なんだか賑やかなライブだ。いつも以上にメンバーの楽器持ち替えが多くて、“いろんなユニコーン”が楽しめる。グダグダはいつも通りなのに、段取りが多いから、意外にテキパキ見えちゃったりする“イーガジャケジョロ”ツアーだ。
　初日は見逃したものの、4月11日さいたま市文化センターは6本目。まだまだツアー序盤の新鮮さは保っているはず。

　南浦和の駅からとことこ歩いて楽屋に入ると、まず「喉になんかいる」とウガイ薬を片手にウロウロするOTが目に入った。2、3日前、弁当を食べてるときに突然何かが入ってきて、喉にフィルターがかかったようになってしまったという。いろんな薬や喉飴を試しているけど、なかなかそのフィルターが取れないそうだ。
　とはいえ、その話をしている顔はそんなに深刻ではなく、逆にツアーが順調に進んでいるように思えた。メンバーはそれぞれにステージ衣装に着替える時間。バンダナの色を選んだり、ストレッチしたり、いつものユニコーンの楽屋がそこにあった。
　ロビーで物販に並ぶ人を掻き分けて、客席に着く。いよいよ開演時間だ。次々にフロントが入れ替わる、ユニコーンらしいライブが始まった。

　大ざっぱな印象で言うと、ニューアルバム『イーガジャケジョロ』の制作風景を覗いているようなライブだ。『イーガ~』の楽曲を柱にして、5人がそれぞれに大活躍する。
　『イーガ~』は、ツリーハウスのようなアルバムだ。みんなでいろんな材料を持ち寄って、そこらに生えてる木を土台にして秘密基地を作る。しっかりしたパイプを柱にして、少しまともな板があれば床にする。それさえあれば、あとは適当。プラスチックの破片で棚を作ったり、ビニールのヒモでブランコを作ったり。ワイワイがやがや、男子の遊びの典型がツリーハウス作りなのだ。

　そんなアルバムと同じく、ABEDONの作ったリードトラック「KEEP ON ROCK’N ROLL」が柱になり、OTが歌う「早口カレー」を床にして、ライブが組み立てられていく。どんなツリーハウスになるかは、ライブが終わるまでわからない。が、メンバーが楽しそうに演奏しているのを見ていると、こちらも楽しくなる。おそらく『イーガ~』をレコーディングしたスタジオの雰囲気は、こんな感じだったんだろうなと思えてくるのだ。

　たとえば川西さんが描いてきた解読不能な設計図を囲んで、あーでもないこーでもないと全員でひねり出した「俺のタクシー」は、ドタバタ喜劇のように“上演”される。テッシーのマジバラード「それだけのこと」は、床の間に吊り下げられた掛け軸のように大マジで歌われる。ただしツリーハウスの床の間だけど（笑）。

　そしてアルバム作りで大活躍したEBIは、ライブでもそのまんま超大活躍。ベースABEDONを従えて、ハンドマイクで歌いまくる、踊りまくる。“スターな男”とは、EBIのことだっ！　でもEBI自身は「微妙な拍手、ありがとうございます」と、あくまでクールに振る舞うのが面白い。
　楽器の持ち替えも絶好調で、OTのスライドギターや、ABEDONのマウスハープが、今回の聴きどころだろう。

　もうひとつ特記事項があるとすれば、5人が歌うシーンが感動的なこと。「あなたが太陽」など、歌に集中する5人の表情には“バンドの歓び”があふれていて、さすがユニコーンと言いたくなった。

　さて、心配されたOTの喉だが、滑り出しはややガラガラ声だったものの、すぐに調子が戻って、問題なし。「ユトリDEATH」では、お約束のDEATH声も健在で、アンコールまで突っ走った。
　それに対して、心配ないのはABEDONのMC。またもや企画満載で、全員をイジリ倒す。「浦和の裏は、なんでしょう？」というしょーもない質問を4人に浴びせて、ドSっぷりを発揮していた。

　個人的な感想で言うと、この日のベストは、アルバムタイトル曲の「イーガジャケジョロ」だった。ユニコーン流のユルいブルースには、彼らのおおらかな“歌心”が漂っていて、最高だった。終演後、OTにそれを告げると「俺のスライドギターが、今日はすごくよかったからね」。いい日に当たったのかなぁ、ラッキー！！

　このツアーはまだまだバージョンアップし続けるだろう。と、適当なことを笑いながら言っちゃいたくなる、序盤のユニコーンだった。

【取材・文：平山雄一】
【撮影：山本倫子】