「ボゥディーズとバニラズで夏祭りをしたいと思います！」。7月20日にリリースされたTHE BAWDIESとgo!go!vanillas初のスプリットシングル『Rockin’ Zombies』の発売を記念した代々木公園でのフリーライブはそんなROY（Vo・B）の開会宣言で幕を開けた。発売初週からCDショップからは売り切れ店が続出するという現象を起こした今回の企画だが、ことの発端はこの2組が同じ事務所（SEEZ RECORDS）、同じレーベル（Getting Better Records）に所属する自他ともに認める“兄弟バンド”でありながら、まだ一度しか対バンをしたことがなく、一緒にライブをしたいという想いから始まったもの。10月から開催される対バンツアーの前哨戦となる代々木公園での1日限りのイベントは、まさにコラボに次ぐコラボ。おそらく今後二度と見ることのできないであろうレアなライブだった。

　初夏の東京。代々木公園の周辺からはせわしなくセミの鳴き声が聞えるなか、「肩慣らしをしたいなと」（ROY）と、まずは両バンドのボーカリストだけで披露されたカバー曲「Daydream Believer（邦題：デイドリーム）」でライブはスタートした。イスに腰をかけ、牧達弥（Vo・G）が弾くアコースティックギターにのせて、ROYは英語で、牧は忌野清志郎（タイマーズ）がつけた日本語による歌唱を聴かせた。渋い味わいのROYの声と、透明感のある牧の声。シンプルな編成だからこそ、ふたりのボーカリストの個性がぐっと浮き立つ。1曲目からまさかのボーカリストコラボが実現するんて、それだけでこの日は何か特別なことが起きそうな予感がした。

　「ボゥディーズのみなさん！来てください！」と、ROYが自身のメンバーを呼び込むと、長いパンとサラミでチャンバラをしてホットドッグを完成させるという小芝居に会場は大爆笑。披露されたのはもちろんボゥディーズの代表曲「HOT DOG」だった。ステージには両バンドのドラムセットが並べて置かれ、曲の途中にはバニラズのジェットセイヤ（Dr）と長谷川プリティ敬祐（B）が乱入するという、おそらくツアーでも見ることはできないであろう前代未聞のステージが繰り広げられた。間髪入れずにバニラズに入れ変わると「マジック」へ。ここにボゥディーズのTAXMAN（G）が会心のギターソロで参戦する。序盤から互いの勝負曲を正面からぶつけ合うガチンコのステージに会場の熱気はぐんぐんヒートアップしていった。

　スプリットシングル『Rockin’ Zombies』の期間限定盤には両バンドによるお互いの楽曲のカバーが収録されているということで、「カバーを聴かないと半分しか楽しめない！通常盤を買った人は捨ててください（笑）」という過激なROYに発言に、「ダメですよ。もう1枚買ってください（笑）」と、やんわりと突っ込を入れた牧。ボゥディーズがバニラズを大胆にカバーした「COUNTER ACTION」には牧と柳沢進太郎（G）も加わり、バニラズがカバーしたボゥディーズの1stシングル「イッツ・トゥー・レイト」にはROYとJIM（G）も巻き込むという目まぐるしいコラボが続いた。さらに新曲として、バニラズは陽気な海賊船へとオーディエンスを誘うような「ヒンキーディンキーパーティクルー」を、ボゥディーズはバンドのらしさが全開となる貫禄のガレージロック「45s」を披露。デビューからのキャリアで言えば5年の差がある両バンドだが、後輩だからと遠慮もなく、先輩だからと手加減もない、それぞれのロックンロールを貫くステージはとても痛快だった。

　ラストは8人全員がステージに立ち、ボゥディーズの「KEEP ON ROCKIN’」でオーディエンスを思いっきり巻き込みながらフィナーレへ。牧が「ブラザーになろうぜ！」とリーダーシップをとって会場が一体となったハンドクラップ、ROYが「これだけ大衆が集まってるのにこれだけしか声が出ないなんて、カイワレしか食べてないんですか？」と巧みな話術で煽ったコール＆レスポンス。プリティの絶叫やMARCY（Dr）の恥ずかしそうなシャウトまで、普段はちょっと見られない両バンドのアットホームな絡みに会場は最後まで湧きっぱなしだった。

　最後は8人全員がばっちり決めたゾンビポーズで記念撮影をしてライブを締め括ったTHE BAWDIESとgo!go!vanillas。この日はスペシャル公演らしい和気藹々とした雰囲気だったが、おそらく秋から始まるツアーでは互いのプライドを賭けた、よりスリリングな内容になる気がする。彼らが全国7ヵ所でロックンロールを感染させる対バンツアー「Rockin’ Zombies Tour 2016」は10月14日仙台Rensaからスタートだ。　

【取材・文：秦理絵】