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Suck a Stew Dry 『N/A ~Ninja Action Tour~』東京公演をレポート

Suck a Stew Dry | 2016.07.22

 2ndフルアルバム『N/A』を引っ提げて全国を巡った『N/A ~Ninja Action Tour~』も、いよいよファイナル公演。会場内が暗転して、篠山コウセイ(Vo・G)、ハジオキクチ(G・Cho)、フセタツアキ(G・Cho)、スダユウキ(B)、イタバシヒロチカ(Dr)がステージに現れると、観客の間から明るい歓声が上がった。1曲目に届けられたのは「インナーワールド」。軽快なビートと瑞々しいメロディを浴びながら身体を揺らす人々のエネルギーが、フロアを震わせる。続いて放たれた「ヒーローになれずに」も爽やかな盛り上がりを生み、演奏が終了した時、大きな拍手が湧き起こった。

 「お集まり頂き、ありがとうございます。最後まで自由に楽しんで帰ってください。僕たち5人がSuck a Stew Dryです!」、篠山の挨拶を挟んで、さらに演奏は続いた。「遺失物取扱所」「世界に一人ぼっち」「二時二分」「レフストアンブルフィ」「F.O.M.H.」……美メロを浮き彫りにしつつ、一体感たっぷりに迫って来るバンドサウンドが気持ちいい。篠山は頼もしいメンバーたちと共にギターを奏で、心をこめて1曲1曲を歌い上げていった。

 「冷たいリグレ」を演奏した後、ハジオ、フセ、スダ、イタバシが一旦姿を消し、ステージに1人だけ残った篠山。彼は手にしたアコーステックギターを軽く爪弾くと、観客に語りかけた。「1人になってしまいました(笑)。せっかく1人になったので、弾き語りをやろうと思います」。そして、どんな人間も良い部分と悪い部分を持っていて、「良い人」や「悪い人」と言い切ることはできないのかもしれない……という人生観を反映した曲なのだという「N/C」を弾き語りで披露した後、再びMC。「みんな“行けんのかー!”とか言うと盛り上がるじゃない? じゃあ逆のことを言ったら盛り下がるのかな?」という素朴な疑問の検証が行われた。「行けないのかー? かかってくんなー! 盛り下がってますかー?」……シュールな表現を聴いて観客は大爆笑。そして、「フセのギターピックを全部隠し、後方のギターアンプの上に置かれていたエミネコ(イラストレーター・フクモトエミ作の猫。ジャケットやグッズなどに度々登場し、Suck a Stew Dryのマスコットキャラクター的な存在となっている)の頭部のぬいぐるみをマイクにかぶせる」「スダのマイクスタンドをあり得ないくらいの高さにしてしまう」……というイタズラをした篠山が弾き語りで聴かせてくれたもう1曲は「本当の話」。いたずらをしていた時の無邪気さから一転。真剣な面持ちでギターを奏で、一心に歌い上げている姿が印象的だった。

 弾き語りの2曲が終わり、ステージに再登場した他のメンバーたち。2メートル以上の高さになっているマイクスタンドを見てのけぞったスダ。マイクにかぶせられていたエミネコを外した後、ピックがなくなっていることに気づき、「ピック落として演奏できなくなったら、篠山のせいだからな」と言ったフセに対して、篠山は「下に置いてあるよ」と返したが、「お前が直せ!(笑)」と叱られていた。メンバー同士の仲の良さが窺われるそんなやり取りを経て、ライヴは後半戦へ。1stミニアルバム『人間遊び』の表題曲「人間遊び」、2ndミニアルバムの収録曲「傘」……懐かしい2曲を披露した後、「僕は歌を聴いても疑い深くて、“愛は大事”とか歌われても疑ってしまいます。でも、そういうものを求めてる時に作った曲です」という言葉を添えて「こころは愛をさがしている」。そして、「中学生くらいの時、よく音楽を聴いてて。いろいろ聴いてもなんか違和感がありました。世の中の音楽には、自分のことを表してくれるものがないなと。その違和感が曲を作り始めた原動力じゃないかなと思います」というMCを経て「一人じゃ生きれないわけでもない」。篠山の創作の根底にある気持ちが窺われるひと時であった。

 「恋バナでもしますか?」と、突然篠山から話を振られたスダ。子供の頃に近所の川で鯉を2匹釣り上げ、バケツの中に入れて家の外に置いたのだが、翌日になったら鯉は姿を消していた……という彼の話を聞き、篠山は「今どき恋と鯉をかける人がいるとは」と苦笑していた。「じゃあ小5の時……」と、スダが語ったもう1つの恋バナは、付き合っていたつもりだった女の子が別の男子と楽しそうに歩いているのを見てしまったという切ないエピソード。「初めての失恋でした」、その言葉を合図に「失恋、失恋。」がスタート。手拍子をしながら身体を揺らす観客が実に気持ちよさそう。続いて放たれた「GOEMON」は、《♪篠山さんにお荷物です》という大合唱が起こり、最高の一体感が生まれていた。

 「僕は絶対にまた会おうねと言わないようにしていて。でも……今だけでも一緒にいてくれてありがとうございました」と篠山が観客に呼びかけてからスタートし、本編ラストを飾ったのは「空に星が降る夜は」。この曲の演奏を終えると、メンバーたちはステージから去って行ったが、観客の歓声に応えてアンコールへ。「ツアーをやるにあたって初めて、“どういうツアーにしよう?”と考えました。今回、どんなバンドなのか改めて自己紹介できるツアーにしたかった。『N/A』も自分たちを紹介したいと思って作りました。その中でも一番Suck a Stew Dryだと思う曲です」と篠山が語り、まず披露された「トロイメライ」。そして、最後に届けられた曲は「Normalism」だった。ギターを弾きながら篠山が歌い始め、やがて他のメンバーたちも合流。温かいサウンドをじっくり堪能させてくれた。こうして締めくくられた今回のツアー。先述の通り「自己紹介できるツアーにしたい」という想いを胸に全国を巡ったわけだが、各地のファンにSuck a Stew Dryの魅力を改めて伝えるものになったのではないだろうか。

【取材・文:田中 大】
【撮影:永峰 拓也】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル Suck a Stew Dry

リリース情報

N/A【完全生産限定盤】

N/A【完全生産限定盤】

2016年05月25日

ラストラム

1.GOEMON
2.インナーワールド
3.トロイメライ
4.レフストアンブルフィ
5.失恋、失恋。
6.空に星が降る夜は
7.冷たいリグレ
8.F.O.M.H.
9.一人じゃ生きれないわけでもない
10.ヒーローになれずに
11.ユースフル -used-
※「夢中でがんばれない君へエールを」恵比寿LIQUIDROOM公演ライブ映像付き

セットリスト

Suck a Stew Dry
「N/A 〜Ninja Action Tour〜」
2016.7.8@TSUTAYA O-EAST

  1. 01. インナーワールド
  2. 02. ヒーローになれずに
  3. 03. 遺失物取扱所
  4. 04. 世界に一人ぼっち
  5. 05. 二時二分
  6. 06. レフストアンブルフィ
  7. 07. F.O.M.H.
  8. 08. 冷たいリグレ
  9. 09. N/C
  10. 10. 本当の話
  11. 11. 人間遊び
  12. 12. 傘
  13. 13. こころは愛を探している
  14. 14. 一人じゃ生きれないわけでもない
  15. 15. 失恋、失恋。
  16. 16. GOEMON
  17. 17. 空に星が降る夜は
ENCORE
  1. 18. トロイメライ
  2. 19. Normalism

お知らせ

■ライブ情報

MUSAKO FEST Vol.12
2016/07/31(日) 東京工学院専門学校(中庭特設ステージ)

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
2016/8/14(日) 国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)

靴紐とカレンダーTUOR FINAL
2016/8/22(月) 渋谷club asia

RADIO BERRY ベリテンライブ 2016 〜HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2〜
2016/8/24(水) HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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