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エレファントカシマシ25年目の日比谷野音

エレファントカシマシ | 2014.10.31

 入魂の一夜。エレファントカシマシの日比谷野音公演は、まさにそんな夜だった。心地よい秋風を熱風に変えそうな、腰の据わった演奏と力強い歌が発するエナジーは最後まで少しも緩まず上昇し続け、波乱に富んだ25年間、ファンとともに毎年ここでライヴをやり続けて来た自負と喜びを発散させていた。まさにこの時だけの、特別の夜だったのである。

 タメの効いた歌と演奏での「おはよう こんにちは」で圧倒した幕開から、お馴染みの「悲しみの果て」で一気にオーディエンスの気持ちを開かせ、これまで殆ど演奏した事のないパンク・チューン「浮世の姿」で意表を突きながらも惹き付ける。宮本浩次はジャズ・シンガーのようにスキャットしながら「晴れて良かった。ようこそ」と挨拶し、「古い曲を聴いてくれ」とアコギを弾いて「ひまつぶし人生」「お前の夢を見た(ふられた男)」を続ける。どちらも5作目に入っている曲だ。これもまた演奏するのは珍しい「太陽ギラギラ」は、初期の曲が持つポテンシャルを、今のエレカシが演奏する事で更に開花させているようで、目も耳も釘付けになった。

 「たくさん、今日しかできない最高の曲を用意して来たんで、盛り上がったり考えたり、楽しんでくれ!」と宮本。その言葉通り、約1ヶ月前に始まったツアーとは全く違うセットリストだ。「化ケモノ青年」「星の砂」「珍奇男」とアグレッシヴな曲を続けた後で、一転ひときわ特別な雰囲気となったのは、「秋にぴったりの曲を見つけました」と紹介した「きみの面影だけ」。これは未発表曲だったものを『エレカシ 自選作品集』に収録する際、故・佐久間正英氏がプロデュース・ミックスした曲で、続いて演奏した「真夏の星空は少しブルー」も佐久間氏のプロデュース曲。押さえた調子で丁寧に歌う宮本の、佐久間氏への思いが溢れる歌だった。そして、内にある思いを,一転して爆発させるようにパワフルに歌う宮本を中心に、高緑成治のベースと冨永義之のドラムが厚みのあるビートをうねらせ、石森敏行がエッジの立ったギターを聴かせた「東京の空」は、サポートギターのヒラマミキオ、キーボードの蔦谷好位置とともに豪快なジャム・セッションを繰り広げ、エレファントカシマシがタフなロック・バンドである事を、改めて示すような演奏だった。曲を終えてメンバーを紹介する宮本が誇らしげに見えたのは気のせいだろうか。

 「It’s my life」からアドリブを効かせて盛り上げた「starting over」から、「笑顔の未来へ」「俺たちの明日」とお馴染みの曲を続けると、「行こうぜ!」と宮本は声をかけながらステージを左右に走ったりモニターに乗ったりと、高揚した様子で歌って行く。このバンドらしいルーズでタフなグルーヴが、最高潮に達したのは新シングルのカップリング曲「明日を行け」。そして「新しい曲を聴いてください」と、ヒラマのアコースティック・ギターをバックに歌い出した「Destiny」は、曲が進むほどにバンドの一体感が高まり、興奮を押さえきれないように宮本はシャツの胸元のボタンを引き千切った。

 一旦ステージを降り、黒シャツに替えた宮本に続きバンドの面々らが戻ると「友達がいるのさ」から第2部がスタート。演奏は軽やかだがアンコールではなく本気だから2部なのだ。それを示すように気合い漲る歌で場内を興奮の坩堝にした「ガストロンジャー」、歌う喜びを味わっているような「ハナウタ~遠い昔からの物語~」、そして「たくさん歌えて嬉しい。またコンサートで会おう」と言って歌い出した「今宵の月のように」は、本当に頭上に月が見えるようだった。

 そんなハイテンションな流れを、家で歌っているような風情で変えたのは弾き語りで歌った「月夜の散歩」。そこから再び「悪魔メフィスト」を経て「ファイティングマン」へと一気に上り詰めたのは流石だった。実質的なアンコールは「男は行く」。彼等が初めて日比谷野音でライヴを行ったのは、この曲が5枚目のシングルとして発売されて間もない頃だ。これまでの24回を俯瞰するような33曲を演奏し、3時間に及んだ25回目の幕を無事に下ろした彼等。その凝縮された歴史とエネルギーが、この一夜を輝かせていた。バンドは一段と逞しさを感じさせ、宮本は今まで以上に表情豊かな歌でヴォーカリストとしての新境地を目指しているようだった。そんな充実ぶりを随所で示しながら、宮本が言った通り「今日しかできない最高の曲」を揃えた入魂のライヴを、エレファントカシマシは見せてくれたのだった。

【取材・文:今井智子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル エレファントカシマシ

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リリース情報

Destiny (初回限定盤) [CD+DVD]

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2014年06月11日

ユニバーサル・シグマ

[CD]
1.Destiny
2.明日を行け
3.Destiny (Instrumental)
4.明日を行け (Instrumental)

[DVD]
Destiny Music Video
Destiny Music Video Making
明日を行け レコーディングドキュメント

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■ライブ情報

mito LIGHT HOUSE 25th anniversary
~祝盃~

2014/12/12(金)水戸ライトハウス
vs BRAHMAN

Que20th記念 ONEMAN series
[OPERATION UTAGE]

2014/12/16(火)下北沢CLUB Que (ワンマンライブ)

エレファントカシマシ 新春ライブ 2015
2015/01/03(土) 日本武道館
2015/01/04(日) 日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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