デビュー時から“ライヴバンド”であることを公言してきたVAMPS。以降、2011年を除いては、毎年大規模なライヴツアーを行ってきたが、そんな中でも、この約半年は、最もライヴに集中した時期だったのではなかろうか。彼らの半年を列記してみよう。全国のZeppで複数日ライヴを行う籠城型ツアー、自身主宰のフェス、2009年以来のアリーナツアー、前述したフェスでも共演した“SIXX:A.M.”との対バンツアーも含む全米ツアーと、ワールドワイドなツアーを展開してきた。 “己のライヴスタイル”を貫き、新たな完成形を作るために、ラウドでハードなサウンドで勝負した約半年。この濃密な半年の集大成が、5月30日（土）＆31日（日）にさいたまスーパーアリーナ2DAYSを完売させ開催された「VAMPS LIVE 2015 "BLOODSUCKERS" -FINAL- 」だった。

　最新アルバム『BLOODSUCKERS』のオープニング曲「REINCARNATION」とともに、ステージ後方の巨大なビジョンに映像が流れていく。“創世”という言葉が脳裏に浮かぶ、ストーリー性ある映像に、これから作られていく空間への期待が募る。VAMPSのライヴメンバーが1人ずつステージに姿を表す。大歓声。ミラーボールが回る。映像とリンクするミラーボールの光の破片。1曲目を飾ったのは「ZERO」。スケール感あるミディアムチューンだ。HYDEソロ時代の「UNEXPECTED」に通ずるトランシーな1曲だが、圧倒的に解放感が違うように思う。この日の「ZERO」は、闇の向こうから朝がやってくるように、K.A.Zのロマンチックなフレーズと、力強いHYDEのボーカルが、さいたまスーパーアリーナを明るく照らしているようだった。

　オープニングから一転、ドライブするロックンロール「AHEAD」で、いきなりギアを入れるVAMPS。ラウドなサウンドが、いきなり猛スピードで、スーパーアリーナを走り出す。観客も負けていない。最初の一音からロックオンされたように、鮮やかにサウンドに乗っていく。見れば、スタンディングのアリーナには、ステージ真横にもエリアが設けられていたが、そのエリアも人でぎっしりだ。スタンドの観客も、激しくヘッドバンキングを繰り返す。HYDEがライヴのMCでずっと言い続けてきた「悔いを残すな！」という言葉が、観客の細胞に浸透している。さいたまスーパーアリーナ公演は、VAMPSライヴの集大成と前述したが、それは、観客にとっても同じだったようだ。ステージと観客のテンションが、一塊になって、空気を突き上げ、無機質な空間を蠢く生命体に変えていった。

　4曲目が終わったところでHYDEの挨拶。
「首洗って来た？　BLOODSUCKERS！　今日はいっぱい可愛がってやるから悪い子になれ！」という言葉から「REPLAY」。続いて披露された「GET AWAY」では、ステージ床とステージバックに、魔法陣の模様が躍った。

　このアリーナツアーのセットは、2009年のアリーナツアーに比べ、シンプルなセットだったと思う。それは、ここ数年、VAMPSライヴでの演出のメインが、作り込んだセットではなく、ライティングにシフトしているからというのもあるだろう。ステージ上を彩る照明はもちろん、会場全体を使った電飾など、じつにバリエーション豊かなライティングの演出は、昨今のVAMPSライヴの新たな定番になりつつある。この日は、ステージ床をLEDにし、照明も映像も映し出せるようにしていた。セットそのものがライト、スクリーンと想像してもらえばわかりやすいだろう。そう言えるくらい、ふんだんに使っていた。アリーナや、スタンド席前方からは見えなかっただろう、このステージ床を使った演出は、スタンド席後方の観客だけのスペシャルだ。

　この演出方法の真骨頂が発揮されたのは中盤である。4曲に渡り、ライティングとスクリーンを使って、曲に合わせたストーリーが展開された様は、瞬きするのももったいないくらい、濃密な時間だった。「DAMNED」と「EVIL」では、真っ赤な照明の中で、ムービングライトを断続的に明滅させ、落雷から燃え盛る教会の陥落をイメージさせた。ロマンチックなバラード「VAMPIRE’S LOVE」では、無垢な少女の死をオリジナル映像で伝え、その後少女が眠るバラが敷き詰められた棺をバックに大きく映し出して見せた。炎の赤に沈んだステージと、真紅の薔薇をリンクさせ、ストーリーをリミックスした手法は、本当にお見事だった。続く「GHOST」で、それまでの赤から一転してブルーを基調にしたものに。ステージバックの映像は、海の中、水面ギリギリ。深海から水面へ登っていく無数の細かい物体。気泡か、それとも生命のミクロ、微生物か。VAMPSの楽曲と映像、聴覚と視覚がシンクロしていく。VAMPSが今、我々に伝えようとしているのは、死と再生か。つまり “REINCARNATION”なのだろう。最新アルバム『BLOODSUCKERS』は、ストーリー性のある作品だった。それが、楽曲タイトルや曲の並びにも顕著に出ていたと思う。VAMPSが、ここまでストーリー性のある作品を作ったのは、初めてだったと思う。たぶん、このアルバムを作る段階から、VAMPSはライヴでのネクストステージを視野に入れていたのだ。今回の籠城ツアーでも、その兆しは感じられたが、より視覚効果を効果的に使えるアリーナツアーで、彼らからのメッセージが明確になった。

　「GHOST」が終わった後、HYDEがマイクをとった。話出す……と思ったら、いきなりマイク越しに“チュパ！”とKISSの音を連発。悲鳴に似た歓声があがった。
「スーパーアリーナへようこそ。ただいま~」
　客席から“おかえり”の声。HYDEが続ける。
「（海外を）周遊してきました。鮭みたいなもんで、今、すごく脂が乗って食べごろです（笑）」
　この後、5月上旬に終わったアメリカツアーを前提にしてこう続けた。
「久しぶりに、いっぱいで嬉しい。すっげぇホームな感じ。『BLOODSUCKERS』ってアルバムは、ライヴに来るための招待状。ここにきて、みんなが揃ってやっとアルバムが完成する。一緒に作り上げようぜ！　一緒に行こうぜ！　急に大きい声出したらお腹減っちゃった！　腹減ったー！」
　絶叫するHYDEが、スタンドマイクを抱えて、さらに大きな声でこう叫んだ。
「レッツゴー、ハンティーング！」
　VAMPSライヴの超キラーチューンで、観客が跳ねる。途中HYDEが繰り返し「BLOODSUCKERS！　スクリーム！」とシャウトし観客を煽る。K.A.Zは、右手を大きく回し“もっと来い！”とジェスチャーし、スタンド席を真っ直ぐ指差す。「ANGEL TRIP」では、スクリーンに映ったHYDEが、カメラ目線で決め台詞。その後の“Chu”の仕草に、会場全体が狂喜乱舞。しかしこのファイナル２DAYSでのHYDEは、投げKISSの大盤振る舞いだったな。ファイナルのお祭り気分と、ホーム＝日本のファンへの感謝の気持ちが、素直に表れたアクションだと思うが、キュートすぎるし、吠えるように歌う顔とのギャップが激しすぎますね。

　「Are you all?　 Are you all?　BLOODSUCKERS！」というHYDEのシャウトから、「BLOODSUCKERS」へ。アルバムのタイトルにもなっているこの曲は、構成がとてもシンプルな曲だ。前述した「HUNTING」に通ずるが、パンキッシュでポップで、歌詞も簡単。破壊力もある。このパターンは、ライヴバンドVAMPSの“ライヴで観客と盛り上がれる曲”というマインドの最高峰だし、重ねてきたライヴでそれを証明してきた。このマインドを受け継ぎ、今のVAMPSモードに進化させたのが「BLOODSUCKERS」という1曲だと私は思う。MCでHYDEは「アルバムはライヴで完成する」と言ったが、それをアリーナ全体、すべての要素を使って、最もわかりやすく体現していたのが、「BLOODSUCKERS」が演奏された瞬間だった。「BLOODSUCKERS」という楽曲は、この約半年のライヴを経て、こちらの想像をはるかに超えた怪物に進化していた。楽曲そのものが、エネルギーの塊のようだった。

　HYDEとK.A.Zが小型のバギーに乗って登場し、アリーナ後方の観客や、スタンド席の観客を沸かせた「THE JOLLY ROGER」や、K.A.Zの長めのMC、観客のスマホのライトを演出に使った「INSIDE MYSELF」、さらにはスマホでの写真撮影や動画撮影がOKだったことも含め、観客が喜ぶ演出が本当にたくさんあった。映像もライティングも楽しかったし、心底、見事だと思った。過去のVAMPSのライヴの中でも、曲を知らない人でも楽しめるという意味でのエンターテイメント性は、最も高かったと思う。

　観客との関係性の構築からスタートした、VAMPSのライヴヒストリー。デビューして初めてのツアーでは、HYDEはいつも「もっと自由に楽しんで」と言っていた。それが、ライヴという空間と時間を共有する中、蜜月を経て、今、まさに次のステージへ向かっている。
　単独ツアーでは、過去最大規模のキャパシティのアリーナをソールドアウトさせた結果がその証拠だ。

　このファイナルで発表になった、恒例の夏の野外ライヴ。「VAMPS LIVE 2015 BEAST PARTY」の場所は、幕張海浜公園内 BEACH STAGE。
　ここでも、野外ライヴとして過去最大規模のキャパシティを有するステージが、VAMPSと観客を待っている。

【取材・文：伊藤亜希】
【撮影：岡田貴之 / 今元秀明 / 田中和子】