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岡村靖幸、全11公演の全国ツアー「This is my life」。Zepp Tokyo公演をレポ

岡村靖幸 | 2015.06.12

 約1年ぶりに観た岡村靖幸は、大きくパワーアップしていた。
開演を告げるSEは、低音が超効いていて、そこらのロックバンドもハウス系アーティストも顔負け。SEをキッカケに巻き起こったオーディエンスの歓声もパワフルで、Zeppの床が“底鳴り”する。凄いパワーだ。
 ステージを覆っている真っ白なカーテンに岡村のシルエットが浮かんで、「新時代思想」のラップのようなボーカルが始まる。曲の終わり近くなってようやくカーテンが開くと、それまで溜めていた熱をオーディエンスが一気に解放する。黒いフォーマルスーツに身を包んだ岡村が、ちょっと動くだけで「キャー!」と悲鳴のような声が上がる。そこに岡村がぶち込んだのは、「どぉなっちゃってんだよ」だった。
 リズムとボーカルのみのストイックなアレンジが、今、かえってセクシーだ。観客は「ファッション、ファッション」などの“合いの手”の部分で歌に参加し、サビの ♪どぉなっちゃってんだよ で岡村とシンクロする。そのシンクロのスケールは、シンガロングなんて言葉では表せないほどデカかった。

 岡村の歌のパワーの源は、あくまで“口語”のリズムにある。日本語のポップスの歴史を紐解けば、その第1歩は「からたちの花」にある。北原白秋の歌詞に対して、山田耕筰が曲を付けた。そのポリシーは、“日本語の抑揚に沿ったメロディ作り”だった。それは大成功を収め、白秋&耕筰の両巨匠の代表作になったわけだ。だが、岡村はひたすら口語の日本語=しゃべり言葉のリズムに忠実な歌作りを行なって、80年代J-POPに革命を起こした。その代表作がこの「どぉなっちゃってんだよ」なのだ。特にオーディエンスの歌を聴くと、この歌が本当に日常の日本語のリズムを完璧に活かしていることに気付く。それは“歌”というより、“セリフ”に近い。それも飛び切り素敵な“セリフ”だ。だからオーディエンスは思わず歌ってしまう、一緒に叫んでしまう。それが、岡村だ。

 「どぉなっちゃってんだよ」が終わって、岡村はすぐに話し出した。このMCも歌の延長線上にあって、リズムが気持ちいい。
「人生でいちばん大事なものは何? お金? 恋愛? 勉強? エッチ? 僕にはまだわからない。わからないけど、君とのデートがいちばん大事だって、わかったよ……This is my life!」。このタイミングで、ツアー・タイトルの“This is my life”という言葉を聴いたとき、鳥肌が立った。自分のやりたいこと、やるべきことを、こうと決めた男は強い。そう、みんなで人生のいちばん大事なことをリズムに乗って叫ぶことが、岡村の“This is my life”なのだ。
 べースがエグイほどムードを盛り上げるソウルバラード「泣いちゃいそうだよ」や、自分の嗜好に素直に生きようと歌う「カルアミルク」で、岡村が完全にペースを握る。
 宇多田ヒカルの「Automatic」のカバーなどを挟んで、ノンストップでライブは進む。「19(nineteen)」からメドレーで歌ったU2のカバー「終わりなき旅」がよかった。「すごくいい曲なので、みんなに歌って欲しいから、前回のツアーからやってます。でも、みんなあんまり知らないみたい。あんなにヒットしたのに」と岡村は終演後の楽屋で話してくれた。「19(nineteen)」の前年に発表されたこのアイルランドの偉大なバンド“U2”のビッグヒットをソウルフルに歌う岡村に、やはりアイルランドの英雄歌手ヴァン・モリソンの姿がダブったのは、偶然ではないだろう。

 アンコールは2回。どちらも本編と同じくらい力が入っている。それは岡村の“ソウルショーのスタイルから編み出したライブ”の定番だ。オーディエンスもそれをよくわかっていて、楽しみ尽くす。
「Tokyo Baby、会いたかったぜ。彼氏はいるのかい? 君の彼氏がどんな仕事してても、うらやましくないぜ。だってオレは、こんなにたくさんの人とデートしてるんだぜ。NPO? IT? ボランティア? オレはそれどころじゃないぜ。自分を救うこともできないぜ」。
 岡村はゴスペルを仕切るプリーチャーのように、オーディエンスに愛を説いていた。その熱は、ラストの「Out of Blue」で弾いたギターの弦を切るほどだった。
“自分を救うこともできない男・岡村靖幸”は、まだまだその魅力の底を見せない。

【取材・文:平山雄一】
【撮影:三浦憲治】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 岡村靖幸

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リリース情報

東京音頭 / 木津茂里×岡村靖幸

東京音頭 / 木津茂里×岡村靖幸

2015年07月08日

V4 Record

1.東京音頭
2.東京音頭(ノン・ボーカル・バージョン)

セットリスト

LIVE TOUR 2015「This is my life」
2015.5.17@Zepp Tokyo

  1. 新時代思想
  2. どぉなっちゃってんだよ
  3. 泣いちゃいそうだよ
  4. カルアミルク
  5. Dog Days~ラブタンバリン
  6. Automatic(カバー)
  7. 愛はおしゃれじゃない
  8. ビバナミダ
  9. 彼氏になって優しくなって
  10. イケナイコトカイ
  11. いじわる
  12. 19(nineteen)~終わりなき旅(カバー)
  13. あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう
  14. だいすき
ENCORE 1
  1. 慕情(カバー)~Lovin’ you(カバー)
  2. スキャンティブルース
  3. Come Baby 2015 ver.
  4. うちあわせ
  5. Super Girl
ENCORE 2
  1. ちぎれた夜
  2. 真夜中のサイクリング
  3. Out of Blue

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