前へ

次へ

パスピエ presents「印象D」新木場STUDIO COASTライブレポート

パスピエ | 2015.07.07

 パスピエの自主企画ライブイベント「印象」シリーズ第4弾となる「印象D」。毎回、様々なゲストを招いて開催されてきたが、今回も素晴らしい布陣が揃った。東京公演はレキシとDJ UPPERCUT、大阪公演はBase Ball Bearとtofubeats、名古屋はYOUR SONG IS GOODとPARKGOLF。その初日となった東京・新木場STUDIO COASTの模様をレポートする。

 DJ UPPERCUTによって温まったフロアに鳴り響いた法螺貝の勇ましい音色。「きらきら武士」からスタートしたレキシのステージは、猛烈に楽しいパーティータイムとなった。池田貴史が某二枚目俳優の名を騙って自己紹介した時も、観客の間からノリの良い「フー!」という歓声が上がる。レキシのライブを初めて観る人も結構いたのではないかと思うが、「年貢for you」や「salt & stone」など、強力なナンバーの数々がみるみる内に皆を1つにしていた。そして、ラストに届けられたのは「狩りから稲作へ」。レキシのオリジナルグッズである稲穂がフロア内で田園風景のようにピースフルに揺らぎ、「♪縄文土器 弥生土器~」という明るい大合唱が起こる。パスピエの「最終電車」の歌詞の一部をアレンジした「♪タカユカシキに飛び乗る?」というシュールなアドリブが大爆笑を起こすなど、最後まで目一杯に盛り上がっていた。

 再びDJ UPPERCUTのプレイを挟んで、いよいよパスピエのライブ。まず、ステージ上でスタンバイしたのは成田ハネダ(Key)、三澤勝洸(G)、露崎義邦(B)、やおたくや(Dr)。やおのスティックカウントを合図に演奏が始まった後、大胡田なつき(Vo)が「印象Dへようこそ!」と言ってステージに現れた。スタートした1曲目は「とおりゃんせ」。長い黒髪を揺らしながらステージ上を巡って歌い始めた大胡田が、観客の視線を一斉に集めた。何処か郷愁を誘う和的なメロディ、熱く高鳴るバンドサウンドに刺激され、誰も彼もが夢中になって踊る。パスピエの無敵のアンサンブルが瞬時に構築されたオープニングだった。

 「贅沢ないいわけ」「YES/NO」「S.S」も連発され、圧倒的な盛り上がりへと至った会場内。そして、迎えた最初のインターバル。「レキシ、超楽しかった! 私、普段そんなにゲラゲラ笑わないけど、ゲラゲラ笑っちゃった」、大胡田のMCの後、成田もマイクに向かった。「今日はいろいろ用意してきました。“初めての?”とか好きでしょ?」と観客に呼びかけ、パスピエにとっての初の試みとなるメドレーがスタート。「シネマ」「△」「脳内戦争」「デモクラシークレット」がダイナミックに連なり、観客は大喜びしていた。続いて、「次も初披露の曲です」と大胡田が言い、届けられたのはCORNELIUSのカバー「NEW MUSIC MACHINE」。ドリーミーなサウンドが鳴り響き、フロアは恍惚のムードで包まれる。そんな夢見心地の空間を爽やかに塗り替えたのが「トキノワ」。学校のチャイムをモチーフとしたオープニングのギターフレーズを三澤が放つや否や、熱い歓声で沸いた会場内。強力なビートを連打するやお、ステージ上を激しく動いて観客を煽りつつプレイした三澤と露崎。激しく鍵盤を連打する場面も交えながらスリリングなサウンドを放った成田……ステージ上のメンバーたちは、活き活きとした表情を浮かべながら演奏に没頭していた。大胡田が華麗にくるりと回転してエンディングを迎えた時の爽快感は、何とも言えないものがあった。

 「ほんと楽しい。後ろの方、見える?」上機嫌な大胡田が自由に言葉を発していたインターバルを経て「気象予報士の憂鬱」へ。しっとりとしたメロディ、軽快な躍動感のコントラストを際立たせた展開が楽しい。そして突入した「ワールドエンド」が、実にドラマチックであった。壮大に高鳴るサウンドの中心に立って歌い、時折、身体を揺らして踊る大胡田の姿が神々しい。「続けて行くよ! 声出していけんの?」、彼女が煽って雪崩れ込んだ「チャイナタウン」は、激しいコールとタテノリのダンスが巻き起こっていた。

 大胡田が身体を休めつつ汗を拭いた終盤でのMCタイム。「そんなに前髪がピトピトしてるの初めてだね(笑)」、いつも以上に汗だくの彼女を見て成田がびっくりしていた。そして、「みんなと一緒にライブを作れて嬉しいです。最後に踊っていってくれる?」、大胡田が観客に問いかけ、本編ラストに届けられたのは「MATATABISTEP」。強力な音圧を放つシンセサイザー、熱いビートが唸りを上げ、「♪パパパリラ」という歌声が起こるフロアは、キラキラした興奮に包まれながら揺らいだ。

 アンコールを求める声に応え、まずステージに戻ってきたのは男性陣。全員がレキシのオリジナルグッズの袴Tシャツを着ている。紋付袴をあしらったプリントが可愛い。続いて、色違いの町娘Tシャツを着て、稲穂も手にして大胡田が現れた。スタートしたのは、レキシのカバー「きらきら武士」。スタイリッシュなピアノの伴奏で「♪あなたは武士~」とムーディーに歌ったところ、「そんなにオシャレに歌ってもらうと困る。もっとゲスい感じで」と言いながらレキシの池田が登場。そして歌い始めた彼は、「♪パスピエ好き~」というアドリブも交えつつファンキーな声を響かせた。大胡田も共に歌い、観客も掲げた稲穂や腕を穏やかに揺らしながら大合唱。成田と池田が並んで鍵盤をプレイする場面も飛び出すなど、見どころ満載のセッションが実現していた。

 池田が喝采を浴びながらステージを去り、再びパスピエの5人のみになったステージ上。最後に披露されたのは「最終電車」だった。成田が奏でるあの瑞々しいイントロは、何度聴いても胸に沁みる。メンバー全員が一体となって響かせるサウンドが、会場の隅々までを温かく満たしていった。力強い手拍子を誘った鍵盤ソロを経て突入した後半は、まさしく至福のひと時。演奏が幕切れた瞬間、観客の間から起こった大きな歓声。その響きに包まれながら手を振ったメンバーたちは、とても満足そうであった。

 ライブ中にもアナウンスされていたが、彼らは11月に全国9都市を巡るツアーを行う。そして、12月22日は初の日本武道館単独公演。最近、ますます魅力を増している彼らは、あの大舞台にふさわしい演奏を届けてくれるだろう。この日、「印象D」で目の当たりにしたパスピエは本当に頼もしく、カッコよかった。年末が楽しみだ。

【取材・文:田中 大】
【撮影:鳥居洋介】

tag一覧 ライブ イベント パスピエ レキシ

関連記事

リリース情報

裏の裏(初回限定盤)[2CD]

裏の裏(初回限定盤)[2CD]

2015年07月29日

ワーナーミュージックジャパン

DISC-1(CD)
M1. 裏の裏
M2. かざぐるま
M3. スパイ対スパイ

DISC-2(CD)
※初回限定盤のみ付属のボーナスディスク
パスピエ自主企画「印象D」のライブ音源を収録予定(詳細はHP等にて後日発表します)

セットリスト

パスピエ presents「印象D」 東京公演
2015.6.24@新木場STUDIO COAST

  1. とおりゃんせ
  2. 贅沢ないいわけ
  3. YES/NO
  4. S.S
  5. シネマ
  6. 脳内戦争
  7. デモクラシークレット
  8. NEW MUSIC MACHINE
  9. トキノワ
  10. 気象予報士の憂鬱
  11. ワールドエンド
  12. チャイナタウン
  13. MATATABISTEP
アンコール
  1. きらきら武士(※レキシ カバー曲)
  2. 最終電車

お知らせ

■ライブ情報

パスピエ TOUR 2015
2015/11/04(水)仙台Rensa
2015/11/06(金)新潟LOTS
2015/11/11(水)高松オリーブホール
2015/11/13(金)広島CLUB QUATTRO
2015/11/14(土)福岡DRUM LOGOS
2015/11/16(月)鹿児島CAPARVO HALL
2015/11/21(土)大阪Zepp Namba(OSAKA)
2015/11/22(日)名古屋Zepp Nagoya
2015/11/26(木)札幌PENNY LANE 24

パスピエ 日本武道館単独公演
2015/12/22東京・日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。


■オフィシャルHP チケット先行受付中!
受付期間:
7月6日(月)21:00~07月12日(日)23:59
http://passepied.info/news/p/tour2015


■会員限定サイト『P.S.P.E』
『P.S.P.E』は、月額 400円(税抜)でP.S.P.E会員限定のコンテンツがご利用いただけるオフィシャルファンサイトです。
同じ登録メールアドレスで、PC・スマートフォンの両方でサイトをご利用いただけます。
http://passepied.info/feature/p/about

トップに戻る