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the quiet room 10/16(金)渋谷WWWのツアーファイナルをレポート

the quiet room | 2015.10.28

「ツアーをまわってきて、全国に大切な場所が増えました。最初のツアーではお客さんが入らない場所もあったけど、今回はどこに行っても待ってくれる人がいました」。ライブの中盤、MCで菊池遼(Vo・G)は、大きな手応えを感じたツアーをそう振り返った。今年2月にshibuya eggmanで初のワンマンライブを成功させたthe quiet roomが、ひと回り逞しくなったバンドの姿を見せてくれた、渋谷WWWでのツアーファイナル。7月にリリースしたミニアルバム『Circle』を引っさげて、全国12ヵ所をまわり、彼らは東京へと帰ってきた。

 ステージが暗転して、菊池、斉藤弦(G)、前田翔平(B)、コビキユウジ(Dr)が大きな歓声に包まれて姿を現した。おもむろに、レッドブルを取り出した菊池がそれを一気に飲み干すと、いつも通り4人が拳を突き合わせて、気持ちをひとつにする。そして、日曜の午後の穏やかな空気を感じさせるナンバー「Sunday Morning」でライブはスタートした。歌詞をしっかり聞き取れるテンポで紡がれる瑞々しメロディ。サビで繰り返される《このまま連れ出してよ》というフレーズ。菊池の朴訥とした歌声が、渋谷WWWに伸びやかに響きわたった。続く、「Humming Life」では、ギターの斉藤、ベースの前田が、ドラムのコビキの近くへと歩み寄り、身体を激しく揺らしながらエモーショナルな演奏を見せる。

 前半のハイライトとなったのは、「アイロニー」だった。代表曲の「Happy End」や「Hello Hello Hello」がバンドの朗らかな陽の一面だとすれば、こちらはシニカルな陰の一面とでも言おうか。真っ赤な照明が、ステージに立つ4人を照らし出し、《出る杭は打たれる》《なんで声は届かない》と、焦燥感を滲ませたメッセージがざらりと鼓膜を刺激する。そして、カントリー風の牧歌的なサウンドと共に、温かい光が降り注いだ「スロウダンス」に続けて、複雑なリズムパターンを採用した攻めのナンバー「声の鳴る方へ」では、菊池が「歌えー!」と力強く叫んで、会場にウォーウォーとシンガロングを巻き起こした。繊細で、シンプルな曲調を中心にした前作『Life is wonder』から、ふくよかで艶のあるバンドアンサンブルを獲得した最新ミニアルバム『Circle』へ。より豊かで、色鮮やかな音楽へと進化したthe quiet roomのいまが、ライブハウスという空間にもありありと描き出されていった。

 MCでは3ヵ月におよぶツアーの振り返り、「初上陸した九州で、初めて日本海を見た」と、東京出身らしい発言をした斉藤。「初めての新潟ではお米が美味しかった」と、おどけたコビキ。メンバー同士の和気藹々としたトークで会場に笑いを起こすと、そんなツアーの途中から少しずつ成長させてきたという新曲「ラストシーン」へと繋いだ。菊池が「やるべきことを、いまやらないといけないと思って書いた」と紹介したとおり、疾走感溢れる衝動的なナンバーに、会場からは自然に手があがっていった。続けて、ライブでは何度か披露されている未発曲「19歳」へ。大人でも、子供でもない。どこか宙ぶらりんの青春という時代に抱くいらだちややるせなさ。それをつぶさに切り取ったナンバーは、21歳となったいまも、どこか少年のような佇まいを残すバンドの姿に、とてもよく似合っていた。

 終盤では、この先のthe quiet roomを象徴するナンバーとなりそうな、アグレッシヴな新曲「Instant Girl」を披露。歌い終えて「いい感じでしょ?」と、得意げな顔でフロアに問いかけた菊池は、「次で最後の曲です」と言うと、「……あれ?早かったな。俺、飛ばしてないよね?」と、メンバーのほうを振り返る。そういえば、今年2月に行なわれたeggmanでの初ワンマンでは、ライブのかなり序盤で菊池が「長いな……」と、漏らしていたことを思い出す。わずか1年足らずで、本当にバンドはタフになった。そして、ラストナンバー「Happy End」では、「最高の景色を見せてくれ!」と叫んだ菊池は、客席のいちばん後ろまで見渡すような仕草を見せると、この日いちばんの笑顔を浮かべていた。

 アンコールでは、メンバー自身がライブ会場やツイッターを通じてお客さんと接するなかで、とくにリクエストが多かったという初期曲「Lush Life」を披露。そして、「バンドを続けてきて良かったです。ここまで自分たちを連れてきてくれた大事な曲をやって終わろうと思います」と、会場に集まったみんなで声をあげた音楽讃歌「Hello Hello Hello」へと繋いだ。しかし、ライブはまだ終わらなかった。鳴りやまない拍手に応えて、再びメンバーがステージに戻ってきたのだ。「さっきで終わりだと思ってたので、話すことを考えてないですけど……」と前置きをして、菊池は静かにギターを爪弾きながら語りかけた。「辛かったら辞めてもいいと思います。別に無理をする必要はない。でも、ちょっとでも可能性があって、それを好きだったら、続けたほうがいいと思います。それが俺らにとってはバンドです。みんなが続けたいことを続けられるように、願いを込めて、最後に「Walker」という曲を歌って終わりたいと思います」。そう言って、ミニアルバム『Circle』の最後に収めたスローバラードを歌い上げると、今度こそ本当にメンバーはステージを後にした。

【取材・文:秦理絵】
【撮影:あかさかなつき】

 

tag一覧 ライブ 男性ボーカル the quiet room

リリース情報

Circle

Circle

2015年07月08日

mini muff records

1.Happy End
2.声の鳴る方へ
3.Sunday Morning
4.アイロニー
5.スロウダンス
6.Walker

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セットリスト

「Circle」release tour
2015.10.16@渋谷WWW

  1. Sunday Morning
  2. Humming Life
  3. Drops
  4. tonight is the night
  5. アイロニー
  6. スロウダンス
  7. 声の鳴る方へ
  8. ラストシーン(新曲)
  9. 19 歳
  10. wagon
  11. 雨上がりの午後に
  12. Instant Girl(新曲)
  13. Happy End
Encore1
  1. Lush Life
  2. Hello Hello Hello
Encore2
  1. Walker

お知らせ

■ライブ情報

アンテナ presents 「背伸びしたら見えるかな」-続きはどうかひたちなか!ライブハウスで待ってるの!-
2015/12/20(日)仙台PARK SQUARE
w/アンテナ/リコチェットマイガール

the quiet room presents 「Road movie vol.6」-続きはどうかひたちなか!ライブハウスで待ってるの!-
2015/12/21(月)水戸LIGHTHOUSE
w/アンテナ/セプテンバーミー

「Draw a Circle vol.2」(「CIDER LABO vol.2」)
2015/12/26(土)新宿MARZ
w/サイダーガール
2016/01/15(金)渋谷eggman
w/後日発表
2016/02/15(月)下北沢MOSAiC
w/後日発表

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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