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感覚ピエロ、全国ツアーで研ぎ澄まされた凄まじいライブ力、渋谷クアトロで披露!

感覚ピエロ | 2016.08.08

 「俺はあなたたちを“お客さん”なんて呼んだりしません。感覚ピエロを愛してくれる素敵な仲間たちだと思ってます」。横山直弘(Vo・G)が溢れる想いをオーディエンスへと真っ直ぐにぶつけた渾身のライブは、そこに集まったお客さんを誰ひとり置き去りにすることなく、最高にハッピーな場所へと導いていくライブだった。
 6月1日にリリースした2枚目の全国流通盤ミニアルバム『不可能可能化』を引っさげて開催してきた全国ツアー、そのファイナルシリーズ初日となった渋谷クアトロ。思えば2年前に「O・P・P・A・I」がYou Tubeで公開され、瞬く間にバンドの代表曲となったときには、この面白すぎるバンドが果たしてどんな風に成長するのかは未知数だった。そんな彼らがインディーズのまま知名度をあげて、いまや渋谷クアトロというキャパ800人の会場すら手狭に感じさせるバンドになるなんて。その急成長ぶりには本当に驚かされる。

 フロアから熱狂的な歓声が湧き上がり、ビカビカと照明が激しく明滅するなか、メンバー4人がステージに現れた。『不可能可能化』のリード曲でもあるアッパーチューン「会心劇未来」からライブはスタート。滝口大樹(B)の力強いスラップ、秋月琢登(G)の手数の多いギターフレーズ、西尾健太(Dr)の堅実で安定感のあるビート。それぞれがその存在を強く主張する感覚ピエロの爆音バンドサウンドがフロアで一気に暴れ狂った。「すごい景色じゃないの?東京!遊ぶ準備はできてますか?」。横山の煽りでフロアの熱がいっそう加速した「Japanese-Pop-Music」では、フロントに並ぶ横山、秋月、西尾がギター&ベースでユニゾンをビシッと決めると、間髪入れずに「騒げっ!」と投下されたダンスロック「メリーさん」。開始わずか4曲でフロアはサウナのような熱気がたちこめた。

 凶暴なグルーヴから不気味なワルツへと様相を変えていく「ウラムの螺旋」、横山がハンドクマイクでラップを聴かせた「Hip You」へと、すでに持ち曲が60曲にもおよぶ彼らの楽曲は攻めのロックチューンだけでなく、メロウなナンバーまで守備範囲が広い。ワンマンライブではそんなバンドの多彩なナンバーも惜しげもなく披露できるとあって、「たっぷりイチャイチャする時間があるわけじゃん?」と、横山らしい気障な言い回しで繰り出したのは大人っぽくてファンキーなダンスナンバー「Let’s get it a dancing」だった。さらにミラーボールの優しい光を浴びて壮大に歌い上げたバラード曲「夜光花」へ。どんなに曲調を変えても、緻密でテクニカルなバンドアンサンブルと、どこか妖しげで危険な香りが漂う横山のボーカルが、感覚ピエロの唯一無二のアイデンティティとして貫かれていた。

 夏祭り、浴衣の女の子、美しい花火。そんな夏の風物詩を満喫するリア充たちを爆発させようと届けた「リア充大爆発」から、ライブはいよいよクライマックスへ突入した。秋月の繰り出すイントロのリフに悲鳴のような歓声が湧いた「A-Han!!」で会場の盛り上がりはピークへ。……と思われたが「いままでは序章にすぎません!ここから渋谷クアトロ史上最高にアホな光景を見せてもらいたい」と言って「O・P・P・A・I」を投下すれば、あっさりと先ほどの最高点を超えていく。凄まじいライブ力。今回のツアーでは台湾でのライブを経験したことによる自信もあるのだろう。研ぎ澄まされた4人の演奏は圧巻の一言だ。

 最後のMCで横山は少し気持ちを落ち着かせながら語りかけた。かつて就職活動すべきか迷ったときにバンドを選んだことで、いまの感覚ピエロがあるのだ、と。年数で言えば、感覚ピエロはまだ結成3年ほどのバンドだ。だが、まるで生き急ぐようなスピードで実績を重ねていくその原動力は何かとインタビューで聞いたとき、彼らは「やるせなさ」だと答えたことがある。メンバー全員が前に所属していたバンドでやり残したことがあった。だからこそ感覚ピエロに全てを賭けているのだ。「インディーズだけど、日本のシーンの真ん中で歌いたい!」。最後に横山はそう宣言した。ラストナンバーは、そんなインディーズバンドとして異例の大抜擢となった宮藤官九郎脚本のテレビドラマ『ゆとりですがなにか』の主題歌「拝啓、いつかの君へ」だった。さっきまで貧乳やらボインやらで大騒ぎをしていたバンドが、《あなたの正義は一体何だ?》と価値観のありかを真顔で問いかけてくる。そんな荒技をあっけらかんと成立させてしまうのが、感覚ピエロというバンドの恐ろしさなのだ。

 アンコールでは「七光りヒーロー」で隣の人と手をつないでほしいと、横山。こんなとき、ふつうは見知らぬ人と手をつなぐことへの気恥ずかしさで概して上手くいかないこともあるのだけど、横山の声を合図にお客さんが高く掲げた手はしっかりとつながれていた。恥ずかしさなど軽々と超える空気を感覚ピエロは2時間のライブで作り上げていた。

 メンバーがステージを去ったあと、スクリーンに初公開となる新曲「加速エモーション」のミュージックビデオが流され、さらに12月8日にはバンド史上最大規模となる恵比寿リキッドルームでの初ワンマンも発表された(これは後日11月から開催される東名阪ツアー「感覚ピエロの三点責め 東名阪 イク×2 ワンマンツアー」の東京公演であると判明)。
 「もっともっと上に行くから!予定は未定ですが……保証します!」。横山が叫んだその言葉のとおり、これからも驀進し続ける感覚ピエロの勢いは誰にも止めることはできない。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 感覚ピエロ

リリース情報

不可能可能化

不可能可能化

2016年06月01日

JIJI RECORDS

1. 会心劇未来
2. 七光りヒーロー
3. Hip You
4. Tonight Yeah!Yeah!Yeah!
5. 好きにして頂戴
6. 雨ノチ、雨アガリ
7. 拝啓、いつかの君へ
8. 夜香花

お知らせ

■ライブ情報

「感覚ピエロの三点責め イク×2 東名阪ワンマンツアー」
2016/11/05(土) 愛知 名古屋 DIAMOND HALL
2016/12/08(木) 東京 恵比寿 LIQUIDROOM
2017/01/06(金) 大阪 なんば Hatch

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
2016/08/13(土) 茨城 ひたちなか 国営ひたち海浜公園

TREASURE05X 2016 -LIGHTNING EMPIRE-
2016/08/22(月) 愛知 名古屋 Zeep Nagoya

SOUND SHOCK 2016
2016/08/25(木) 大阪 Creative Center Osaka (名村造船所跡地) RUSH BALL 2016
2016/08/28(日) 大阪 泉大津フェニックス
uchuu, ”+1” release tour 2016-semi Final 2MAN-
2016/09/02(金) 東京 渋谷 TSUTAYA O-Crest

バックドロップシンデレラ2ndライブDVD「渋谷でウンザウンザを踊った」レコ発 「おっぱいとウンザウンザを踊りますがなにか〜千葉編〜」
2016/09/03(土) 千葉 稲毛K‘S DREAM
2016/09/04(日) 静岡 UMBER
2016/09/11(日) 札幌 COLONY

KANSAI LOVERS 2016
2016/09/18(日) 大阪城音楽堂

Eggs presents TOKYO CALLING 2016
2016/09/19(月・祝) 東京 渋谷

LACCO TOWER 「心臓文庫」リリースツアー“心造旅行”
2016/09/25(日) 福岡 Queblick

Jumpin’jack 2016
2016/09/29(木) 大阪 心斎橋 BIGCAT

FABLED NUMBER Presents
「A Revolutionary Tour 2016」〜NAGOYA Edition〜

2016/09/30(金) 愛知 名古屋 CLUB QUATTRO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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