が「ばかみたいに忙しい時期に作った曲だね」。続けてフミヤが、「今回、セットリストを作るのに昔のアルバムをひっくり返してたんだけど、1年にアルバム3枚出してたりする。若いって怖いねぇ(笑)。」日本のエンターテイメント史上に残る歴史の1ページを、ただの“兄弟トーク”にしてしまう。これがF-BLOODの楽しさなのだ。

 ここからは一気呵成、ロックナンバーで終盤を盛り上げる。バンドが得意なジャンルだけに、メンバーが突っ走ろうとすると、F-BLOODの二人が“見えないブレーキ”をかける。まるで「こういう曲こそ、じっくり攻めた方がフロアは盛り上がるんだよ」とメンバーに教えているようだった。百戦錬磨のF-BLOODの真骨頂、ここにあり! これまた百戦錬磨のオーディエンスも、二人のパファーマンスにせいいっぱい応える。ラストの「SHOOTING STAR」を終えて、尚之がにっこり笑顔を見せ た。

アンコールは、さらにリラックス。「俺ら、年取ったら、二人でバンに乗って、ギター抱えて赤ちょうちん回ろうかな」とフミヤが言うと、尚之が殿さまキングスの「なみだの操」を歌い出したから、場内が大爆笑。「次にF-BLOODをやるとしたら?」とフミヤが訊くと、尚之は「YO!YO!」とラップし始めたから、またまた爆笑。「とにかく俺が歌詞を書いて、尚之が曲を付けたら、それは全部F-BLOODってことにしてやっていきます」とフミヤが宣言。大きな拍手が起こったのだった。

 チェッカーズの名バラード「I have a dream」が新鮮に響く。リリックにはあちこちに青くささが漂うが、それをあえて今の二人が歌うからいい。なぜなら作った本人だから、過ごした”時“に気持ちを込めることができるからだ。
「最後に、皆さんの指にF-BLOODからのプレゼントです」と、「指輪」。「ホンモノの指輪がいい」と客席から声が上がると、「それは自分で手に入れてよ」と切り返すF-BLOODに、大人の男兄弟ならではの魅力があふれていた。

 終演後、楽屋を訪ねると、フミヤが「ストーンズ、よかったね。ミック・ジャガーがあそこまで走れるとは」と言った。このツアー直前のインタビューで、ぽつりと「またバンドやりたいな」と語っていた。そのとき、フミヤはいつまでもこの時代の“理想の男の子”なのだなと思った。

【取材・文 平山雄一】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル F-BLOOD 藤井フミヤ

リリース情報

Ants

Ants

2008年01月23日

SMAR

1. 世間知らずな膨らみ
2. 恋するPOWER
3. Ants
4. 太陽の唄
5. カモなのかも
6. 破滅の週末
7. DOWNTOWN 12
8. 鼓動の夜曲
9. 口笛
10. 路地裏のからすたち
11. I LOVE IT! ドーナッツ!
12. Serendipity
13. hand in hand

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セットリスト

FF&Bare 2014 Special Live
2014.03.20@SHIBUYA-AX

  1. 恋するPOWER
  2. 「 I 」
  3. GENERATION GAP
  4. Ants
  5. 雨になりそうな空
  6. 白い雲のように
  7. 天国のまでの百マイル
  8. 鼓動の夜曲
  9. 眠れるように
  10. 寝顔
  11. BLUES OF IF
  12. 世間知らずな膨らみ
  13. NANA
  14. 破滅の週末
  15. カモなのかも
  16. I LOVE IT! ドーナッツ!
  17. SHOOTING STAR
Encore
  1. I have a dream
  2. 指輪

お知らせ

■ライブ情報

billboard classics
FUMIYA FUJII PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2014

2014/04/30(水)東京文化会館大ホール
2014/05/02(金)横浜みなとみらいホール大ホール
2014/05/07(水)福岡シンフォニーホール
2014/05/08(木)福岡シンフォニーホール
2014/05/18(日)愛知県芸術劇場大ホール
2014/06/04(水)兵庫県立芸術文化センター大ホール
2014/06/05(木)兵庫県立芸術文化センター大ホール

藤井フミヤ 30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE
2014/08/16(土)東京 府中の森芸術劇場どりーむホール
2014/08/17(日)東京 府中の森芸術劇場どりーむホール
2014/08/23(土)兵庫 神戸国際会館こくさいホール
2014/08/24(日)滋賀 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール・大ホール
2014/08/30(土)静岡 静岡市清水文化会館マリナート大ホール
2014/08/31(日)埼玉 東松山市民文化センター
2014/09/03(水)千葉 君津市民文化ホール
2014/09/06(土)神奈川 よこすか芸術劇場
2014/09/07(日)愛知 一宮市民会館
2014/09/14(日)広島 上野学園ホール
2014/09/15(月・祝)香川 サンポートホール高松・大ホール
2014/09/20(土)宮城 東京エレクトロンホール宮城
2014/09/21(日)東京 東京国際フォーラム・ホールA
2014/09/23(火・祝)北海道 札幌市教育文化会館大ホール
2014/09/24(水)北海道 釧路市民文化会館 大ホール
2014/09/27(土)新潟 南魚沼市民会館
2014/09/28(日)石川 本多の森ホール
2014/10/01(水)茨城 龍ヶ崎市文化会館
2014/10/04(土)大阪 フェスティバルホール
2014/10/05(日)大阪 フェスティバルホール
2014/10/18(土)愛知 名古屋国際会議場センチュリーホール
2014/10/19(日)奈良 なら100年会館 大ホール
2014/10/25(土)秋田 能代市文化会館
2014/10/26(日)青森 五所川原市ふるさと交流圏民センターオルテンシア コンサートホール
2014/10/30(木)群馬 藤岡市みかぼみらい館 大ホール
2014/11/02(日)熊本 市民会館崇城大学ホール(熊本市民会館)
2014/11/03(月・祝)福岡 福岡サンパレス
2014/11/08(土)大阪 フェスティバルホール
2014/11/09(日)大阪 フェスティバルホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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