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クリープハイプがキュレーターのライヴイベント幕張で開催。テーマ「Bed in」はダブルミーニング

クリープハイプ | 2015.10.13

 『TOWER RECORDS presents Bowline 2015 curated by クリープハイプ & TOWER RECORDS』が幕張メッセ国際展示場 9~11ホールにて開催された。 “Bowline”は、毎回1組のアーティストがキュレーターとなり、タワーレコードと共同で出演アーティストの選定/会場演出を行うライヴイベント。この日は、クリープハイプがキュレーターを務めた。

 毎回、キュレーターがコンセプトを用い繰り広げられるのがこのイベントの特徴。クリープハイプが掲げたテーマは『Bet in』。ベッドを共にする「Bed in」と、賭けを意味する「Bet」のダブルミーニングだった。このワードからは、今回出演の各アーティストたちが、ベッドを共にするように、より深く交わって欲しいとの想いと、この日、各地から集まってくれたお客さんに"このイベントに賭けて来て良かった、との満足感を得て欲しい"という、そんな気概も感じた。実際、出演したアーティストたちが次から次へと繰り広げる熱演の数々は、イベントが進むほどに、会場中の満足度のレートを引き上げていくと同時に、”このイベントに賭けて良かった!!”という、その歓び度の上昇を感じた。

 Warning Actのgo!go!vanillasによる汗が飛び散る熱演の後、RED STAGEには東京スカパラダイスオーケストラが登場した。一発目の「ルパン三世’78」から会場の盛り上げにかかる彼ら。裏打ちの軽快なリズムと、ドライヴ感や疾走感を交えた彼ら独特のグルーヴが会場中を楽しませ、踊らせていく。「ボーカルとして尾崎世界観をお借りしたので、今日はその恩返しが出来る」(谷中)との思いの込もった言葉を受け、ラスト2曲で尾崎も登場。その彼がフィーチャーされたスカパラの最新シングル「爆音ラブソング/めくれたオレンジ」が2曲とも、作品同様、尾崎の歌声と共に届けられた。

 この日は2ステージ制。同じ会場内に、大型のRED STAGEと中型のYELLOW STAGEが配されていた。その2ステージに、ノンストップで交互にアーティストが次々と登場。場所を変えずとも両ステージとも楽しめるのが嬉しい。
 会場全体を一体感と共有感を伴って、ノせたり、盛り上げたりしていくアーティストが中心の中、唯我独尊の孤高性を魅せていたのがYELLOW STAGEのきのこ帝国。独特のシューゲイザー・サウンドでデイドリームを広げていく。轟音の中に、浮遊感やエモさ、疾走感を交えながら、立て続けに楽曲を披露していく彼ら。目の前を真っ白にさせるぐらいの音壁を作ったり、白昼夢に誘ったりしながらも、しっかりと中心にある歌を伝えていく。また、キュートな歌声で会場を盛り上げてくれたのは、RED STAGEのmiwaであった。ライトハンドまで披露してくれた、疾走感溢れる「Faith」を皮切りに、一体感を誘った「ストレスフリー」、ラストの「君に出会えたから」では、ソカのリズムに会場中のタオルが大旋回。一体感を味あわせてくれた。

 この日は、尾崎世界観のソングライティングのセンスも楽しむことが出来た。YELLOW STAGEに登場した私立恵比寿中学の際には、尾崎が提供した「蛍の光」のスペシャルバージョンが特別にアカペラにて歌われ、尾崎の非凡な才能と幅を他のアーティストを通して楽しませてもらった。

 中盤のRED STAGE。ドラムにあらきゆうこを迎えて登場したフジファブリックは、後半に立て続けにダンサブルなナンバーを用意し、会場をグイグイと惹きつけ、踊らせていく。また、ストレイテナーは、ダイナミズムとスケール感たっぷりに各曲を披露。反面、今年の夏に作った反戦の歌「NO~命の跡に咲いた花~」では、ボーカル&ギター/鍵盤のホリエアツシのアコギを中心とした歌に、会場中が聴き入り、歌が内包しているメッセージに皆が想いを馳せた。

 この日の観客は、いつものクリープハイプのライヴとはちょっと違ったスタイルでの出で立ちの層も多く見られた。ハーフショーツに大き目のTシャツ、そしてタオル、いわゆるフェスやライヴハウスでのキッズのスタイルも多かった。中盤~後半のYELLOW STAGEでのBLUE ENCOUNT、04 Limited Sazabysの登場では、そのようなキッズの面目躍如。BLUE ENCOUNTの疾走感やラウド感、多変に進行する展開の中、ファンキーな要素も多分にあるサウンドが会場のノリに更に油を注ぎ、ボーカル&ベースのGENの少年性溢れる歌と疾走感と爽快感、それでいてちょっと考えさせる歌詞が魅力の04 Limited Sazabysでは、曲毎に無数のクラウドサーフが起こった。

 そして、この日の白眉は、銀杏BOYZであった。元andymoriのリズム隊に、元シガベッツの山本幹宗をギター従えたバンド編成で登場した彼ら。会場は楽しさや歓びをシェアし合う音楽が好きそうな客層が中心の中、会場全体が魅入って、一歩も動けない様を作り出していたのが印象的であった。暴れたり、過激なアクション等のインパクトに頼らずとも、歌と気持ちでしっかりとショックと衝撃、深い傷を残す。ボーカル峯田の現在の姿勢と彼の吸心力や人間力、歌に込めたとてつもない力と想いを強く感じた。

 YELLOW STAGEのラストは、indigo la Endであった。人恋しい、愛しさへの切実な気持ちが切なさと共に広がっていった「瞳に映らない」、ドライヴ感溢れる「悲しくなる前に」、ファンキーでシティポップタッチの「夏夜のマジック」では、エレガントさが楽曲に加わり、歌内容の夏の夜に引き戻してくれた。ラストは「素晴らしい世界」。この歌が擁する独特の疎外感が、広い会場の隅々にまで広がっていった。

 そして、RED STAGE方面に観客が大挙して移動。キュレーターであり、トリを飾るクリープハイプを迎え入れる体制を作る。
 オレンジ色のライトの中、登場した4人。ボーカル&ギター尾崎世界観が「明日に持ち越さず、今日ここで全て賭けていきます。みなさんも全部クリープハイプに賭けて下さい」と告げ、小川幸慈による聴き覚えのあるギターフレーズが、宙を切り裂くように飛び出す。1曲目は「イノチミジカシコイセヨオトメ」。そのイントロに会場中が嬉喜。更にステージ前方も密度が上がっていく。続く「手と手」に入ると、会場が更に加速を上げ走り出していく。アウトロでは尾崎が誇らしげにギターを頭上に掲げ上げ、このイベントの成功と、今そこに立っている歓びを隠しきれないというような表情を見せる。
 次の「ウワノソラ」では、ドラムの小泉 拓の16のダンサブルなビートと、ベースの長谷川カオナシのグルーヴィーなベースラインが会場に躍動を与え、「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」では、まだライヴが中盤ながら、まるで最後の曲のような歌内容に、会場中が、"この夜よ永遠に続いてくれ!!"との想いを歌に重ねていく。そして、「(イベントテーマの)“Bed in”と言えばエロ。エロい曲を演ります」の尾崎のイントロデュースから「エロ」に。長谷川のスラップも利いたベースラインが生きる、ファンキーさも交わった楽曲に会場が再びハネる。
 中盤では尾崎がアコギを準備。「今から隣のイケメンとデュエットします」のひとことに会場が長谷川の方を向く。その長谷川とのデュエットナンバー「グレーマンのせいにする」では、そのシティポップさと夜の雰囲気に会場中が浸るように聴き入る。この歌はボーカルのリレーションもだが、尾崎と長谷川のユニゾン部分も聴きどころ。相変わらずグッとさせられた。

 「幸せで満たされた気持ちです。そんな中、想い出すのは…」と尾崎が語り出し、初めて彼女が出来た時に、嬉しくて離れたくなく、ずっと彼女の家に入り浸り、パンツを履き替えなかった結果、股間が痒くなり、泌尿器科に初めて行った話を始める。で、流れから次曲は当然「ラブホテル」。会場の気持ちを一気に夏に引き戻す。ダンサブルで上昇感のあるビートと、開放感のあるサウンドとメロディが、青い空へ観客の想いを馳せさせる。そして、「オレンジ」での高いキーの歌い出しが飛び出すと会場中に嬉声が轟き、歌中、みんながそのオレンジ色の先にあるもの、待っているものに想いを重ねていく。
 本編ラスト2曲は、お客さんも、それぞれの歌の中で、一瞬だけ飛び出すお馴染みのフレーズへの参加を楽しみに、それに賭ける。小泉の力強い4つ打ちのビートと共に始まった「社会の窓」では、イントロで特効のキャノンから銀テープが会場に放たれ、情報量を詰め込んだ尾崎流のシニカルな言葉がラップの如く会場に連射される。そして、♪愛してる♪のキャッチーな連呼が会場に更なる躍動を生み、一瞬飛び出す♪最高です♪の場面では、会場中が合わせて大合唱。一拍置いた、最後の♪愛してる♪が飛び出すと、ことさら会場中から嬉声があがる。
 本編のラストは、長谷川のベーラインから「HE IS MINE」。彼ら流の数え歌に会場中がハネながら一緒に歌う。やはりこの歌のハイライトは後半。♪セックスしよう♪の大合唱だ。「ベッドインにぴったりのフレーズ」とは尾崎。一万人と共に叫ぶ、♪今度あったらセックスしよう♪は大快感であった。

 アンコール。曲に入る前に尾崎が「こんなこと言うと凄く照れくさいけど、ありがとう、幸せです」と話し出す。そして、このイベントの主宰であるタワーレコードとの想い出話しを続け、自分たちの作品が最初に店頭に置かれた際の感動を伝える。「変な声の変なバンドですが、これからもよろしくお願いします。そんな曲をやります」と、新曲「クリープ」を始める。自分たちのことや所信表明的な気持ちをストレートには伝えず、照れ隠しに、ごまかしたりシニカルに伝えたりする彼ららしいナンバーだ。甘くてちょっと幸せな気分にさせてくれる温かい曲に会場中がほっこりとする。
 ラストは「愛の標識」。♪死ぬまで一生愛されてると思ってたよ♪と歌われる曲だが、会場中は逆に"これからもクリープハイプを一生愛すよ!"と、誰もが心の中で思ったことだろう。

 ほぼノンストップで約9時間。述べ12アーティストが出演したこの日のイベント。ステージを降りる際の、"賭けに勝った!!"と言わんばかりの尾崎の誇らしげで嬉しそうな表情と、帰路につくお客さんが、”このイベントに賭けて良かった!”との、予想以上の高配当を得たかのような満足そうな表情と、さまざまなバンドとベッドを共に出来た嬉しそうな笑顔をしていたのが、今でも忘れられない。

【取材・文:池田スカオ和宏】

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リリース情報

リバーシブルー(初回限定盤 )[CD+DVD]

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2015年09月30日

ユニバーサル シグマ

[CD]
1.リバーシブルー
2.カップリング
3.わすれもの

[DVD]
・「リバーシブルー」ミュージックビデオ
・「リバーシブルー」ミュージックビデオ メイキング映像
・「一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう」総集編~東京の中心で◯◯◯を叫ぶ~@日比谷野外大音楽堂ライブ映像
「ヒッカキキズ」
「大丈夫」
「本当」
「エロ」
「愛の点滅」
「百八円の恋」
「社会の窓と同じ構成」
「ねがいり」
「ボーイズENDガールズ」
「二十九、三十」

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