前へ

次へ

高橋優、本人史上最大規模のツアー、完走!! 東京公演をレポ。

高橋優 | 2015.03.31

 ドラムスティックのカウントを合図にスタートした1曲目「裸の王国」。力強いバンドサウンドに包まれながら響かせる高橋優の歌声が、客席にいる我々に向かって鮮やかに迫って来る。「みんなの声を聴かせてくれ!」、彼が曲の途中で呼びかけると観客の掛け声や手拍子は一層の熱を帯びていった。そして、「蝉」と「(Where’s)THE SILENT MAJORITY?」も歌った後、最初に迎えたインターバル。アルバム『今、そこにある明滅と群生』のタイトルにこめた想いが語られた。「“明滅”は星空によく使われる言葉。“群生”は生きとし生ける全てのもの。星空は綺麗だけど、ほとんどは自分では光っていなくて、他の星の光を反射して光っています。僕らもお互いに照らし合って光っているんじゃないかと思って、あのアルバムを作りました。みんなとたくさん照らし合えたらいいなと思って、今回のツアーもこのタイトル。ビカビカに照らし合う時間を過ごしたいと思います!」。その言葉に応えて歓声が起こったところで再び演奏へ。ブルージーな燻し銀のサウンドが際立つ「BE RIGHT」と「WC」、ホロ苦い哀愁を帯びたメロディが胸に沁みる「犬」と「旅人」が披露されたが、耳を傾けている観客が各曲にこめられているメッセージを心の底から噛み締めているのをまざまざ感じた。

 MCでの話術も素晴らしい高橋。この日も実に冴えていた。女性ファンから「王子さま~!」という黄色い声が上がったところ、客席のどこからか聞こえてきた「えっ?」という男性による素朴な疑問の声。それに対して「本人の前でそういうのをやるデリカシーのなさ」と呟いて観客の笑いを誘っていた。また、アコースティックコーナーを始める直前のMCも傑作であった。今回のツアーの福岡公演当日、渋滞に巻き込まれたため、予定していた飛行機に乗り遅れた高橋。別の便で向かおうとしたが、ひたすらキャンセル待ちをする事態となり、リハーサルどころか本番にも間に合わない可能性すら浮上してきた。そんなところで偶然出会った顔見知りのTV局プロデューサー。事情を知った彼の粋な計らいによって、無事に危機を乗り越えたのであった……意外な展開も交えた奇跡のエピソードを語った後、「僕が誇れるのは出会いに恵まれているということです。繋がりを大事にすると、笑い合える日が来る。そんな想いをこめた曲です」という言葉を挟んで、「同じ日々の繰り返し」をスタートさせた。その他「以心伝心」、ライブでやるのは久しぶりだという「あなたとだから歩める道」なども、アコースティック編成で披露。瑞々しいサウンドで観客をじっくり包んだひと時だった。

 「2015年で最も熱い時間を過ごしたいのですが、お元気は残っていますか?」、観客に呼びかけて突入した後半戦。「パイオニア」を皮切りに、アッパーなナンバーが連発されていった。高橋がパーカッシヴに掻き鳴らすアコースティックギター、顔面を紅潮させながら放つ歌声、轟くバンドサウンドが絶妙に融合した「こどものうた」に至る頃には、会場全体が興奮を露わにする観客の勢いで揺らいでいた。また、「泣ぐ子はいねが」の盛り上がりは、やはり尋常ではなかった。《♪泣ぐ子はいねが~》という部分で展開する恒例のかけ合いを《♪109》や《♪丸井》など、NHKホールがある渋谷にちなんだフレーズも交えてまずはじっくり練習。本番では、観客同士が互いに競い合うように明るい声を上げていた。そして、「みなさんの光を身体いっぱいに感じることができました。また会えるのを楽しみにしています。今日より明日、明日より明後日が良くなっていきますように。そういう想いをこめた曲です」という言葉を添え、本編を締め括ったのは「明日への星」。高橋の奏でるアコースティックギターと歌のみで幕開け、やがてバンドが合流。雄大に響き渡っていくサウンドがドラマチックであった。

 アンコールを求める手拍子に応え、バンドメンバーと一緒に元気良く小走りしながらステージに戻って来た高橋。「今日初めての曲をやっていいですか? 横浜DeNAベイスターズのドキュメンタリー(『ダグアウトの向こう ?今を生きるということ。』)の主題歌です。このドキュメンタリー、ベイスターズの裏側を1年間撮り続けています。1つのことに向かってる人たちの物語。歩んでる人に少しでもエールになったらいいなと思って書いた曲です」、MCを経て新曲「未だ見ぬ星座」が披露された。全身を絞り上げるように放たれる歌声がとてもエモーショナル。耳を傾けている内に、何とも言えず清々しいエネルギーで胸がいっぱいになるのを感じる曲であった。続いて「現実という名の怪物と戦う者たち」も届けた後、再びインターバル。「本当にどうもありがとうございました。今回のツアー、最後まで精一杯やります。また一緒に騒いで、《♪丸井》とか歌って笑える時間が来ることを想像しながら。知っていたら一緒に歌って」と言い、「同じ空の下」へ。イントロが始まるや否や観客の温かい手拍子が加わり、本編では大合唱も湧き起こる。会場全体を見渡しながら歌う高橋の顔から、心底幸せそうな笑みがこぼれ落ちていた。

 メンバーたちと横一列に並んで深々とお辞儀をした後、高橋はステージの隅々までを巡りながらあらゆるエリアの観客に何度も挨拶。そしてマイクを握り締め、大音量で流れているエンディングSE「BE RIGHT」に合わせて全力で歌った。観客も共に歌いながら手を振る。「ありがとうございました!」という声を残して彼が去った時、会場中から起こった大きな歓声。高橋優とファンの間にある揺るぎない絆を感じたエンディングであった。

【取材・文:田中 大】



※写真は、2015年3月28日秋田県民会館で撮影されたものです。

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 高橋優

関連記事

リリース情報

今、そこにある明滅と群生(初回限定盤)[CD+DVD]

今、そこにある明滅と群生(初回限定盤)[CD+DVD]

2014年08月06日

ワーナーミュージック・ジャパン

1. BE RIGHT
2. 太陽と花
3. 裸の王国
4. 明日への星
5. WC
6. 同じ日々の繰り返し
7. ヤキモチ
8. 旅人
9. 犬
10. パイオニア
11. おやすみ

このアルバムを購入

セットリスト

LIVE TOUR 2014-2015
今、そこにある明滅と群生
2015.2.11@NHKホール

  1. 裸の王国
  2. (Where’s) THE SILENT MAJORITY?
  3. BE RIGHT
  4. WC
  5. 旅人
  6. 同じ日々の繰り返し
  7. 以心伝心
  8. あなたとだから歩める道
  9. ヤキモチ
  10. おやすみ
  11. パイオニア
  12. 頭ん中そればっかり
  13. 太陽と花
  14. こどものうた
  15. 泣ぐ子はいねが
  16. 明日への星
アンコール
  1. 未だ見ぬ星座
  2. 現実という名の怪物と戦う者たち
  3. 同じ空の下

お知らせ

■リリース情報

2015年6月10日、12thシングル発売決定
2015年7月22日、初のベストアルバム発売決定


■ライブ情報

高橋優フリーイベント
2015/07/25(土)秋田県秋田市エリアなかいち にぎわい広場
※エリアなかいち 公式サイト:
http://akita-nakaichi.com/

VIVA LA ROCK 2015
2015/05/03(日)さいたまスーパーアリーナ

METROCK
2015/05/23(土)東京・新木場若洲公園

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る