89年の5月29日、メンバーの地元近くに存在するライブハウス、町田プレイハウスで初ライブを行ったLUNA SEA。それから25年後の同じ日、バンドは25周年を祝うライブ“LUNA SEA 25th ANNIVERSARY LIVE-The Unfinished MOON-”を国立代々木競技場第一体育館で行った。

　開演直前、暗転した場内のビジョンに“1989”という年号が映し出される。時代はどんどん現在に近づき、ついに“2014.5.29”の日付 までたどり着いた。その瞬間、ムービングライトが満員の客席を照らす。SEはケイト・ブッシュの「Babooshka」。初期のオープニングSE を敢えて使用するセレクトが心憎い。メンバーがステージ下手からラフに現れ、高まる声援を受けつつ披露したのは、ニューアルバム『A WILL』の1曲目「Anthem of Light」。ライブの幕開けにピッタリの前向きな楽曲だ。2曲目の「TONIGHT」は2000年にリリースしたアップテンポのシングル曲。イントロのあと、爆音の特効とともに、ライブの勢いが増す。本編はこれまでの代表曲と『A WILL』からの曲が混ざり合った構成。「TRUE BLUE」と「gravity」のあいだに「Rouge」や「乱」といった新しい曲が違和感なく調和しているのが新鮮だ。MCではRYUICHIが「1989年5月29日……我々5人は町田プレイハウスでひとつになり、ライブを行いました。それから25年の時が過ぎ、 今夜、バースディを迎えました」と挨拶。集まったファンは歓声と拍手で温かく応える。

　中盤では彼らにしか作り出させない幻想的な時間帯が待ち構えていた。SUGIZO がギターからバイオリンに持ちかえ、「Providence」のイントロを弾き始めると、静寂が広がり、ライブの空気感がガラリと変わる。続く「MOON」も、ディレイのかかったギターのイントロから、独特の緊張感が生まれる。
　後半前には、真矢が華やかなドラムソロで魅了。昔から彼のドラムソロは、 ショーアップされたことでも知られているが、変わらぬパワフルなプレイは圧 巻だ。ドラムソロのあとはベースのJが登場。「派手にいこうぜ！」と、煽って後半へとつなげていく。昔からライブでも人気の高い「Déjàvu」、そして「I fou You」……惜しげもなくプレイされていく代表曲に息つく間もない。そんな中、ニューアルバムからのハードチューン「Metamorphosis」や「The End Of The Dream」なども、この先のライブで進化しそうな印象を受けた。
　本編ラストの3曲は「STORM」「TIME IS DEAD」「ROSIER」という、神曲が並ぶ。「ROSIER」の見せ場であるJのマイクスタンド投げも健在で、全17曲の本編が、ほんの一瞬のように感じられた。

　アンコールを要求する手拍子は、いつしかLUNA SEAが誕生した日を祝うかのよう に“ハッピーバースデー”の合唱となる。歌に導かれ、嬉しそうな表情で5人がステージに戻ってきた。RYUICHIは「結成当時は25年先のことは考えてなくて――」 と、過去を振り返りながら「ひとりも欠けることなくここに集まれているのは、 ホントに幸せだと思います。今日この日はLUNA SEAにとって、ホントの意味での新しいスタートだと思ってます。ここからLUNA SEAは新しい扉を開きます」と、新たな決意を宣言した。

　アンコール最後は、ライブのシメ曲である「WISH」だったが、この日はまだまだ終わらない。SLAVE（ファンの総称）たちが先導し、スタンド席の端から見事なウェーヴを作り出した。新しいファンには、この自発的パワーは驚きだったに違いない。SLAVEは、時にバンドが驚くようなサプライズをやってのけるのだ。ダブルアンコールで披露されたのは彼らの人気を不動のものにした4枚目のアルバム『MOTHER』と同名の「MOTHER」。ムービングライトが壮大な曲に合わせ、1 3千人が埋め尽くした会場をゆっくりと照らしていく。美しい光景を照らしながら、記念すべきライブは幕を閉じた。普段はあまり口を開かないギターのINORANが「25年なんて信じられないんだけど、これからもよろしくな！」と語りかけていたのも印象的だった。
　余談だが、偶然にもこの日は新月（彼らが何かをする時、たびたび月の周期とシンクロすることが多い）。特別なこの日は、バンドが新たなスタートを切るにふさわしいタイミングだったと思う。6月からは来年まで続く全国ツアー“LUNA SEA　25th ANNIVERSARY LIVE TOUR＜THE LUNATIC -A Liberated Will-＞”もスタートする。完全に覚醒した彼らの勢いは止まりそうにない。

【取材・文：海江敦士】
【撮影：田辺佳子 】