8月28日、miwaが、鎌倉・由比ヶ浜にて開催された「音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2015」に出演した。今年で11年目を迎える「音霊 OTODAMA SEA STUDIO」。その舞台となる海の家のライブハウス「OTODAMA SEA STUDIO」が逗子海岸にあったころから、miwaはデビュー以来このイベントに毎年出演している常連アーティストだ。この日のステージには、miwaと共にゴスペラーズの出演もアナウンスされており、開演前から会場はファンの熱気に包まれていた。

　17:00。シークレットアクトとして、OTODAMAの主催者である、KUREIがステージに登場。会場も大きな歓声で迎える。軽やかなバンド編成で「LIFE」のほか、ソロナンバーを披露。会場が完全に温まった後、miwaへ繋ぐ。手拍子に迎えられてステージに登場したmiwa。それだけで、会場にさっと涼しげな風が吹く、そんな爽やかな存在感が彼女らしい。小さな身体にアコースティックギターをスタンバイをすると、弾ける夏ソング「ミラクル」からライブがスタートした。この日の編成は、Nona（Per）、オバタコウジ（G）、eji（Key）といったお馴染みのメンバー。海辺のステージによく似合うアコースティックなサウンドで披露した「441」では、会場が一体となって《441》の声を上げていた。

　MCでは、「わたしは神奈川県・葉山の出身なので、このイベントは毎年地元だと思ってステージに立っております。今年も出演することができてうれしいです！」と感謝の気持ちを伝えたmiwa。8月下旬ながら、秋の気配を感じるほど気温の下がったこの日の由比ヶ浜に向けて、「今日はOTODAMAライブ、miwa史上いちばん涼しいです（笑）！でも涼しいからって、ライブが熱くならないわけないでしょ！？夏の思い出をみなさんと一緒に作って帰りたいです」と、語りかけた。そして、「OTODAMAに育ててもらった曲です」と紹介したバラード曲「サヨナラ」から、切なくて寂しい恋の歌「片思い」と2曲続けて歌い上げると、満員のお客さんもそれをじっと聴き入っていた。

　メンバー紹介を挟んで、「ここからは盛り上がっていきたいと思います！」と元気いっぱいにライブ終盤への号令をかけたmiwa。疾走感のあるサウンドにのせて、《夢のままでは終わらせない　約束するよ》と力強く自らの信念を歌う上昇志向のナンバー「Faith」から、ハンドマイクになり、タオルを回したり、ジャンプしたり、ステージを狭しと移動しながら歌った「ストレスフリー」へ。くるくると表情を変えながらステージが進むなかで、圧巻だったのは、miwaのしなやかな表現力に耳を奪われた「ヒカリヘ」だった。ダンサブルなオリジナル音とはガラリと変えたこの日のアレンジは、どこか儚さも湛えながら、前に進もうという強い心を、その凛とした歌声で伝えてくれた。

「めっちゃ暑いじゃん！汗ダクだよー」と、“miwa史上いちばん涼しい”はずのOTODAMAは、いつしか例年に負けないくらい熱い場所に。「男子ー！」「女子ー！」と、スピーディなコール＆レスポンスを経て、ラストナンバーは「君に出会えたら」。会場の一体感、皆が歌う素敵な空間が出来上がると、「めちゃくちゃ最高です、ありがとう！」と、最後にmiwaはとびきりの笑顔を浮かべていた。

　会場の特性上miwaのライブを至近距離で楽しんだオーディエンスの興奮が冷めやらぬなか、DJセットと5人のアカペラのみというシンプルな編成で登場したのはゴスペラーズ。息の合ったダンスを交えながら、極上のハーモニーで「永遠に」「ひとり」などヒット曲の数々を届けると、鳴りやまないアンコールに応えて、なんとゴスペラーズ、KUREI、miwaの3組が揃ってステージに現れた。披露したのは、キャロル・キング1972年の名曲「You’ve Got a Friend（君の友だち）」。miwaが奏でるアコースティックギターの伴奏にのせて、総勢7人のスペシャルコラボで紡ぎ出された優しい歌声に、お客さんはゆったりと身体を揺らしながら、聴き入っていた。まさに、一夜限りのスペシャルライブ。またひとつ、この場所で忘れられない夏の思い出が刻まれた瞬間だった。

【取材・文：秦理絵】
【撮影：村山 泰紀】