白い幕が切って落とされて露わになったステージ。壮大なオープニング音楽が流れ、轟いた爆発音、迸った真っ赤な火柱。ドラマチックな演出が展開する中、坂本遥奈、咲良菜緒、伊藤千由李、安藤ゆず、大黒柚姫、秋本帆華……という順番でメンバーが1人ずつ登場してポーズをキメた。そして、スタートした1曲目「そこそこプレミアム」。観客が掲げた6色のペンライトの光が激しく揺れ、ものすごい歓声が沸き起こる。続いて「カントリーガール」「恋人はスナイパー」「IKE IKE HOLLYWOOD」も連発され、盛り上がりはとどまるところを知らない。メインステージの他、アリーナ席の中心にまで伸びた花道も目いっぱいに駆使しながら歌い、踊るメンバーたちの姿がまぶしい。足を怪我している安藤は車椅子での出演だが、自ら車輪を操作したり、他のメンバーに押してもらったりしながらステージ中を駆け巡る。6人のエネルギッシュなパフォーマンスが、みるみる内に会場全体を熱く染め上げた序盤となった。

　メンバーたちによる自己紹介、安藤の車椅子を押してサポートする仮面姿の麗人、通称“しもべ”も紹介された最初のインターバル。そして、「テーマはハリウッドですよ。みなさんを映画の世界へお連れしましょう！」という秋本の言葉を合図に「It’s New 世界」へ突入。プロジェクションマッピングが投影され、雄々しい響きのサウンドに包まれるステージ上で歌う6人が、まるでハリウッドの大作映画の登場人物たちのように見えた。続いて、事前に公式動画サイトで“ミッション”として告知されていたサビの大合唱「♪1・2・3 ダー！」の練習を経て、大黒のソロ曲「ら・ら・ら・アイドル」。会場中が彼女のイメージカラーである紫色のペンライトで染まる様が壮観。その光を浴びながら、彼女は心底嬉しそうな表情で歌っていた。

　メンバー全員で歌った「サマラバ」の後、「今、私がここを乗っ取りました！　ピンクのライトを多めに使ってください。そしていい声にしてください！」、照明と音響のスタッフにお願いをして主役に名乗りを上げた安藤。坂本と伊藤が不満げな声を漏らしながらもスタートしたのは、この3人によるユニット曲「私がセンター」。しかし、センターを務めるつもりだったはずの安藤は、“しもべ”に車椅子を押されつつもピンスポットの光の中に入れず、あたふたと右往左往。声に奇妙なエフェクトもかかってしまった。そして、大量の真っ白なスモークに包まれてしまい、あっけなく終了……というユーモラスな演出が明るい笑いを誘い、秋本のソロ曲「おっとりガールの憂鬱」へ。タイトル通りのおっとりとしたムードのサウンドと歌声が観客を和ませていた。

　ヘッドフォンを着用し、DJブースと共にステージに華々しく登場した坂本。DJプレイによる「DJ-HARU MIX」で観客を煽り、「幕張メッセを1つにしましょう！」と呼びかけた彼女は、途中から合流した5人のメンバーたちと一緒になって振り付けをレクチャー。そして勢いよく雪崩れ込んだ「でらディスコ」の盛り上がりはものすごかった。ミラーボールが回転しながら光の粒子をキラキラと放ち、たくさんの人々が夢中になって踊る様は、まるで巨大なディスコのよう。愛知県・蒲郡ラグーナビーチで8月28日に行われることが決定した恒例の夏のワンマンライブ『しゃちサマ』の告知も途中で飛び出し、観客は大喜びしながら踊りまくっていた。

　出囃子を経て幕開けた後半戦。レーザー光線が飛び交う中、花道で円陣を組んだ6人の姿が凛々しく照らし出され、「OEOEO」がスタート。アッパーなサウンド、全力で歌い踊る彼女たちのパワーに巻き込まれ、客席の誰も彼もがいても立ってもいられなくなっている。続いて「天才バカボン」や「Twilight」、咲良のソロ曲「ベイビーミソカツ」も披露され、片時もステージから目を離せない。そして、その直後からの盛り上がりは一際すごかった。「いいくらし」「首都移転計画」「colors」「アイドンケア」「ザ・スターダストボウリング」「トリプルセブン」、強力なナンバーの数々がノンストップで連発されていく。メンバーはもちろん客席で踊る人々もすっかり汗だく。「抱きしめてアンセム」を歌い終わり、ようやくインターバルを迎えたかに見えたが……突然また鳴り響いたイントロ！　メンバーたちはびっくりした表情を浮かべていたが、すぐに必死になって歌い始める。事前に何も知らされていなかったらしい。力を振り絞って2回目の「抱きしめてアンセム」を披露する彼女たちのがむしゃらなテンションに刺激され、さらには咲良がスタンド席の通路に飛び込んで歌いだすという予想外の出来事も起こり、観客は大興奮していた。

　「なにこれ?」、2回目の「抱きしめてアンセム」を歌い終えてからしばらくの間、ゼエゼエと息を切らしながらざわついていたメンバーたちであったが、ライブの感想を1人ずつ語り始めた。安藤は車椅子での出演を詫びつつ、「この1ヶ月、ほんとに悔しくて。初めて本気でステージに立ちたくないと思いました。でも、今日、楽しくて。今日1日でゆずはすごく強くなれたんです。明日もやったら最強になってると思います！」と、気持ちを伝えて喝采を浴びていた。また、秋本は今日のライブのサブタイトル『おっとりガールの逆襲』について触れて、「何か逆襲をしたいと思ったので、柚姫と菜緒のソロの間、ステージ裏でアイスを食べました。『鯱詣』でアイス、食べられなかったから（※今年1月に行われた『鯱詣2015』内で他のメンバーたちの願いが叶えられていった中、ライブ中にアイスを食べたいという秋本の願いは実現しなかった）、これが逆襲ってことでいいでしょうか？」と語った。

　ラストを飾ったのは「大好きっ！」。メンバーそれぞれの名前を盛り込み、「♪○○○が大好きっ！」と観客が歌いだした終盤に目を丸くしていた6人。彼女たちには内緒で事前にLINEなどを通じてアナウンスされていたサプライズ企画は見事に成功し、大合唱はやがて「♪しゃちほこが大好きっ！」となってエンディングを迎えた。「みんながしゃちほこが大好きだと分かったからそれで満足。おなかいっぱいです」と秋本が顔をほころばせ、「チームしゃちほこでした！」とメンバー全員が挨拶。名残り惜しそうに会場中の人々に何度もお辞儀をした彼女たちは、「バイバイ。また明日。ありがとうございました！」と言ってステージを後にしたが、最後まで残っていた大黒。彼女と観客が一緒になって叫んだ「1・2・3ダー！」という力強い掛け声と共に、この日のライブは締めくくられた。

【取材・文：田中 大】