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LUCKY TAPES『Cigarette & Alcohol Tour 2016』ライブレポート

LUCKY TAPES | 2016.12.07

 LUCKY TAPESのメンバーが自らが最高傑作と太鼓判を押す彼らの2ndアルバム『Cigarette & Alcohol』は、エンジニアにtoeの美濃隆章、ドラマーにmabanuaを迎えた新体制で「酒と煙草」を描くという“無邪気なインディーキッズから大人への成長/憧憬”を描いたかのような躍進の作品となった。音楽性それ自体を見れば1stアルバム『THE SHOW』の時点からすでにR&Bやソウルを感じさせる要素はあったが、高橋海 (Vocal、Keyboard)の歌声の色気が増し、そしてプロダクションやアレンジメントの精度が上がることで“雰囲気”が一変しているのだ。2016年において“インディー”は決して“メジャー”の前段階であったり、“卒業するもの”などではないが、彼らLUCKY TAPESはプロフェッショナリズムを目指し、J-POPと向き合う方向へと歩みを進め、より洗練されたレコードを作り上げたと言えるだろう。

 その『Cigarette & Alcohol』を引っさげた全8公演のリリースツアー最終日、会場の渋谷WWW Xには、新作の真価や現在のLUCKY TAPESを一目見ようというオーディエンスが集まり、満員状態。水曜日ながらも祝日であり、そして何よりツアーファイナルということで、フロアにはすでにライブ前から祝祭感が見え隠れするようだった。

 “劇場”を思わせる開演ブザーが会場に鳴り響き、アルフレッド・ニューマンが作曲した「20世紀フォックス」でおなじみのファンファーレをBGMとしてメンバー入場する。決して広くはないWWW Xのステージはあっという間に楽団一団で満員状態に。というのも、このツアーにはバンドメンバー含め総勢10人ものミュージシャンが参加しているのだ。通常この規模の会場での公演においては、バンドメンバー以外の演奏はサンプラーによる同期で賄われることが多いことを思えば、これはとても贅沢な編成と言って間違いない。「演出や装飾にはあまり手をつけず、音楽だけでどこまで面白いことが出来るかに挑戦している」と高橋海が語るとおり、『Cigarette & Alcohol』を再現しその先に推し進めるために最大限の音楽的リソースを投入しているということの表れと言えるだろう。

 そうして演奏されたのは「NIGHT SESSION」と題された、ヴァイオリンとパーカッションを中心としたセッション。まるで『Cigarette & Alcohol』のアートワークで描かれた不思議な夜の森のように、壮大で幻想的、そしてどこか期待感を抱かせる。「堂々たるバンドとしてのライブパフォーマンスに演技も台詞もない映画やミュージカルのようなワクワクとドキドキが詰まったショーをお届けできればと企んでいます!」という高橋海の所信表明にある通りの映画やミュージカルのようなセッションであり、アルバムの理解をさらに深くするようなオープニングトラックだ。

 「ツアーファイナルへようこそ!」という高橋健介のMCとともに演奏されたのは「夜が明けたら」。なんと1stアルバム『THE SHOW』からの楽曲だが、ゆったりピースフルにレイドバックした雰囲気の楽曲に会場のミラーボールがきらめけば、なんの違和感もなく『Cigarette & Alcohol』の世界に溶け込んでいく。新作、そして今のLUCKY TAPESのフィルターを通せば、過去の楽曲もすべて「現在」になっていくようだ。続く「贅沢な罠」からグラムロックもしくはAC/DC風のギターリフが印象的な「Mr.Robin」へなだれ込めば、ステージはタバコの煙を思わせる赤と紫の照明に輝くスモークに包まれる、激しくもムーディーな雰囲気に。「みんなただいま!全国ツアーから帰ってきました!」という声に呼応するように、シンガロングなコーラスでは雰囲気がまた一変。ハンドクラップで一体感に包まれ、“ラッキーホーンズ”と呼ばれるとトロンボーン、サックス、トランペットによるホーン隊は演奏のみならずダンスをキメ、ベースはスラップでソロをバキバキに響かせるという展開はお見事のひとこと。ステージ上に特別なギミックは何一つ無いにも関わらず、一気にライブに深く入り込む感覚を誰もが感じたことだろう。

 バンドの名前をシーンに知らしめた平熱のファンクネスとポップに満ちたデビュー・シングル「Touch!」を、さらに多幸感に溢れる最新バージョンで披露したあとは「金曜日の夜まで待ちきれない!」とのMCとともに「FRIDAY NIGHT」がスタート。軽快なギターカッティングが金曜の夜のウキウキした気持ちを表現したかのような楽曲に思わずステップを踏みたくなる。

「楽しいねー!いよいよツアーファイナルですよ。どうでしたみなさん。僕らは楽しかったですよ。最高じゃないですかツアー!」という高橋健介のハイテンションMCからは今のLUCKY TAPESの好調が伺え、オーディエンスもそれに応えるように充足の表情を見せる。

 「ここからはエロティックな曲をやります」との言葉とともにスタートした中盤は、ピアノが優しく鳴り歌声がシルキーに甘く響く、山下達郎をはじめとした上質な日本のポップスを思わせる「ミルク」から「夜想曲」へと続き、「レイディ・ブルース」後半のトランペットソロからメンバーもヘッドバンギングするハードロック的なブリッジで一気にアッパーへ。音源よりも強めのワウギターが炸裂するファンクナンバー「体温」を経て、クイーン「ロック・ウィズ・ユー」を思わせるドラムイントロから始まったのは、LUCKY TAPESのなかでも屈指のアンセミックなナンバー「LOVE LOVE」。ザ・ビートルズ「愛こそはすべて」のようなコーラスと、ザ・ローリング・ストーンズ「シーズ・ア・レインボー」のようなピアノに、時代も場所も関係ない“普遍”の一片を垣間見るような一曲だ。

 そしてライブは終盤へ。波音とストリングスから始まる「PARADE SESSION」と題されたセッションから続く「パレード」で会場に生んだ幻想的な雰囲気は、観客がスマートフォンのLEDライトを使ってステージを照らす演出で演奏される「MOON」で最高潮に。メンバー紹介を兼ねた「Slow Session」とそれに続く「スローモーション」ではギターからサックス、トランペット、トロンボーン、ベースとつないでいくソロリレーに、ステージに3人を残して残りのメンバーが客席後方から楽器を演奏しながら行進するというサプライズ込みの演出が施され、これには会場から大きな驚きと歓声が上がっていた。

 その後「Gun」「TONIGHT!」そしてアンコールでの新曲「シェリー」の3曲が披露され『Cigarette & Alcohol Tour 2016』ファイナルは、終了。「まだまだ前に住んで行きますのでよろしくお願いします!」という大声での宣言が、今のLUCKY TAPESの勢いを象徴しているかのようなライブだった。

 高橋海が「ツアー先で朝から晩まで時間を共にしてファミリー感まで出てきた」と話す、10人の“チームラッキー”。たったひとつのステージに10人のミュージシャンが経ち、大好きな音楽を楽しみ、同じような音楽を好きな人たちを楽しませる演奏をする。そんなシンプルなことが大きな力を持つのだと感じさせる、実に「“音楽的なライブ”を観た」と思わされた一晩だった。

【撮影:納田知波】
【取材・文:照沼健太】

tag一覧 LUCKY TAPES 男性ボーカル ライブ

リリース情報

Cigarette & Alcohol

Cigarette & Alcohol

2016年07月06日

Rallye Label

01. LOVE LOVE
02. Mr. Robin
03. レイディ・ブルース.
04. 贅沢な罠
05. パレード
06. ミルク
07. 夜想曲
08. MOON
09. スローモーション
10. TONIGHT!

セットリスト

Cigarette & Alcohol Tour 2016
2016.11.23@渋谷WWW X

  1. 01. NIGHT SESSION
  2. 02. 夜が明けたら
  3. 03. 贅沢な罠
  4. 04. Mr.Robin
  5. 05. Touch!
  6. 06. FRIDAY NIGHT
  7. 07. ミルク
  8. 08. 夜想曲
  9. 09. レイディ・ブルース
  10. 10. 体温
  11. 11. LOVE LOVE
  12. 12. PARADE SESSION
  13. 13. パレード
  14. 14. MOON
  15. 15. Slow Session
  16. 16. スローモーション
  17. 17. Gun
  18. 18. TONIGHT!
ENCORE
  1. EN-1:シェリー

お知らせ

■ライブ情報

LIVE DI:GA JUDGEMENT
2016/12/31(土) 渋谷 CLUB QUATTRO・TAKE OFF 7

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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