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BUMP OF CHICKEN初のスタジアムツアー、"音楽の冒険"の終着点で見せた新たな音世界

BUMP OF CHICKEN | 2016.07.29

 それは、バンドが辿ってきた旅の一つの到達点のようなライブだった。そして「この先」への期待を強く感じさせるステージだった。

 7月17日、神奈川・日産スタジアムで行われた「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」のファイナル公演。それは、全国4会場6公演に約30万人を動員したバンド初のスタジアムツアーの終着点というだけでなく、BUMP OF CHICKENというバンドがここ数年にかけてトライしてきた音楽の冒険、その結実を見せる場所だった。

 「曲が喜んでます!」と、最後のMCで藤原基央は言っていたけれど、本当にそのとおりで。彼ら4人が体現し、最先端のクリエイターや強い絆で結ばれたスタッフがそれを支え、沢山のファンが共に歩んだ「音楽の冒険の旅」を先導したのは、あくまで藤原基央というソングライターから生まれた新しい曲たちだった。LEDビジョンの映像も、レーザー光線やリストバンド型のライト「PIXMOB」や光るバルーン「チームラボボール」など最先端の技術を駆使した演出も華やかだっけれど、それもちゃんと曲が求めた必然のイメージだった。2013年にキャリア初のベスト盤でそれまでの足跡を一度総括し、アルバム『RAY』と『Butterflies』で新たに足を踏み入れた幻想的で眩しい音世界。彼らはそれを一番ふさわしい場所と見せ方で伝えたんだ、ということを実感する。

 開演5分前。今回のツアーのために制作されたアコースティックと電子音が混じりあうインストゥルメンタルをBGMにカウントダウンが始まり、オーディエンスの熱気が徐々に高まっていく。1曲目は「Hello,world!」。そして「パレード」と続け、スリリングでドラマティックな曲展開が巨大な一体感を生み出す。「K」「カルマ」と初期の代表曲に会場が熱くなる。序盤からテンションは最高潮だ。

 アルバム「Butterflies」のリリースツアーという位置づけもあり、「ファイター」や「宝石になった日」など、この日に披露されたのは最新アルバムからの楽曲が中心。ただそれだけでなく、バンドの最新形も見せてくれた。中盤、藤原は「新しい曲をやります」と告げ、TBS系日曜劇場「仰げば尊し」主題歌と して提供した新曲「アリア」を披露する。オルガンの音色から始まる、とてもロマンティックな楽曲だ。上昇していくようなサビに、直井由文(B)、増川弘明(G)、升秀夫(Dr)によるコーラスが加わる。次のライブではきっと大合唱が起こるような予感がする。

 MCでは直井が「スタジアムでどうしても見たいものがあって」とスタンドとアリーナの全員による息のあったウェーブを実現させたり、少年時代に増川と二人で初めてギターとベースを買った時や初めて行ったグリーン・デイのライブの話をしたりと、さまざまなコミュニケーションでオーディエンスを楽しませる。そして「流星群」や「大我慢大会」を経て、4人はステージを降りてブロック内の通路をお客さん一人ひとりとハイタッチしながら歩き、会場後方のサブステージへ。スタジアムのスケールであっても、バンドとオーディエンスがとても近い関係を結んでいるのを感じる。

 小さなサブステージに立った4人は、アコースティックセットで「孤独の合唱」「ダンデライオン」を披露。大歓声とハンドクラップがスタジアムを包む。最新アルバム『Butterflies』の収録曲にはエレクトロニックなサウンドが印象的なナンバーが多いが、この日も披露した「車輪の唄」と同様にフォークやブルーグラスやカントリー・ミュージックのルーツを感じさせる「孤独の合唱」も、とても大事な楽曲だと痛感する。たとえばUKのコールドプレイやマムフォード&サンズなどとも同時代性を感じるような、「今の時代にスタジアム・ロックをどう更新するか」というテーマにバンドが向き合っているのを感じる。

 そういう意味では、やはり圧巻は終盤だった。「ray」「虹を待つ人」から本編ラスト「Butterfly」へ。日没の時間を経て暗くなった夜空を、レーザー光線とPIXMOBの光が虹色に彩る。スタジアムをキラキラと輝く光が包み、「虹を待つ人」ではカラフルなチームラボボールが飛び交う。ライブのためにスペシャルなアレンジが加わった「Butterfly」では紙吹雪が舞う。とてつもない高揚感。その真ん中に、今のBUMP OF CHICKENの音楽が鳴らしている新しいタイプの生命力がみなぎっている。

 大きな拍手と歓声に迎えられて、4人はアンコールに「天体観測」を披露。青い光に会場が包まれ、大きな花火が打ち上がり、多幸感でいっぱいになったライブは終了した。

 演奏を終えた4人は、一人ひとり観客に挨拶する。最後に藤原基央はステージに残り「インタビューで『どうですか? 次は何万人ですよ』とかよく聞かれるんだけど、改めて今日ライブをやって思ったことがあって。20年前、最初に僕たちがライブをやったときは10人くらいしか僕らのお客さんがいなかったんだけど、その時も今も同じ気持ちでステージに立っているんです。一人ひとりと7万回握手がしたいです」と、結成当時から変わらぬ思いを告げる。彼が言っていたとおり、これだけの大きな会場で一対一の関係を感じさせてくれるバンドは本当に稀有だと思う。

 さらに、「新しい曲があるんだよ」と藤原は言う。この日に披露した「アリア」以外にも次なる新曲が生まれているようだ。「曲を書いてるときには、君たちのことをものすごく考えてる。全部君たちに会いたいと思いながら紡がれていく音符や言葉たちなんです」。そんな風に彼は続けていた。

 まだまだ彼らの旅は続いていく。新しい扉も開けていくだろう。BUMP OF CHICKENの音楽がこの先見せてくれるだろうものにワクワクしながら、心地よい余韻に包まれる帰り道だった。

【取材・文:柴 那典】
【撮影:古溪一道】

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リリース情報

BUMP OF CHICKEN結成20周年記念Special Live「 20 」[Blu-ray初回限定盤]

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2016年07月13日

トイズファクトリー

01. 天体観測
02. R.I.P.
03. バトルクライ
04. ランプ
05. 車輪の唄
06. ひとりごと
07. ナイフ
08. Butter?y
09. ロストマン
10. ベル
11. 66号線
12. K
13. ダイヤモンド
14. ray
15. ガラスのブルース
EN01. Hello,world!
EN02. BUMP OF CHICKENのテーマ

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