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SpecialThanks結成10年目、「missa」ツアーで自らを解放したスペシャルなライブ!

SpecialThanks | 2015.11.16

 ステージの幕が閉まった状態のまま、1曲目の「SpecialDay」の演奏が始まり、幕の奥からMisaki(Vo・G)の歌が聴こえてきた。そのまま幕が左右に開く。《Welcome to the special day》と、何度も繰り返されるフレーズ。それは文字通り、SpecialThanks のバンド結成10周年アニバーサリーを祝う特別な一夜が幕を開けた瞬間だった。

 冒頭から「Straight Edge」「Hey!you!」と、スペサンの持ち味である英語詞によるパンクチューンが次々と畳みかけられた。「SpecialThanks、はじめます!」と、元気にライブのスタートの宣言をしたMisaki。お客さんがステージ前へとギュっと押し寄せた。Heisuke(G)のソリッドなリフが口火を切った「Kitchen Drinker」を皮切りに、最新アルバム『missa』からのナンバー「Please Please!!!!」「foundation」を交えながら、これぞパンクスの美学とでも言うように、短くてタイトなナンバーが間髪入れずに繰り出されていった。Junpei(Dr)とHiromu(B)というリズム隊ふたりが要となる、スピーディな演奏のなかで、中央に立つMisakiは水を得た魚のように生き生きと歌う。ライブハウスという場所でこそ生かされているような、そんなMisakiの危い佇まいに惹きつけられてしまう。

 「昨日ブログに、みんなの笑顔が想像つくって書いたけど、想像以上に笑顔がいっぱいです。本当にこの場所でワンマンをやりたかったから叶って嬉しいです!」と、Misaki。下北沢を中心に10年にわたり活動を続けてきたスペサンにとって、下北沢でもNo.1のキャパシティ(600人)を誇るGARDENの舞台は大きなチャレンジだ。そして、「わたしたちが演奏することで、誰かが救われたり、たくさんの人が幸せになることをこの場所(ライブハウス)で願っていけたら」という想いを込めた最新アルバム『missa』と今回のツアーについて語ると、なかでも特に大切な1曲だという「feel your life」へと繋いだ。辛いときも、孤独を感じるときも、ひとりじゃいんだよと伝えるメッセージソングを、Misakiはハンドマイクで、フロアへ身を乗り出すようにして歌った。そのまま、PERSONZのカバー曲「7COLORS」を披露。これまでは、それがたとえ自分の大切なルーツミュージックであれ、ライブで他人の曲をカバーをすることを嫌い、MCで想いを吐露することもあまりなかったMisakiだが、この日は、頑ななマイルールなんて全部取っ払って、自由にお客さんとコミュニケーションをとっていく解放的なムードを全身に漂わせていた。

 すでに前半だけで15曲が披露されたところで、スペサンが所属するレーベルの社長でもあり、現在もROCKET Kのベーシストでもある古閑 裕(B)と、スペサンの先輩にあたるバンドNUDGE’EM ALLのサルーン(Dr)がスペシャルゲストとして呼び込まれた。円熟のリズム隊を迎えた力強いグルーヴの後押しと受けて届けた「Marguerite」では、JunpeiとHiromuはステージ袖でその様子を温かく見守っている。MIX MARKETとのコラボ曲「ロックンロールダンス」では、YUTTy(Vo)とのツインボーカルで、Misakiは左右に大きく腕を振る場面も。さらに先日、武道館ワンマンを成功させたばかりのKEYTALKから小野武正(G)がステージに現れると、会場のボルテージはさらに加速した。ステージ狭しと移動しながら、「お前ら、こんなもんじゃねーだろ!」と煽る小野のギタープレイがフロアをもみくちゃにする。気の置けないレーベルメイトたちに祝福されたスペサンの10周年。それはバンドにとって至福のひとときだったに違いない。

 「今日はこんなにいっぱいの中で歌えて嬉しいです。最後の曲は心を込めて歌います。もう昔と違って、自分のためだけに歌うのはやめました。これからは誰かのためになればと思って、たくさん歌を歌っていきたいです」と、いよいよラストナンバー「Love begets love」へ。多くの曲を英語詞で綴るスペサンだが、それはソングライティングを手がけるMisaki自身が、日本語の歌詞は想いがストレートに伝わりすぎてしまうという照れがあるからだった。だが、そんな恥ずかしさを越えて、なお伝えたい気持ちを日本語で歌にした「Love begets love」。ゆったりとしたテンポのなかで、生きること、そこで手にする愛について綴った真摯な歌が、ステージを照らす溢れんばかりの光のなかで美しく輝いていた。

 アンコールではひとりでステージに現われたMisaki は「summer★surfer」をギターの弾き語りで披露した。力強くも切なさを湛えた、情感豊かな歌声がフロアに響き渡ると、そのまま「心のWindow」へ。そこに少しずつメンバーが加わって、スペサンのバンドサウンドになっていく。《心を開いて 考える前に あなたを解放して》。Misaki自身が、自分に宛てて書いた曲だが、そのメッセージはこの日のライブ全体に感じられたムードだった。ダブルアンコールで再びステージにメンバーが呼び戻されると、Misakiは、「『missa』を作って良かったです。このアルバムでわたしは強くなれた気がします」と、口にした。大切なことを包み隠さずに言うこと。それは当たり前のようで難しい。特にそれが苦手だったMisakiにとって、『missa』はようやく自らを解放できた特別な作品だったのだ。最後に披露したのは、バンドが昔から何度も歌い続けている大切なナンバー「You say GOOD BYE」だった。4人の音が重なり合い、最高に幸せな雰囲気に包まれてライブは幕を閉じた。

 「また、ライブハウスで会いましょう!」。この日も最後にそう言って別れを告げたメンバー。これからもスペサンはライブハウスでわたしたちを待っていてくれる。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル SpecialThanks

リリース情報

missa

missa

2015年07月08日

KOGA RECORDS

1. SpecialDay
2. Straight Edge
3. Hey!you!
4. Love begets love
5. Please Please!!!!
6. foundation
7. 7COLORS-Over The Rainbow-
8. feel your life
9. summer★surfer
10. listen to the radio
11. RUN AWAY
12. Marguerite
13. 心のWindow
14. love letter
15. Present□ ※□はハートマーク

お知らせ

■ライブ情報

KOGA RECORDS NIGHT 2015
2015/11/23(月・祝)下北沢ReG

CLUB ROCK’N’ROLL 23rd ANNIVERSARY!!!
2015/12/27(日)名古屋CLUB ROCK’N’ROLL

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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