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ソールドアウト続出!黒木渚ワンマンツアー「自由律」の最終日をレポート。

黒木渚 | 2016.01.26

 開演直前の場内にアナウンスが流れる。おや、この声は黒木渚本人じゃないですか。“撮影、録音は禁止され”ているが“笑う、泣く、歌う、などの行為は自由に”と、エスプリの効いた言葉。それがやがて、不吉な大予言を告げる天の声と、それに抗う人間の声との対話へ変わってゆく。近年の彼女のライブの最大の特徴、シアトリカルな要素を前面に打ち出すスリリングな演出。バンドが現れ、渚が赤いギターを肩にかける。「未来は私が決める」。暗闇の中に力強い言葉が響き、『自由律』ツアーのファイナル公演の幕が開いた。“特別な夜にしよう。よろしく!”

 オープニングは「虎視眈々と淡々と」。音源では明るくポップな印象だが、ライブでは怒りにも似た攻撃性をより強く感じさせる。「君が私をダメにする」も、明るい曲だがサウンドは鋭く重い。バンドは絶好調だ。MASEEETA(Dr)と宮川トモユキ(B/髭)の強烈な個性は、「命がけで欲しいものひとつ」「エジソン」などミディアム・テンポの曲に、太い芯をしっかりと通す。童謡のように可愛らしいメロディを持つ「レスポール」では“たばちゃん”こと多畠幸良(Key)のよく弾むピアノと歌のみ、他のメンバーは効果音担当の盛り上げ役だ。渚は、自撮り棒を持ち出してはしゃいでいる。あとでツイッターにアップするらしい。テンションの高い曲が続く中、ユーモラスでほほえましい光景にふっと心が和む。

 “バンド時代の曲で”と前置きして歌った、「カルデラ」は深く重い女の情念の歌。鮮やかな赤の照明と、ぐいぐいテンポアップしてゆくエモい曲調がぴたりと合う。「テンプレート」ではサイケデリックな7色の照明が輝き、井手上誠(G)が、アコースティック・ギターにエフェクトをかまして凄いソロを弾いた。演奏力と楽曲の理解度の高さにおいて、完璧なメンバーたち。煽られるように、歌のテンションもぐんぐん上がってゆく。

 ここまでは黒のショートパンツに黒のヒール。
 ここからは明るいパステル色のワンピースにパンプス。

 アルバム『自由律』の中でも最上級のせつないバラード「107」は、歌詞を補足する長いナレーションを加え、禁じられた三角関係の物語がさらにドラマチックに演出された。直後のMCで、今回のアルバムは“渋め、アダルト”で、官能的な主題が多いことを、“私も熟していくから。今思うことを正直に歌いたい”と語る渚。その次の「枕詞」は、性描写から始まるが、思い切りコケティッシュでありながらも知的でクール、キャッチーな明るさを兼ね備えたポップなもの。黒木渚の世界は、どの曲も多面的で、ただ扇情で終わるものはひとつもない。

 コール&レスポンスを盛り込んだ「プラナリア」、ハードロックな「アンチスーパースター」、そしてオリエンタル・ポップな「大予言」。キャッチーな曲の連発に、拳を突き上げて飛び跳ねるオーディエンスに向けて、“次の曲をみんなで決めよう!”と呼びかける。「フラフープ」か「テーマ」か、挙手制で競った結果、多数決で「テーマ」に決定。地球の模様の巨大なバルーンがいくつも客席に投げ込まれる中、♪最高過ぎて苦しいね、と歌う渚は満面の笑みだ。ハイテンションをキープしたまま代表曲「革命」を歌うと、残すはあと1曲。たばちゃんの奏でるメランコリックなピアノに乗せ、渚が静かに語り始める。

「何かを選んで生きていくことは、時に孤独を伴います。ここにいるみんなも、本当は知ってると思います。私たちは、ただの独りぼっちの集まりだということを。素晴らしい時を共有しても、わかりあえないことがたくさんあります」
「でも孤独も悪くない。私にとても素敵な曲を書かせてくれるから。これからも、あなたがまた来てくれることをほんの少し期待しながら、歌い続けていこうと思います」

 黒木渚にとって孤独とは何かを、赤裸々に綴ったロック・バラード「アーモンド」。1番はアカペラで、2番はバンドと、完璧な歌唱力で歌いきる姿に鳥肌が立った。“あなたのくれるステージは、私の人生そのものです”。EX THEATERROPPONGIのステージはこれまでのワンマン・ライブでも最も広いものだが、狭く見える。今の黒木渚の歌と存在感は、ステージの規模を完全に超えている。

 アンコール。渚はツアーTシャツとデニムのショートパンツ。リラックスした姿で歌う「白夜」は、渚いわく“楽園に1番近い曲”。「枕言葉」と同じく官能的な主題を持ちつつ、大らかな明るさをたたえた、新境地のアコースティック・ロック・チューン。これで、アルバム収録曲はすべて披露した。『自由律』ツアーも、いよいよラスト・シーンだ。“最後に大予言をします!”と、渚が明るい声で呼びかける。

「このライブが終わって、扉を開けて外に出ると、元の日常が待っています。でもあなたはきっと、少しだけたくましく、愉快に生きていけるであろう。信じるか、信じないかはあなた次第!」

 指揮者のように腕を振り振り、ラスト・チューン「骨」を朗らかに歌いあげる力強い声が、胸の奥深くにある何かを呼び覚ます。“黒木渚の台風に入って、日本をぶった切りに行きましょう!”と、物騒なセリフが、楽しい遊びの誘いのように聴こえてくる。演劇的、文学的、音楽的、そして1人の女の生き方を見せるドキュメンタリー。様々な要素をミクスチャーした黒木渚のライブ・スタイルは、このツアーでひとつの原型ができたんじゃないか。この先に待っているのは、もっと、もっと大きなステージだ。自由律に乗って進む、2016年の黒木渚の新しい旅。そこに同行してゆく喜びを、今はファンとともにかみしめている。

【取材・文:宮本英夫】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 黒木渚

リリース情報

自由律

自由律

2015年10月07日

ラストラム・ミュージックエンタテインメント

1. 虎視眈々と淡々と
2. 枕詞
3. 大予言
4. アーモンド
5. 107
6. 命がけで欲しいものひとつ
7. テンプレート
8. 君が私をダメにする
9. 白夜

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セットリスト

ONEMAN TOUR 2015『自由律』
2016.1.11@EX THEATER ROPPONGI

  1. 虎視眈々と淡々と
  2. 君が私をダメにする
  3. 金魚姫
  4. 命がけで欲しいものひとつ
  5. エジソン
  6. レスポール
  7. カルデラ
  8. テンプレート
  9. =107夜話=
  10. 107
  11. 枕詞
  12. プラナリア
  13. アンチスーパースター
  14. 大予言
  15. テーマ
  16. 革命
  17. アーモンド
Encore
  1. 白夜

お知らせ

■ライブ情報

黒木渚 ONEMAN TOUR 2016 SPRING(仮)
2016/04/23(土)福岡DRUM LOGOS
2016/05/07(土)札幌Sound Lab mole
2016/05/15(日)仙台darwin
2016/05/21(土)名古屋ボトムライン
2016/05/22(日)大阪 UMEDA QUATTRO
2016/06/03(金)東京国際フォーラム ホールC

<2次抽選先行受付URL>
http://eplus.jp/kurokinagisa2016sp2/
<受付期間>
1/26(火)18:00~2/17(日)23:59

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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