「昔の僕たちはZEPPやサマーソニックのステージに立ちたかった。でも、それを早い時期にできたCNBLUEはラッキーでした。そして，日本武道館。昔は僕たちにできるのかと思ってましたが、今日できました（大拍手）。でも、もっともっと高くまでいきたい。CNBLUEはまだまだです。次は東京ドーム」――――アンコール終盤のMCでそう語ったヨンファの自信みなぎる凛々しい笑顔が、すべてを物語っていた。自分たちはまだまだ成長途中でこれからも変化しながらトップを目指す。そんなことを確信したステージだった。

　日本中に熱いWAVEを巻き起こし、先日最終日を迎えたCNBLUEの全国ツアー『CNBLUE 2014 ARENA TOUR “WAVE”』。このツアーで彼らはバンド史上初めて単独で武道館に立った。記念すべきその日はツアー初日にやってきた。

　舞台は、まさかのインディーズ最後のライブを行なった横浜アリーナを彷彿させる360度回転式のセンターステージ。予想外はまだまだ続く。誰もがアルバム『WAVE』の「Intro」と予想していたオープニングSEは、ニューインストに。そして、ステージに現れた４人はいきなりライヴ初演曲「Ring」、そして「Mr.KIA」というマニアックな曲を立て続けに披露。驚きが隠せない観客に向けてジョンヒョンがさっそく今回のセットリストは季節に合わせて「冬っぽい曲を用意した」と解説。「でも、今日は暑いですよね？　冬じゃなくて困りました」と言葉を続けると、会場は自然と笑顔に包まれた。「ここからはCNBLUEのいつもの感じで」というヨンファの合図で「Where you are」からは彼らお得意の熱いパッション溢れるロックゾーンへ。ジョンシンのベースがファンキーに飛び跳ねる「Time is over」、本ツアーから新しく加わったヨンファ好みのD（ark）S(exy)M（etal）ソング「lonely night 」では妖艶なミッドグルーヴを、さらにドラムのミンヒョクが迫力あるリズムを刻むなか、鮮やかなコントラストをなすヨンファとジョンヒョンのダブル・ボーカルが曲にスリルをもたらしていく「In My Head」など、４人が放つグルーヴは実に多彩。そんなバンド・グルーヴに合わせて回転する舞台やレーザービームなどの派手やかな演出も加わり、客席はすでに沸騰状態。メンバーがタオルで汗を拭う姿から各々の機材の細かいセッティングまで、観客が普段のライブでは見られない部分までつぶさに観察できる今回のセンターステージ。メンバーもこの舞台が気に入った模様で「すごくいいです。ヨンファさんがかっこよく見えます」と爽やかな笑顔で話すミンヒョク。すかさずジョンシンがそんな彼に向かって「お世辞king！」というと、これが大ウケ。だが、ジョンヒョンがしんみりしたギターを弾き始めると、会場の空気は一変。落ち着いたムードに。「次は僕が初めて作った曲です」というヨンファの紹介で「Y.Why 」へ。バラードゾーンをただ浸って聞かせるのではなく、他のブロック同様音楽で圧倒できたら・・・彼らのプレイからはそんな並々ならぬ気合いを感じた。ジョンヒョンのアルペジオをバックに、ロックナンバーを歌っていた声とは違う、せつな成分と吐息を多めに入れたヨンファの歌声が胸を締め付ける「Y.Why」。ヨンファのピアノが優しくジョンヒョンのソフトボイスと重なりあう英語バージョンの「my miracle」。この２曲の体内への浸透率をさらに高めていった、ジョンヒョンの泣きのギター・ソロ。どのパートも情感たっぷりに楽曲を語っている。武道館の空気がどんどん澄んでいったところで、このツアー初演の２曲、「Monster」~「HEART song」へ。この流れも驚きの選曲でありながら絶妙だった。ジョンヒョンの声にメンバーの声が次々と重なることでダイナミクスを増していく「Monster」。そのエネルギーを受け「HEART song」が始まると、場内はハピネスな空気に包まれ、客席から自然と手拍子が生まれた。ヨンファは幸せそうな笑顔で子供のように無邪気に舞台を駆け巡り、ジョンヒョン、ジョンシン、ミンヒョクは幸せオーラをたっぷりの音でどこまでもピースフルな空間を作り上げていった。聴き手の快楽に直結するロックグルーヴ同様、いまの自分たちはバラードのパフォーマンスでも観客を音で圧倒、幸せにもできる。それを証明した場面だった。その結果、この日はバラードパートでバンドのギアをトップに入れることになった彼ら。「武道館、命掛けてやります」と熱くなったヨンファの言葉に煽られ、「Foxy」以降は超ハイテンションで踊れるCNBLUEのテッパン曲を次々とプレイ。場内はアゲアゲムード一色に。そのヴォルテージマックスのまま最後は初披露ながら“ウォーウォー”という観客のシンガロングが武道館に響き渡った「Radio」で本編をフィニッシュ。「Like A Child」から始まったアンコールは「Can’t Stop」で、最後に再び観客のハートを幸せな気持ちで満たしてライブは終了した。

　ロック、ダンス以外に、バラードパートでもライブのピークを作れることを今回のツアーで確信したCNBLUE。また一つ新しい武器を手にした彼らの進化は、まだまだ止まらない。

【取材・文：東條祥恵】