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【ポップでサイケデリックでグロテスク】なきゃりーぱみゅぱみゅの原点

きゃりーぱみゅぱみゅ | 2014.11.19

 11月9日に国立代々木第一体育館にて行われた『きゃりーぱみゅぱみゅからふるぱにっく TOY BOX』は、10月18日の幕張メッセイベントホールを皮切りにスタートさせた、全国アリーナツアーの千秋楽であった。
 このツアーは、7月からスタートした『ピカピカふぁんたじん』(7月9日にリリースされた3枚目のアルバム)を引っ提げて全国をまわったホールツアーから続けて行われたものであったのだが、ホールツアーで魅せた【ポジティブな死後】をテーマとした内容とは異なる、アリーナ用に新たなコンセプトを置いたステージとなった。

 アリーナ用に考えられたというテーマは、【いろんなことが起るおもちゃ箱】。
 ステージにはテーマにぴったりなオブジェがずらり。まさにそこはおもちゃ箱。パステルカラーや蛍光色のカラフルな色使いのプレゼントボックスや、巨大なクマのオブジェや積み木たちを見ているだけでワクワクした気持ちにさせられる。いままでも、サーカスや遊園地といったテーマでライヴをしてきた彼女だが、ライヴの本編だけがSHOWなのではなく、そんなライヴが始まる前のワクワク感も含め、会場に一歩足を踏み入れたところからライヴがスタートしているように思うのだ。それほどまでに、きゃりーぱみゅぱみゅのライヴはすべてが徹底されたエンタテイメントなのである。

 “全力でみんなのことを楽しませたい!”
と強く願う彼女の想いとこだわりが、至る所から伝わってきた。
 ライヴは、今回のライヴをきゃりーと共に盛り上げるキャストである、ミツバチのミッツとネコのキャティとロボットのコンゴリラがおもちゃ箱の中でそっと目を覚まし、積み木をして遊ぶというシーンから幕を開けた。
 そして、きゃりーもおもちゃ箱の中にあるプレゼントボックスの中から登場したのである。
 オフホワイトのミニドレスを着たフ、ランス人形のなうなガーリーな出で立ちで登場したきゃりーぱみゅぱみゅを、オーディエンスは大きな歓声で迎え入れた。

 1曲目は「もったいないとらんど」。
いつもは【きゃりーキッズ】としてきゃりーのステージに華を添えるキッズダンサーたちが、今回のライヴでは、クマの着ぐるみのような衣装を身に付け【ティディー族】となってステージを盛り上げた。キレとバネのある独特のダンスは、きゃりーぱみゅぱみゅという存在を見事に引き立てる。これまた追求しつくされた最高のエンタテイメントである。

 今回は【おもちゃ箱】というテーマの裏に、【ポップでサイケデリックでグロテスク】な自らの原点に立ち返ったライヴをしていきたいというコンセプトが置かれていたこともあり、衣装やステージ構成の至る所で、きゃりーぱみゅぱみゅの原点を感じることが出来た。
 まず、楽曲面においては、デビュー作であるミニアルバムや1stアルバムから「チェリーボンボン」「スキすぎてキレそう」「jelly」などをメドレーにして届けたり、衣装面においても、黒と赤を基調としたチュールのミニドレスの胸元から肩にかけてのラインがコウモリのような形にデザインされていたり、見せ場となったホールケーキの上で歌った際のピンクとエメラルドグリーンを基調としたアシンメトリーなドレスのヘアスタイルでは、大きな苺のヘッドドレスから、白とピンクのミルクが頭のてっぺんから大胆に垂れ流れていたりと、すべてが【ポップでサイケデリックでグロテスク】であったのだ。
 ただただ可愛いドレスを着て、キュートな振り付けで可愛く歌って躍るという王道なアイドルとは違う存在。きゃりーぱみゅぱみゅは、独自のセンスを発信していく新種のアーティストであるということを、この日、改めて見せつけられた気がした。楽曲や歌詞を手掛ける中田ヤスタカ(CAPSULE)氏の作品に対する意図をしっかりと汲み取り、そこに描かれたストーリーを見事に演じ切っていくきゃりーは最高のエンタテイナーである。

 中盤で届けられた「シリアスひとみ」では、1曲の中で衣装を3パターン早替えするというイリュージョンにも挑戦し、オーディエンスを沸かせたのだった。 「ありがとうございます! 楽しんでますか? この3着の早着替えは、本当に難しくて、成功率もすごく低いんですが、どうしてもやってみたくてスタッフさんと一生懸命頑張ったんです! 私たちは、どうしても難しいことに挑戦したくなってしまうというか。難易度が高いので失敗したライヴもあったんですが、今日は無事に成功したのですごく嬉しく思ってます!」
 と、ここで、このステージの原案となったラフ画をステージ両脇のスクリーンに写し、オーディエンスに丁寧に説明したり、近況を報告。ハロウィンにティム・バートン監督の来日を記念したレセプションパーティに『コープスプライド』のエミリーのコスプレで出席して来たというお土産話も披露し、その話しの流れから、この日集まったオーディエンスのコスプレをクローズアップしたのだった。
「みんな一生懸命コスプレして来てくれてるのが、本当に嬉しいです! そこの3人組みの子たちすごいね! めっちゃ頑張ってくれてる! 自分で作ったの?」
 と、アリーナ席の後方のファンにステージから話しかける場面もあった。
「あ、彼女知ってる! よくツイッターに書き込みしてくれてる子だよね! ありがとう! すっごい可愛いよ! 嬉しいです!」
 というきゃりーの言葉に感極まってファンは涙。ファン想いの彼女らしいエピソードに心がほっこりした一幕だった。

 アンコールでは人気曲の「CANDY CANDY」を披露して最後までステージを盛り上げると、無事にアリーナツアーが終了出来たことを涙を浮かべながら感謝した。
「いろいろと大変なことや嫌なことがたくさんあったけど、今日、本当に感動しました。ありがとうございました! これからもずっと愛のあるファンタジーを届けていきたいと思います!」
 と、集まった1万人のファンに約束したきゃりー。彼女が涙を見せるのはとても珍しいこと。その涙は、きっとまた1つきゃりーぱみゅぱみゅというアーティストを大きく成長させたことだろう。

【取材・文:武市尚子】
【撮影:Aki Ishii】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル きゃりーぱみゅぱみゅ

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リリース情報

ピカピカふぁんたじん

ピカピカふぁんたじん

2014年07月09日

ワーナーミュージック・ジャパン

1. ピカピカふぁんたじん
2. きらきらキラー
3. ゆめのはじまりんりん -album mix-
4. もったいないとらんど
5. シリアスひとみ
6. do do pi do(CAPSULE COVER)
7. ファミリーパーティー -album mix-
8. Ring a Bell
9. トーキョーハイウェイ
10. こいこいこい
11. すんごいオーラ -album mix-
12. エクスプローラー

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セットリスト

きゃりーぱみゅぱみゅのからふるぱにっくTOY BOX
2014.11.9@国立代々木第一体育館

  1. もったいないとらんど
  2. きゃりーANAN
  3. チェリーボンボン
  4. スキすぎてキレそう
  5. jelly
  6. Super Scooter Happy
  7. キミに100パーセント
  8. PONPONPON
  9. Ring a Bell
  10. つけまつける
  11. おやすみ
  12. シリアスひとみ
  13. ファッションモンスター
  14. にんじゃりばんばん
  15. インベーダーインベーダー
  16. きらきらキラー
  17. みんなのうた
  18. トーキョーハイウェイ
  19. ファミリーパーティー
  20. エクスプローラー
Encore
  1. CANDY CANDY
  2. ちゃんちゃかちゃんちゃん

お知らせ

■ライブ情報

unBORDE Xmas PARTY 2014
2014/12/23(火・祝)Zepp Tokyo

rocking’ on presents COUNTDOWN JAPAN 14/15
2014/12/28(日)幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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