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DAOKO、赤坂BLITZのステージで新世代のポップ・アイコンへ!

DAOKO | 2016.10.06

 9月22日、赤坂BLITZ、DAOKOの「2016“青色主義”TOUR」東京公演を見た。見た、というよりも体感した、といったほうがいいかもしれない。1曲目の「JK」から、ステージ前に下ろした透過型スクリーンを駆使して、音楽と映像、人間とアニメ、現実と幻想が一体化したスリリングなショーが展開される。DAOKOはきれいなブルーに染められた、ロングスカートのツーピース。ふたりのDJが繰り出す強力なビートに乗せ、暗く抑えた照明の下でドラッギーなウィスパー・ボイスを響かせる。

「ついにこの日がやってきました。一緒に楽しもう!」

 大人びた妖しさいっぱいのキャラが、しゃべりだすと途端に明るい早口になるギャップもいい感じ。自己紹介を兼ねた「ぼく」、そして“DAOKO史上初”と前振りしてから、オーディエンスとコール&レスポンスをかわした「FASHION」。“SAY D!”と叫んで笑顔でフロアにマイクを向ける姿は、これまでのライブにはなかったもので、DAOKOの中で何かが開かれつつあることがよくわかるシーンだ。女性ダンサーを従えた「水星」のパフォーマンスも、見せる意識がぐっと増している。

 みんなの応援歌になれれば、と言って歌った「きみ」、渋谷の街に交錯する光と影の物語をビビッドに描くドキュメンタリー「BOY」。中盤には、あまりにリアルでセンチメンタルだが、同時にドリーミーでポジティブでもある、リリシスト・DAOKOの天才を示すメッセージ・チューンが並ぶ。スクリーンに浮かんでは消えるリリックの文字、渋谷の街でロケーションした映像、繰り返されるナレーション。これはライブか、映画か、朗読劇か。様々なアートが交錯するイマジネイティブな世界の魅惑に、ステージから目を離すことができない。

 メタリックに輝くブルーのジャケット、飛び交うレーザービーム、点滅するフラッシュライト、スクリーンを高速で飛び回るアニメーション。後半の始まりを告げる「ダイスキ with TeddyLoid」の強烈なビートが、場内の空気を一変させる。フロアに波が立つ。絶妙のタイミングで、スクリーンが引き上げられる。ここからはもう薄い幕は必要ない、生身のDAOKOとの接触だ。

 2人の女性ダンサーと共に踊る「さみしいかみさま」では、ふたりのDJがパッドを叩いてビートを強化する。曲間をとらずに「ME!ME!ME!」、そして「ShibuyaK」へ、ノンストップMIXスタイルで盛り上げるスタイルは、完全なパーティー・モード。特に「ShibuyaK」の振り切ったポップ性と強い中毒性は、ヒップホップもエレクトロもアイドルポップさえも呑み込んだ圧倒的なもの。そして渋谷から新宿へ、椎名林檎のカバー「歌舞伎町の女王」には驚いた。ラテン・ハウス系のビートを使ったグリッターなダンス・チューンに変貌したこの曲を、ぞくぞくする色気を振りまきながら歌うDAOKO。歓楽街で成り上がる主人公の姿に、今のDAOKOの野心と挑戦とが自然に重なって聴こえてくる。

「今回のシングルは、すごくポップなダンス・チューンなので、いつもと違うな、と思ったかもしれません。今からその説明をします」

 残すところあと1曲。ここで今日一番のMCが入る。自分の居場所がないと感じていた、中学生の頃。インターネット、SNSと出会い、顔も性別も知らない人とつながることを知ったあの頃。曲を作り、インディーズでリリースを始め、つながりが増えていく楽しさ。音楽は自分を救うためにあったこと。でもみんなと接する機会が増えて、自分の音楽で救える人がいるんだと気づいたこと。「ShibuyaK」からは、ポップであることを強く意識するようになったこと――。

「今は、自分の存在の奥にみんながいてくれます。もっとみんなとつながりたい。こんなDAOKOを、これからもよろしくお願いします」

 ラスト・チューンは、今のDAOKOの思いのすべてを詰め込んだニューシングルの1曲目「もしも僕らがGAMEの主役で」。80’s感の強いポップでファンクなダンス・チューンに、自分を取り巻くすべてはあなたのコマンド次第だとメッセージする力強いリリック。あんなに華奢な体のどこに、これだけのパワーが詰まっているのか。息切れひとつせず、16曲を歌いきって手を振るDAOKO。なんてクールで美しい笑顔だろう。

 アンコールは1曲、ニューシングルの中でもとびきり中毒性の高いビートとキャッチーなメロディ、オーディエンスの手拍子を意図したクラップのパートを持つ「BANG!」だ。ミュージック・ビデオと同じブルーのミニスカートにロングタイツ、ダンサー総出でキュートな振り付けを決めるポーズ、テクニカルな早口ラップ、すべてがパーフェクト。ド派手な銀テープの発射もばっちり決まった。

「ありがとう。また会う日まで、元気にしててね」

 全17曲、1時間30分。クールなウィスパー・ボイスは最後までつややかさを保ち、ラップはノーミス。照れない、媚びない、昂ぶらない、堂々たるパフォーマンスは、つい1年前までまったく顔を出さず、ライブ経験も少なかったとは信じられない。リリックのナイーブなダークサイドにスポットが当てられることも多かったDAOKOだが、今の彼女はパフォーマーとして極めてポジティブな変化をとげている。新世代のポップ・アイコンへ、巨大なポテンシャルを感じさせる圧巻のライブだった。

【取材・文:宮本英夫】
【撮影:神藤剛】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル DAOKO

リリース情報

もしも僕らがGAME の主役で / ダイスキ with TeddyLoid / BANG!

もしも僕らがGAME の主役で / ダイスキ with TeddyLoid / BANG!

2016年09月14日

TOY’S FACTORY

01. もしも僕らがGAME の主役で
02. ダイスキ with TeddyLoid
03. BANG
04. FASHION
05. もしも僕らがGAME の主役で_Instrumental
06. ダイスキ with TeddyLoid_Instrumental
07. BANG!_Instrumental
08. FASHION_Instrumental

お知らせ

■ライブ情報

MINAMI WHEEL 2016
2016/10/09(日) 心斎橋BIGCAT

OTO TO TABI SWAYS × No Maps
2016/10/16(日) 札幌Bessie Hall

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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