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Czecho No Republic、初の日比谷野音で鳴らした幸せ色のポップミュージック

Czecho No Republic | 2015.08.03

 快晴!を通り越して、猛暑日だった。東京はここ10日ほど雨天続きだったのに、この日はまるでCzecho No Republicの初日比谷ワンマンを祝うような文句なしのロケーション。こういうバンドを、俗に“持っている”と言うのだ。

 ボーカルの武井優心(Vo・B)はバンド結成当時、初期メンバーでもある山崎正太郎(Dr)と、「野外が似合うバンドになりたい」と、話していたという。チェコと野外。もちろん夏フェスなどでそれを目にすることはあるし、その相性の良さは折り紙付きだが、とりわけワンマン、しかも野音という舞台には、やはり特別な感慨があるのだろう。「集まってくれてありがとう!」と、いつになく真っ直ぐに感謝の言葉を口にする武井の姿にも、その想いが表れていたと思う。

 ジャングルをモチーフにした巨大なフラッグが掲げられたステージに、17時少し過ぎ、八木類(G・Key)、山崎、タカハシマイ(Key・Vo)、砂川一黄(G)、武井が順番に登場した。初っ端からいきなり賑やかに会場を彩る「ネバーランド」と「Festival」。7人が奏でる幸せ色のポップミュージックを全身に浴びれば、ここに来て良かったと心から思う。それもまだ序の口とばかりに、「最後まで楽しんでいってください!」と、武井の声が弾んだ。

 この日のステージにはひな壇が組まれて、そこにドラムセットや照明・機材などが並べられていた。まだ陽の高い野音。ライブの前半は懐かしいナンバーが数多く披露された。タカハシのグロッケンが愛らしく鳴る「Call Her」、八木がメインボーカルを歌う「絵本の庭」など、それはチェコが一気に知名度をあげた“「ダイナソー」以前”とも言うべき、バンドの原点となる曲たち。間もなく結成5年を迎えるチェコがどんなふうに時間を刻んできたのかを感じられるナンバーだった。鋭角的なシンセサイザーが印象的な「トリッパー」、賑やかな音色が絡み合う八木曲「Nowhere Boy」など、そのドリーミーでミニマルな世界観は、いまのチェコとは少し違うが、いまに繋がる礎がたしかにある。

 スペシャルな野音の舞台だけに、この日はメンバーの家族もステージを見守っていたという。「なんだかお母さん来てるとやりづらいな(笑)」(武井)、「授業参加みたい」(砂川)と、ちょっと照れくさそうなメンバー。そして武井が初めて野音で見たライブが、ザ・ハイロウズだったことから、その代表曲「日曜日よりの使者」をカバーで披露した。いわゆるUSインディーポップの影響などと言われるチェコのサウンドだが、そのメインソングライターである武井の根っこには、反骨精神が剥き出しの90年代日本のパンク/ロックの匂いも受け継がれている。Czecho No Republicというバンドのふわりとした佇まいから滲み出る、ギラついた何かの正体を再発見できる意義深いカバーだった。

 そして、続く「ABCD Song」は、客席の真ん中に用意したステージへとメンバーが移動して、アコースティックバージョンで披露。メンバーとの距離の近さに、目を潤ませるお客さんもいる。その場所でワンマン恒例(!?)の縁のミュージシャンによるお祝いコメントが流れると、10分間の休憩タイムを挟んだ。野音には少しずつ涼しい風が吹き始める。

 少し薄暗くなったステージに、メンバー全員が迷彩柄のシャツに黒の半ズボンという、まるで探検家のような衣装で登場した。ここからはホーン隊を交えたスペシャルな演奏が繰り広げられていく。軽快に響くイントロで高らかに幕を開けた「Amazing Parade」、段階的な転調にぶわっと気持ちを持ち上げられる「幽霊船」、タカハシの愛くるしい歌声が軽やかに響く「For You」と、底抜けに明るくて、自由で、色鮮やかなチェコのサウンドが会場を前半以上の熱量で踊らせていく。山崎のドラムとホーン隊のセッションがかっこよかった「RUN RUN TIKI BANG BANG」から、野音という会場でよりダイナミックに聴かせた圧巻の「ダイナソー」へ。すっかり陽が落ちたころ、いよいよラストの2曲だ。光溢れるステージから届けた「MUSIC」と「NO WAY」の清々しい開放感が、そこに集まる全ての人を歓喜のパレードへと巻き込んでいく。まさにチェコは“外が似合うバンド”なのだ。

 アンコールでは、「スーパー気持ち良い!」と、砂川がいちばん最初にステージに戻り、興奮気味に声をあげると、ここで新曲を披露。作詞・作曲を手がける武井が“花火”をイメージして書いたというナンバーは、タカハシと八木による2台のシンセサイザーが煌びやかに駆け抜ける痛快なダンスロックだ。既出曲で言うなら「Oh Yeah!!!!!!!」に近いが、より実験的。そこに漂うメロディの一瞬の切なさが、とてもチェコらしくてキュンときた。

 さらに「感謝しかない!」と山崎が、この日いちばんの名言を口にしたダブルアンコール。シンプルな演奏で届けた「ショートバケージョン」で、ジョン・レノンを引き合いに出すその歌のメッセージをより際立たせると、全24曲におよぶ野音の夜に終わりを告げた。

 昼から夜へ、暮れゆく野音のロケーションを最大限に生かした、二部構成によるチェコ初の日比谷野音ライブ。それはバンドの変遷にも触れながら、その魅力を立体的に映し出す、とてもCzecho No Republicらしいライブだった。気が早いが、次もまた見たい!そんなふうに思わせるのは、やはりチェコには野音がよく似合っていたからだ。

【取材・文:秦理絵】
【撮影:山川哲矢】

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■ライブ情報

『Santa Fe』リリース記念 聖なる行進TOUR
2015/09/18(金) 札幌cube garden
2015/09/20(日) 仙台CLUB JUNK BOX
2015/09/21(月) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2015/09/24(木) 高松DIME
2015/09/26(土) 福岡DRUM Be-1
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2015/10/02(金) 大阪なんばhatch
2015/10/03(土) 広島CLUB QUATTRO
2015/10/09(金) 金沢AZ
2015/10/10(土) 名古屋BOTTOM LINE

『Santa Fe』リリース記念 聖なる行進TOUR スーパーファイナル ×一夜限りの結成5周年スペシャル
2015/10/17(土)東京Zepp DiverCity

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