幕張メッセ イベントホール、2日間でおよそ1万4千人を迎え、ワンマンとしてはゲスの極み乙女。史上最大規模で開催された「ゲス乙女集会 Vol.4 ~幕張編~」。その2日目のステージで、ゲスの極み乙女。は、客席との“距離の壁”を微塵も感じさせない圧巻のパフォーマンスで、見事なアリーナデビューを飾った。

　「ゲス乙女集会」は、ゲスの極み乙女。が2013年に下北沢シェルターで始めた対バン形式の企画ライブ。過去には250人規模の小さなライブハウスでも行なってきたが、今回のワンマンは規模もスケール格段に大きい。スタンディング形式のアリーナエリアも、ステージを見下ろすスタンド席も見事にソールドアウト。広いステージの左右に設置されたスクリーンにオープニング映像が流れると、いよいよライブがスタートした。

　いきなり1曲目から「キラーボール」だ。ここ最近出演しているイベントでは、ラストナンバーとして披露されることも多いこの曲で、フロアは初っ端から爆発的な盛り上がりを見せる。スクリーンにはショパンの「幻想即興曲」を真剣な表情で弾くちゃんMARI（Key）が映り、その後ろでメンバーがお約束のEXILE 「Choo Choo Train」ダンス。そしてギターを弾く川谷絵音（Vo・G）の手元がスクリーンに大映しになると、高い熱量のまま、「デジタルモグラ」へと突入した。今回のライブで初めて導入されたスクリーンも、バンドとの相性がいい。緻密なゲス乙女サウンドを、4人がどんな表情で奏でるのか、そのディティールがリアルに映し出され、彼らのライブに新たな発見をもたらしてくれる。

　「この場所でやってみたかったことがある」と、ちゃんMARIが「アリーナの人！コポゥ！」「スタンドの人！コポゥ！」と、広い会場ならではコール＆レスポンスを繰り広げると、「猟奇的なキスを私にして」、そして「私以外私じゃないの」と、シングル曲が立て続けに披露された。デビュー1年でこれほど多くのヒット曲を持てるバンドもそうはいない。サディスティックなほな・いこか（Dr）のドラムソロで湧いた「jajaumasan」に続き、『ロマンスがありあまる』のカップリング曲「Iink」では、真っ赤な照明に照らされ、超早口のラップをのせたプログレッシブなセッションが展開。アリーナ会場に異彩を放った。

　演奏を終えて、「この曲（「Ink」）をカラオケで歌ってる人がいたら引くよね（笑）」と、語り出した絵音。そこに、いこかが「長いっ！」と一喝して、今度は最新シングル「ロマンスがありあまる」へと続く。アップテンポな曲調ながら、どこか憂いを湛えた楽曲の微妙なニュアンスまで表現するボーカルは、絵音の表現者としての大きな成長も感じた。さらに「ルミリー」では温かいタッチで描かれたアニメーション映像と共に披露し、センチメンタルなムードが漂う「ハツミ」へ。穏やかな空気が会場へと沁み渡っていく。

　休日課長（B）が、ほな・いこかに言い寄って、「今夜一緒にお茶しませんか？」と誘いをかけたのは終盤のMC。ぐいぐい近づいてくる課長に、「誰か助けてー！」といこかが助けを求めると、ぱいぱいでか美が登場した。すると、「これが三角関係だー！」という課長の声を合図に、でか美のダンスと共に繰り広げられた「ゲスな三角関係」。そして、うさぎ姿のダンサーが登場した「餅ガール」からは、怒涛のクライマックスへ向かう。「ドレスを脱げ」では、絵音がステージの中央に立ち、堂々たるギターソロを披露。縦横無尽に乱射する光のなか、ちゃんMARIは後ろ手に鍵盤を演奏したり、ショルキーで前に出たりと、いつになくアグレッシヴなプレイを見せ、そこに拍車をかけるように、会場に金テープが舞う。ラストナンバーは「アソビ」。言いようのない興奮のなかライブはフィニッシュを迎えた。

　アンコールでは、またも絵音と課長によるトークが続く。それを、いこかが「だから長いてっば!!」で再び一喝すると、「今日は来てくれたみなさん、ありがとうございます！」と絵音が感謝を伝えて、新曲が披露された。休む間もないライブ活動とメディア露出のなか、一体いつの間に制作しているのだと思うが、「ロマンスがありあまる」の歌詞を借りるなら、この、まるで生き急ぐような走り方が、ゲスの極み乙女。なのかもしれない。豊かなコーラスワークにのせて、切なくもドラマチックなナンバーを聴かせると、ラストはゲスの４ヵ条をみんなで叫ぶ「ホワイトワルツ」で締めくくった。

　秋には初のアリーナツアーが決定しているゲスの極み乙女。
　幕張2Daysを完全に掌握した彼らならば、そこでもまた、かつてない興奮を味あわせてくれるだろう。

【取材・文：秦理絵】
【撮影：古渓一道】