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チリヌルヲワカ、新曲も披露した年末恒例のワンマン初日、東京・キネマ倶楽部公演をレポート。

チリヌルヲワカ | 2016.12.12

 5月にリリースした7作目『ShowTime』にひっかけて、“チリヌルヲワカLiveTour2016 -SnowTime-”と名付けた全国5ヵ所のウインターツアーをスタートさせたチリヌルヲワカ。11月26日の初日を鶯谷の東京・キネマ倶楽部で迎えた。
 ご存知のようにチリヌルヲワカは今年1月にギターの坂本夏樹が脱退。トリオ編成となって心機一転、アルバム『ShowTime』を完成させ、全国ワンマンツアー“ShowTime”で全国10カ所を回った。その後も2マンライブなどに出演し、新体制も固まった。このツアー初日は、そんな今のチリヌルヲワカをさらに実感させる、手ごたえのあるライブだった。

 SEが流れると歓声に迎えられ3人が登場。ユウ(G、Vo)は黒のノースリーブワンピースに、ソックスとコンバースも黒でシックに統一、ツナギ姿のイワイエイキチ(B)とTシャツの阿部耕作(Dr)も、黒のニットキャップで揃えている。クリスマスが近づいていることを意識したものだろうか。そんなことを思っているとオープニングナンバー「灰と朗」が始まった。デビュー作『イロハ』収録曲だ。「今年からチリヌルヲワカの新しいステージが始まった」と“ShowTime”ツアーに対しユウがコメントしていたのだが、その言葉どおり新生チリヌルヲワカとして動いていることを感じさせる幕開けだ。当たり前のことだが4人で出していた音を3人で出すには、音の足し算引き算だけでなく気持ちの足し算引き算も必要になる。それができたからここにいるのだ。

 2曲目は5作目『it』の表題曲「it」、3曲目には2作目『白穴』からの「ホワイトホール」と続くと、オーディエンスのテンションが急上昇。オイ・コールとともに腕を築き上げ、フロアが揺れた。そんな情景を前にしながらシレッといつものようにユウは歌い、イワイと阿部は腰の座ったビートを繰り出す。3人が出す音は4人の時よりシンプルだが、一人ひとりが逞しさを増したように感じられた。そして新作からの「みずいろの恋」のすっきりしたサウンドへと自然に繋がった。オーディエンスの手拍子を受けながら、ユウはギターを弾きながら髪を直す余裕さえ見せ、すっかり落ち着いている。
「どうもありがと、チリヌルヲワカです。忙しいのにみんな、来てくれてありがとうございます。精一杯、やっていこうと思います」
 この短い挨拶を挟んで、ギターを弾きながらユウが歌い出す「連鎖」、キレのいい「芝居生活」に続き最新作のリードトラック「ショウタイム」。ジンタを連想させる3連のリズムと力強いバンドサウンド、浮遊感のあるユウのボーカルが絶妙だ。曲が終わると最初のMCを補足するようにユウが話し出した。
「いろんな人をお誘いしたけど、9割がた今日は忙しいって。みんな忙しいんだなと思った。それなのに来ていただいてうれしいです」
 これを受けて話そうとする阿部に「行ってもいいですか?」とユウが声をかけ、そそくさと始めたのは「陰日向」。点滅する照明とアグレッシブな演奏がマッチして、再びオーディエンスの熱気を高めていく。ユウはセンターに置かれたお立ち台に乗ってギターソロを弾き、遠慮がちにアピールした。阿部がシンバルを派手に叩いて曲に入った「紫紺ノイズ」、「アヲアヲ」はロックトリオらしいサウンドが板についていた。ここで2階バルコニー椅子席の“殿様シート”のお客さんに挨拶。

「殿様の皆さんが2階にいらっしゃるんですけど、応募がすごく多くて漏れた方がたくさんいたんです。ありがとうございます」

 このMCの前にイントロの音が流れてしまった「=0」はチリヌルヲワカ流エレポップ風味。少しダークな曲調に合わせ照明も暗めになり、低音を活かしたサウンドに引き込んでいく。やはり彼らにしてはダークな「マシーン」から重ためのギターリフが光った「夏の亡霊」は、ユウの曲の世界に引き込まれた。

 空気を変えるように少々雑談タイム。メンバー紹介から阿部はユニコーンのライブに行ったらメンバー紹介が長かったなどと話し、ユウが前晩に眠れず錦織 圭選手がTVで言っていた“ひとりしりとり”をしてみたら、どんどん言葉が出てきてしまいかえって頭が冴えてしまったが、自分を石だと思ってみたら眠れたので「皆さんも参考になさってください」とお勧め。そして「新曲をやりたいと思います」と、できたばかりでタイトルもまだないという曲を披露。ユウらしいキャッチーなメロに、オーディエンスは早速体を揺らしていた。

 いよいよ後半に入りパンキッシュな「咲かぬなら」、サーフロック風の「はなむけ」、得意の変化に富んだ構成に踊らされる「松の木藤の花」に「シーホース」と続いてオーディエンスの熱気もピークに達したところで、ラストの「印」へ。曲の半ばで上のほうから白い淡雪が降ってきて、一気に幻想的な空気になり、ドラマチックな演出でこの夜を特別なものに彩った。
 アンコールを受けて再登場した3人はグッズのことなど話すうち、ユウが心配事がある時は学校に行く夢を見ると言い、高校の制服はブレザーで緑色の上下だったと言うと、イワイも「俺も緑の学ランだった」と九州出身同士の意外な共通点を発見。そしてユウが「来年から私は自虐的なことを言わないのをモットーにします」と宣言して「ヒトダカラ」「天邪鬼」で、もうひと暴れ。いいツアーになりそうな予感を残して、この日のライブは幕を閉じた。
 振り返ってみると、セットリストは全作品からバランス良く選ばれていた。それはチリヌルヲワカの結成以来11年の足跡を見せていたし、同時に現在の彼等の音となって響いていた。ツアー後には新作にも取り掛かるだろう。来年またライブを観るときが楽しみだ。

【取材・文:今井智子】
【写真:清水ケンシロウ】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル チリヌルヲワカ

リリース情報

ShowTime

ShowTime

2016年05月13日

ヤマミチレコード

1.ショウタイム
2.秘密の部屋
3.咲かぬなら
4.夏の亡霊
5.ヤミとクモ
6.=0
7.未知への洞窟
8.みずいろの恋
9.ブラックホール
10.鬼ヶ島

お知らせ

■ライブ情報

SHOWBOAT 2MAN SERIES
2017/03/03(金) 高円寺ShowBoat

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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