前へ

次へ

水曜日のカンパネラ ソールドアウト続出“未確認ツアー” 初日をレポート

水曜日のカンパネラ | 2016.07.25

 開演前に大型スクリーンで流れていた映像。最新作『UMA』に登場する謎の生物たちに関する説明が、カードゲーム風のイラストや文章で紹介されるのが目を引く。どこかから妖しい動物の鳴き声が聞こえてきて、不思議なオブジェや装飾で彩られているステージ上は、何やら異世界のような雰囲気を醸し出していた。すると、突然会場内は暗転。いよいよスタートとなったわけだが……コムアイの姿が見えない。「どこだろう?」と思っていたら、ライトの光で浮かび上がったVIPルーム。樹木を持ち込んでジャングル風にしたその空間で、彼女は1曲目「メデューサ」を歌い始めた。2階席の下手側、バルコニー部分にあるVIPルームのガラスに張り付いたりして歌う姿のインパクトがものすごい。やがて、彼女は歩いてメインステージへと移動。会場の構造を活かして、その日ならではの様々な仕掛けを炸裂させるのが水曜日のカンパネラのライブだが、このオープニングは一際すごかった。

 「シャクシャイン」で、激しいタテノリのダンスを巻き起こした後に迎えた最初のインターバル。「うわあ~、イソギンチャクみたい」、観客が掲げた腕が揺れるフロアの様子を独特な喩えで表現したコムアイは、リリースされて間もない『UMA』を引っ提げた今回のツアーのタイトルが『未確認ツアー』であることに触れると、「ここで改名!」と言った。するとスクリーンに映し出された“未確認ツアー”という文字が、彼女の手の動きに合わせて“確認済ツアー”へと変化……という演出を挟んで、「ツチノコ」へと雪崩れ込んでいった。歌いながら踊るコムアイの動きのキレが、ますます素晴らしい。続いて披露された「ナポレオン」は、曲に合わせて飛び交うレーザー光線が華々しかった。聴覚はもちろん、視覚も刺激される場面の連続。当然ながら観客は、すっかり興奮状態へと至っていた。

 「自分で身につけたいものを作ってる」というオリジナルグッズへのこだわり、オープンしたばかりのオフィシャルコンテンツサイト『GARAGE-ガレージ-』について語られた後、次に披露する「ディアブロ」の観客に歌って欲しい部分の練習へ。《♪いい湯だね》とコムアイが歌うと返ってきた《♪いい湯だね》という大きな声。《♪手の指の皮が》に対して返された《♪ふやけるね》という声も特大級。「すごい! これがワンマン!!」と彼女が感心してからスタートした本番の一体感が素晴らしかった。歌いながら観客が掲げた腕がユラユラ揺らめく様が、なんだか温泉マークのようにも見えてくる……。そんな桁外れの熱気を、幻想的なムードへと塗り替えたのが「小野妹子」。エキゾチックな風味のサウンドが、とても心地よく迫ってきた。

 スノーマシンから放射される真っ白な雪がフロアに降り注ぐ風景が美しかった「雪男イエティ」を歌い終えると、コムアイはステージ上から姿を消した。すると、いきなりフロア内に蓮の花をモチーフにした神輿が飛び込んできてビックリ! スタッフに担がれた神輿の上で「フェニックス」を歌った彼女は、実に楽しそうな笑顔を浮かべていた。フロアのど真ん中へと辿り着くと、ゆっくりと降下してきた巨大なミラーボール。キラキラと輝くその球体に手を伸ばして触れた彼女の姿は、少々誇張して表現するなら……宇宙を手にした女神のようにも見えて、とても神々しかった。

 今年の夏に出演する予定の音楽フェスへの意気込みを語り、次に歌う曲について触れたコムアイ。「医学生、看護学生に喜ばれる」というその曲は、南米で目撃情報がある吸血生物をモチーフにしつつ、医療現場での採血方法について正確に描写している「チュパカブラ」だった。ナースに扮したダンサーが、コムアイの腕から採血をするような動きを盛り込んだパフォーマンスが楽しい。先日、骨折したケンモチヒデフミが登場して車椅子で走り回ったり、巨大な注射器を持ったナースがコムアイを追いかけ回したり……という賑やかな見どころも満載であった。

 「ウランちゃん」「バク」「ユタ」「ツイッギー」……強力なナンバーの連発ですさまじい盛り上がりとなったところで、いきなりステージに現れた黄色い米粒のような人物。『日清カレーメシ2』のCMでお馴染みのカレーメシ2くんだった。どうやらコムアイがステージにいない間の場繋ぎを頼まれたらしい。「俺ひとりでどうすんだ…」と、困惑気味のツイートをしたスマホの画面がスクリーンに映し出された。「私が準備してるあいだ適当に~」「ステージに立つ厳しさを味わうのだ!!」など、容赦ないコムアイの返信が次々飛び出して観客は大爆笑。そんな場面を経て「ラー」のトラックが鳴り響いたのだが、ステージに再登場したコムアイは、どういうわけかサナギのような被り物をしている。歌いながらカレーメシ2くんと踊った彼女は、やがて脱皮して可憐な蝶へと変身。観客から大喝采を浴びていた。

 「ミツコ」が披露された後、再びMCタイム。先ほどサナギに扮した理由についてまず説明したのだが……どうやらコムアイの父親が、かつて“サナギ”と呼ばれていたかららしい。幼稚園時代の父親仲間に“大サナギ”と“小サナギ”がいて、彼女の父親は“中サナギ”だったのだという……というマニアック極まりない情報が明かされた。そして、叙情的なサウンドが会場一杯に広がった「ユニコ」。コムアイが透明なビニールボールの中に入り、観客の頭上を転がりながら歌った「桃太郎」で本編は終了。アンコールを求める大きな拍手が湧き起った。すると、彼女は拍子抜けするくらいすぐに再登場。「着替えたと思われたくないから、すぐに戻ってきた」というとぼけたトーンの言葉が妙に面白かった。

 アンコールで披露されたのは「ドラキュラ」。巨大な招き猫やワニのバルーンがフロア投入され、たくさんのカラフルな風船も舞い踊る中、観客の間から起こった《♪ちーすーたろか 我がしもべとなるがいい》という大合唱がすごい。不穏な内容の歌詞に反して、とてもピースフルに響き渡っていた。ステージ上にはナースのダンサーやカレーメシ2くんなども現れて、実に気持ちよさそうに身体を揺らしている。歌い終えると、「ほんとに、ほんとにありがとう。またね!」と元気に挨拶をして、ワニのバルーンを小脇に抱えて去って行ったコムアイ。水曜日のカンパネラの唯一無二の魅力を改めて噛み締めた。このツアーを経て、今後も目が離せない存在となっていくことだろう。

【撮影:八木咲】
【取材・文:田中 大】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 水曜日のカンパネラ

リリース情報

UMA[初回限定盤]

UMA[初回限定盤]

2016年06月22日

WARNER MUSIC JAPAN

01. チュパカブラ
02. ツチノコ
03. 雪男イエティ
04. ユニコ
05. フェニックス
06. バク
07. クラーケン

セットリスト

水曜日のカンパネラ ワンマンライブ 2016 “未確認ツアー”
2016.6.25@新木場 STUDIO COAST

  1. M-1.メデューサ
  2. M-2.シャクシャイン
  3. M-3.ツチノコ
  4. M-4.ナポレオン
  5. M-5.ディアブロ
  6. M-6.小野妹子
  7. M-7.雪男イエティ
  8. M-8.フェニックス
  9. M-9.チュパカブラ
  10. M-10.ウランちゃん
  11. M-11.バク
  12. M-12.ユタ
  13. M-13.ツイッギー
  14. M-14.ラー
  15. M-15.ミツコ
  16. M-16.ユニコ
  17. M-17.桃太郎
ENCORE
  1. EN-1.ドラキュラ

お知らせ

■ライブ情報

SUPER SLIPPA 2016
2016/07/31(日) 台湾 台北南港展覽館

ROCK IN JAPAN FES.2016
2016/08/07(日) 国営ひたち海浜公園

音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2016
2016/08/09(火) 音霊 OTODAMA SEA STUDIO

旅祭2016
2016/08/11(木) お台場 潮風公園

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO
2016/08/13(土) 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ

SUMMER SONIC 2016
2016/08/20(土) QVC マリンフィールド&幕張メッセ

WILD BUNCH FEST.2016
2016/08/21(日) 山口きらら博記念公演

SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2016
2016/08/26(金) 山梨県 山中湖交流プラザきらら

WORLD HAPPINESS 2016
2016/08/28(日) 東京・夢の島公園陸上競技場

OTODAMA’16〜音泉魂〜池田の変?
2016/09/03(土) 大阪・泉大津フェニックス

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る